■ 山梨リニア実験線見学記
山梨リニア実験線見学記     澤村達也

目前を450km/hで通過するリニア

2001.5.30、ある業会主催の見学会に参加する機会を得た。行程はJR中央線大月駅集合/解散で、同駅から現地までは貸切バスというもの。当日京都発7:26のひかりで新横浜、ここから横浜線で中央線八王子、中央線で大月というコース。途中昼食のため八王子で約1時間の待ち時間を設定した。12:01の「かいじ」で約30分、大月の駅に着いた。バス発車2分前。
大月駅は河口湖へ延びる富士急行線の接続駅であるが、時間がないのでウオッチングは省略して駅出口へ。駅前広場は狭く、バスとタクシーで埋まっている。貸切とは言うものの、路線バスの代用車で、後から来た数人は満席で着席できず。私はちゃっかりと事務局である工業会のNさんの席を占領した。ここから実験線までは12,3分の距離。

実験センターがあるのは大月市に隣接する都留(つる)市。実験線はここを中心に甲府方面と東京方面に延びる42.8kmの設定だが、列車が走るのは先行区間として整備された16.6km地点から35km地点までの延長18.4kmの区間である。なぜかこの実験線の起点は甲府市街の南東約5kmで終点は東京方という設定となっている。そして将来中央リニア新幹線が建設されるときの本線の一部となる計画である。
先行区間のほとんどはトンネルだが、わずかに実験センターのある付近約1kmが明かり区間となっており、また先行区間の中央部なので高速走行する姿を見ることができる。TVで流れるおなじみの映像はこの場所で撮ったものだろう。
実験センターは線路脇にJR東海と総研が運営している管理棟および別棟のビジターセンターのような建物、電力変換所(一般の鉄道で言う変電所)、と先行区間の東京方終点に車両基地がある。面白いことにこのビジターセンターは山梨県の施設で、隣接して試乗前後に説明・質疑応答ができる教室があり、ここから乗降場に行けるようになっている。

まもなく我々の試乗する1本前の列車が発車するというので見学デッキ(3F)に上がる。
列車は音もなく目の前を発車してゆき、ポイントをわたって本線に入り、甲府方のトンネルに消えた。数分後、同じ線路を逆行で東京方へ走り去る。かなりスピードが出ているような音と振動。ややあって案内放送の後、今度は450km/hで甲府方に通過して行った。圧倒されるような地響きと空力音である。あっという間の出来事であった。
 
廊下のような乗降場

我々の番が来た。まず教室に入り、現在までの経緯など簡単な説明を受ける。試乗列車は一般試乗を始めてから474便目だそうで、室内には有名人の試乗中の写真が飾ってある。秋篠宮ご夫妻、石原東京都知事など。すぐに廊下のような乗降場へ。磁気シールドを施した「廊下」に3,4カ所の乗降ゲートがある。試乗したのは3両編成のMLX01で、中間車だけに試乗できるようである。在来線とほぼ同じ断面に車長24mの車両はわずか22t。妻部には前方の景色を映すカメラのモニターと、デッキへの扉の上部に速度・地点距離情報がデジタル表示される。そして説明員が同乗。指定席制で私の席は9B、2+2の4列席なので通路側。ただし窓側であってもその窓は飛行機並で、その上ほとんどトンネルではあまり楽しくなさそう。

程なく発車、本線に入ってから東京方へ300km/hで。飛行機のような加速度。聞くと6km/h/sですとのこと。シートが逆向きだったのでずり落ちそうになった。約160km/hに達すると車輪を引き上げ浮上走行に移る。浮上すると言っても別にふわりと浮かぶ訳ではなく、タイヤ走行音が消えるのでそれとはっきり分かる。300km/hでは取り立てて言うような感想なし。減速を始め、約120km/hで車輪走行に。

さていよいよ本日のハイライト、甲府方面へ向かって450km/hでの走行に移る。列車の制御は地上のコンピュータが行うので、説明員の案内以外は音声合成の自動放送。「ツギノウンテンハ○○レッシャ、△△ジ××プン、ハッシャシマス」見る見るうちに300km/hをこえ、400km/h、思わず体が凍りついたようになる。445km/h位から加速力がすっと消えてゆき、450km/hの定速運転に入ったが、この騒音と振動はちょうどジャンボ機が離陸しようとして滑走路を加速中に味わうあの感じといったら大げさだろうか。運転曲線によると、500km/h運転では最高速の時間は約15秒なので、450km/hならもう少し長かったのだろう。折り返し400km/hでセンターに戻り、ともかく地上での最高速の体験はあっけなく終わった。この間わずか20分。


450km/hで走行中...

下車後、質疑応答まで少し時間があるので線路の反対側にある見学広場に行き次の列車を眺めることに。ダイヤは先ほどと同じなので分かりやすい。列車が来る時刻になると案内放送があるが、近くの電力変換所が唸りだすのですぐにわかる。明かり区間を眼下に眺める小高い場所で、秒速125mのリニアは遙か向こうのトンネルを出ると轟音を伴って目の前を通過していった。

約30分の質疑応答の中で、車両に関しては空力の更なる改善と超電導磁石を冷却するための液体ヘリウムと液体窒素のうちまだ使い捨てになっている窒素をリサイクルできる台車がようやくできたこと、補助電源はガスタービンに頼っているが、誘導発電よりも燃料電池の方が有力であるとの説明だった。そして何よりも東京−大阪間8兆円とも言われるインフラのコストダウンが実用化に向けての最重要課題であるとも。運賃は幾らにするのかと質問した人が、逆に幾らなら乗ってもらえますかと聞かれて2,3万と答えたのには驚いた。メーカーの人だったように思う。また法律で、中央リニアはJR東海が東海道新幹線と一体的に経営することになっていると初めて聞いた。

大月からの帰途、
 1.あの振動と騒音で1時間は少々つらい。
 2.東京−大阪間はペイするのだろうか?
 3.加速がすばらしく良いので、都市間交通や成田−東京間のようなむしろコミューター交通に向いているのではないか?

などと思っていたら車窓から巨大なシェルターが見えた。駅前から山に向かってまっすぐに上がってゆくのは、ひょっとすると最近できた磁石吸着式の新交通システムかな?しまった、一度乗ってみたかったのに。(芋虫のような早さだろうけど)私としたことが。
しかし、新横浜のホームで通過する「のぞみ」の早さも、中くらいかなと思えるようなインパクトを与えたリニアではあった。
以上

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