アメリカ鉄道のたび(その2)アムトラック

 アムトラックの予約は時刻表の検索とともにインターネットで簡単にできます。チケットは駅員のいるところ、またはQuik-Trakと呼ぶ発券機のある駅から乗車する場合は予約票をプリントアウトすれば発券できるのですが、駅員も機械もない駅からの乗車の場合はチケットが郵送または、宅配便のようなもので送られます。ところが、これはアメリカ国内とカナダにしか対応しておらず、海外からは購入できないので注意が必要です。私もグランドキャニオンからロスアンゼルスまでの切符を購入しようとしたところ、グランドキャニオンの連絡バス、グランドキャニオン鉄道の駅の両方共駅員も機械もないため購入できず、駅員のいるフラッグスタッフからの乗車にして何とか購入できました。プリントアウトした予約票のバーコード部分を、駅においてあるQuik-Trakの読み取り機部にかざすとチケットが印刷されて出てきます。

出てきたチケット、検札で左の部分は取られてしまう

料金はサンフランシスコからデンバーまで乗車券が$131。ルーメットと言う2人用個室寝台の1人使用が$272の計$403でした。日本円で32000円ほど、サンフランシスコとデンバーは2240kmあり、JRの運賃表では運賃21110円、寝台料金が一番安いB寝台2人用個室デュエットで12600円、合計で33710円と日本のほうが少し高く、さらにアムトラックの場合はアルコール飲料以外の飲み物と食事は含まれているので、割安感があります。

カリフォルニアゼファー号

カリフォルニアゼファー号はコロラド川沿いにロッキー山脈を越える景色が有名で人気があります。この日もエミリービルからの乗車は寝台車で半分くらいの感じでしたが、サクラメント、リノあたりからも乗る人がおり、ほぼ満席になったようです。車両はスーパーライナーという2階建ての10両編成、機関車の後に荷物車、寝台車各1両、コーチと言う座席車3両に続いてラウンジカー、食堂車、その後ろにもう3両の寝台車があります。コーチは1、2階あわせて定員74名階下にトイレ、荷物スペースがあります。座席は前との間隔が十分広く取られており、リクライニングも130度くらいになるでしょうか。

 コーチの見取り図

ダイニングカーは中央部と1階がキッチンで2階に4人がけのテーブルが並んでいます。夕食は車掌が希望の時間を聞きにくるので予め言っておけば時間は前後しますが席が空けば放送で案内してくれます。朝食は6:30~9:00昼食は12:00~13:30の好きな時間に行けますが、基本的に順に4人を詰めて行くため1人の場合は必ず相席となります。

食堂車の見取り図

食堂車の車内

メニューは朝、昼、晩各6種類のメニューがあり、昼はハンバーガー、サンドイッチ、ディナーは焼いた肉類が中心でどれも大味で、紙の皿に盛られてくるのがちょっと興ざめでした。

ディナーのチキンをローストしたもの

ラウンジカーは天井部分が湾曲した窓で展望が広く取ってあり、階下のカフェテリアで買ったものが食べられるテーブル部分と窓向きに席があるラウンジ部分からなります。景色の良いところは皆良く知っていて、ずっとここを占領する不心得ものもいます。

ラウンジカーの見取り図

ラウンジカー

寝台車は今回利用した定員2名のルーメット、ベッドルーム、障害者用ベッドルーム、定員4名のファミリーベッドルームがあり同じ車両にこの4つが混在します。

寝台車の見取り図

寝台車の各車両にはシャワーがついていますが、これはルーメットの乗客用で、ルーメット以外は各部屋にシャワーがついているという豪華なものです。

私は日本の個室寝台には乗ったことがないので比較できませんが、ルーメットの場合、定員通り2人で使うとかなり狭い感じがするのではないかと思います。まして体の大きいアメリカ人にはちょっと窮屈でしょう。そのためかルーメットは1人で乗っている人が多かったように見受けられました。

  寝台車の室内(夜)                    寝台車の室内(昼)

冒頭にも書いたようにこの路線は景色が良いので人気の路線です。ところが、理由不明ですが今回通常のルートは通らず、ローキー山脈を越えない、北のルートを通ることになりました。

車窓からの風景(日本にはない風景なのでそれなりに楽しめます)

予約してから2ヶ月くらいたったときでしょうか、アムトラックからスケジュール変更のお知らせが来ました。デンバーの到着が1時間早くなると言うのです。早くなる分には一向構わないのですが、理由が書いてなくて、ネットで調べてみると、5月から6月にかけての約2週間だけルートを変更すると書いてあり、肝心のロッキー山脈を越える部分がばっさりと切られてしまっていました。今さらキャンセルもできないのであきらめましたが、楽しみは半減してしまいました。

サウスウエストチーフ号とコーストスターライト号

サウスウエストチーフ号はグランドキャニオンからロスアンゼルスへの移動手段として使い、夜の21時ごろ乗車、翌朝の8時に着くため、コーチを使いました。編成は同じスーパーライナーの編成で前から荷物車、寝台車3両、食堂車、ラウンジカー、コーチ3両の9両編成、先に乗った寝台車では、号車と部屋番号が乗車券に予め記載されていて、それを見て自分で乗り込むことができます。

コーチの車内

ところがコーチの乗車券には指定席とは書いているものの、号車、席番号に相当するものが書かれていません。フラッグスタッフで乗車の際は、3両のコーチの内1両の乗車口に車掌がいて乗り込むときに乗車券を見せるとなにやら紙を見て、何番の席に座れと言います。これを一人一人の乗客にやるわけですから時間がかかります。座席は十分広いのであまり隣に気を使うことはありませんが、私の席は進行方向左の窓側、つまり対向列車とすれ違う側なので、対向列車の警笛とすれ違いの音で目が覚めてしまいあまり寝られませんでした。

最後に乗ったのはコーストスターライト号でロスアンゼルスからシアトルまでを34時間あまりかけて走り、この中のロスアンゼルスからオークランドまでの約12時間の区間を乗車しました。

ロスアンゼルスで発車を待つコーストスターライト号

これもスーパーライナーの編成で前から荷物車、寝台車4両、パーラーカー、食堂車、ラウンジカー、コーチ3両の11両編成、他と少し違うのはパーラーカーがついていることです。ラウンジカーはコーチの乗客も使えますが、パーラーカーは寝台の客専用で、ワインの試飲会があるので寝台車の客は集まってくれとの放送もあって、いろんな催しがあるようです。コーストスターライト号はロスアンゼルスを出てからしばらくの間、太平洋を望む海岸沿いを走り、この区間はラウンジカーも満席になります。

ラウンジカーからの風景(太平洋が見えます。)

アムトラックを代表する3つの路線に乗りましたが、一番の問題は列車の遅れです。今回も定刻で到着したのは一つもなく、カリフォルニアゼファー号に至ってはデンバー到着が4時間も遅れました。また、途中駅の時刻がどのように設定されているのかわかりませんが、サウスウエストチーフ号はロスアンゼルスの一つ前の停車駅で約3時間遅れのものが、ロスアンゼルス到着では2時間弱に取り戻しました。時刻表を見ると、この区間1時間40分かかることになっているのに、距離は26マイルしかありません。この区間で余裕を取っておいて、時間調整するのでしょうか?乗車駅で2時間待たされたり、遅く到着してホテルのチェックインに間に合うかとか気をもんだりして、移動手段としては鉄道はどうも・・・という気にさせてくれるアムトラックの旅でした。

アメリカ鉄道のたび(その2)アムトラック」への2件のフィードバック

  1. 大津の86様
    発表された中ではカリフォルニアゼファーに乗車したことがあります。もう15年前のことで記憶が薄れていますが、シカゴから遅れて到着し、デンバーユニオン駅からロッキー越えをしたところまでの5~6時間の短い乗車でした。ほとんどドームカーの中で過ごしましたがなかなか迫力ある車窓風景でした。従妹の車でデンバーユニオン駅まで送ってもらい、下車駅では車が先回りして迎えてくれました。昼食は食堂車には行かず日本食の手弁当でした。この区間は客車列車は見当たらず長大貨物列車が目につきました。ところで大津の86様はヨーロッパのドームカーは乗られましたでしょうか。スイスの客車でEuro-City(国際特急)などに組み込まれていました。氷河急行やMOBモントルー・オーベルラン・ベルノア鉄道などにも天井付近までガラス張りのパノラマカーが沢山いました。

  2. 準特急様
    朝から出かけていて、コメントいただいていながら返事遅くなってしまいました。ロッキー越えは楽しみにしていましたが、残念な結果に終わりました。多分乗客の多くもこの車窓の風景を楽しみにしていたのに、ルート変更でがっかりしたこと思います。車内には急遽作ったらしい、新ルートの沿線案内が置かれていて、その冒頭には、この迂回路は失望させない、思わぬ冒険があると言い訳がいっぱい書いていましたが、沿線風景は平凡で、遅れもあって真っ暗な中を進むだけ、ロッキー越えはもう一度挑戦したいと思います。
    ドームカーはヨーロッパにあるという話は聞いたことがありますが、残念ながらまだ見たことも、乗車したこともありません。こちらもぜひ一度乗車したいと思っております。

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