2012年 春の中国鉄路の旅 Part23  长春(満州国首都 新京)その1

第26日目 5月14日

図们22:02(2168次)→7:18长春  528キロ 9時間16分

新緑拡がる車窓を見ながらのすがすがしい朝を迎えました。列車は、満州の大地を长春に向かっています。

7:18 长春駅に着きましたが、臨時ホームです。現在、哈尔滨~大連の哈大旅客専用線の建設工事が行われていますので、濱州線ホームは手前に変更されていました。

▲ 臨時駅ホームは広く階段もなくそのまま出口に出られました。本駅は彼方に改築中です。
駅前は狭く、Taxiはメーターを倒しては行ってくれません。こんな時は、そんなぼったくりTaxiを相手にしてはいけません。ここで降りる客を乗せたTaxiを待って、強引に乗り込みました。

【 哈大旅客専用線
哈尔滨(ハルピン)と大连(大連)とを結ぶ延長約904キロの高速鉄道、設計速度は350km/hです。開業しますと所要時間は3~4時間(複数の報道有り)と、現在最速9時間18分を大幅に短縮される予定です。
2007年8月に着工され、現在急ピッチでの建設が行われています。両端駅は、新たに哈尔滨西站(在来駅より8キロ東)と大连北站(在来駅より13キロ北東)が新設されています。両駅とも市内からは離れていますので、在来線との連絡線を使用して在来駅にも乗り入れられる予定ですが、実際に開業してみないと分かりません。交通アクセスとして将来的に地下鉄が計画されています。

現在、軌道敷設工事は完了し、電気・信号設備他の工事に入っています。在来線と平行する区間で見た限りでは、架線が張られている所も多くなっていました。瀋陽瀋陽北长春の駅の改築工事は、目下盛んに行われていますが、進捗具合が進んでいるとは見えません。 開業日については、今年7月(共産党記念日)あるいは10月(国慶節=建国記念日)という複数報道がありますが、まだ試運転さえ始まっていません。当局からの正式発表はまだです。しかしここでは試運転期間は、今までの例からしてもわずか1ケ月と、日本の東北新幹線八戸~新青森の約8ヶ月間と比べますと驚嘆すべき安全無視の期間です。2008年8月に高速鉄道として、中国で初めて開業した京津高速鉄道では、営業開始後に先頭部車両では計測機器を入れてのデータ調査が行われていました。また、突然の開業発表もありかもしれません。

この 哈大旅客専用線の特徴は、なんと言っても中国でも極寒の地を高速で走る事にあります。当然に耐寒対応が必要です。零下30℃以下となる地では、零下50℃対応が必要ですが、超高速の300km/hを超える高速鉄道での耐寒技術は持っていません。世界中を見渡しても皆無です。計画当初には日本側へ技術供与の申し出がありましたが、日本の新幹線では零下25℃を想定した技術です、態度保留(体よく断った)した経緯がありました。その後ロシアへの技術協力をしているドイツへの打診を余儀なくされたそうですが、報道はありません。

極寒地での高速鉄道走行で最も問題となるのは、台車まわりと特にブレーキの制動力です。軌道上の列車を高速で走らせようとすれば、500km/hまでなら直線レールに高速大容量のモーターを取り付けた車を走らせれば可能でしょうが、規定の距離で止めるのは簡単なことではありません。これに 極寒が加わればなおさらです。

中国鉄路の高速化は、時速100、120、140、160km/hと段階的に速度を上げて着実に行われてきました。ところが、国家総力を上げて200km/hに挑戦した列車の 「中華の星」 は、技術不足で大失敗となり、高速化に先行する諸外国の先端技術にたよざらるをえなくなりました。
国際入札を実施して、ドイツ、フランス、カナダと最も先行実績のある日本の技術供与を受けることに成功しましたが、元々基礎力がなかった上に混在する寄せ集めの技術を十分に吸収、習得するためには、先進国が長年かけて積み重ねた以上の経験と実績が必要です。これを分からずに単なる高速化へと走ってしまった結果が、40名もの尊い犠牲者を出した温州での列車事故でした。

今尚、事故解明発表されていない技術的要因としては、列車管理システムが上げられていますが、その元となる高速列車の制動力の違いが大きく事故に影響しました。日本の洗練された技術では、直ぐに高速に達して定速走行をして停車手前で減速して停める制動距離の短い楔鍵型(くさびかぎ形)制動」ですが、諸外国は、ブレーキの効きが悪く、かなり手前の問題の起こらない制動ポイント」までスピードを落とさなければならない「山形制動」です。制動力は、「技術力の差」と言われ、日本は突出して進んでいます。

問題の起こらない制動ポイント」とは、 「摩擦熱が400度」のところを限界としています。 、金属にとっては、性質が変る400度は非常にやっかいな温度域だそうです。ブレーキにはパッドを使用しますが、摩擦熱により高温となります。400度を超えると「臨界的温度域」に達して、ブレーキが破壊されます。これからの詳しい説明は工学部出身の先輩方の説明を必要とするところです。

厳寒地では、400度に零下30℃以上と最高速度300km/h以上の風速が加算されますので、温度差はもっと広がります。500℃を超えると金属自体の変化が現れ、技術的には解決できなくなります。金属が高温で柔らかくなったり、低温で硬くなったりを繰り返しますと、金属疲労が生じます。これは、台車まわり以外にも影響を及ぼしますので、日頃の検査が必需ですが、出来ているのでしょうか? また分かっているのか、技術者には分かっていても国家権威のもとで消されているかも・・・。

温州事故後も、北京~上海の京滬高速鉄道に使用されるドイツシーメンスから技術供与を受けたCRH3の改良型CRH380BLの台車車軸に亀裂が見つかり、全車製造元に戻され検査取替えを行いました。部品そのものに問題がありました。
建国後の大躍進時代以降、目標達成が重んじられ、質より量が染み付いて検査・検品など行われず、最初に作った物と違った物が出来てしまう国です。人民も中国製には疑心暗鬼で見ます。短期間でまともな物を作り続けられるか分かりません。案じられます。

中国鉄路の高速鉄道の問題点につきましては、「青木氏と神明社」 の関連レポートに詳細が記載されていますので、ご覧ください。こちらです。

 

話が長くなりましたが、投稿を続けさせていただきます。

無事にモーテル 168 長春 ストリート インにチェックインして、早速王さんに到着の連絡をしましたが、連れていきたいと言われていた発電所の蒸気機関車は、残念ながら休止して動いていない。夕方に狗鍋をご馳走しますので待っていてくださいと申されました。仕方ありませんが、丁度良かったです。実は昨夕に散歩後にホテルのベットで、突然に左足が痙攣を起こして動けずとなりました。何とか這ってシャワー室まで行き、温かいお湯をかけて筋肉を揉み解して痙攣を止めましたが、長い旅の疲れが最高潮に達していたのです。しばらく休んでから、薬局で強烈な湿布葯を求め、これを貼っての歩行を続けていました。今日は、ゆっくりと身体を休めなければと思っていましたので、幸いでした。


▲ お奨めの狗鍋です。昔出張の際に知らずに食べさせられましたので、これがそうだと言われては初めてです。外観は確かに見たことのない肉です。疲れが取れますよと言われ食べてみましたが、脂肪がなくてさっぱりとした柔らかい肉です。樺南林鉄でのお話をしながら美味しくいただきました。ビールは遼西省四平市の金士百啤酒 「千啤=ドライビール」 です。冷たく冷やしてありました。

王さんは、「樺南林鉄で事故が起こった。単機で回送中だった蒸気機関車が、下樺付近で脱線転覆して、横転のため運転手も負傷をしました。原因は速度超過らしい。事故のために作業は中断されて、当初予定されていた撤去作業完了日は遅れて、19日以降になる見込みです。」 と、言われました。

満州里訪問後に樺南林鉄に再訪問する計画もありました。行けば新緑の中の作業を撮れたのですが、17日帰国のチケットを持っていますのと、変更しても30日ビザの壁がありました。19日以降となると、撤去完了の最後を見届けるには難しかったでしょうね。
▲ 韓国料理屋は、満席になっていました。毎日こんな風で評判の店だそうです。宴もたけなわとなると、チマチョゴリで着飾った従業員の皆さん総出演で、韓国舞踊を踊って盛り上げられました。

王さんは、根っからの鉄ちゃんではなく小竹先生に感化されたそうです。旅行社もやっておられますが、大学の日本語と観光学科の先生でもあります。いろいろとお話を聞かせていただき、雑学を仕入れました。ご馳走を以外にもお話をいただきましてありがとうございました。  Part24  へ続く

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