2012年冬の中国鉄路の旅 Part1 丹東へ、北朝鮮にSLがまだいた?

10月の国慶節後に四川省の監獄鉄道北台製鉄のスラグ捨てを撮影するため、訪中計画を組んでいましたが、反日運動勃発により止むを得ず延期としました。しかし、その間でも訪中される猛者軍団もおられて、行けるきっかけを待っておりましたら、中国鉄路撮影の第一人者の1人でおられる小竹直人先生より、北朝鮮沿いの断橋や路線跡を回ろうと思っているので一緒に行かないかとのありがたいお誘いを受けました。
11日のカミンディのイベントが終った翌12日、小竹先生の後を追いかけて旅立ちました。合流地は、北朝鮮と中国が最も交流がある町「丹東」です。交流を支えるのは、中朝友誼橋です。 ▲ 16:50、丹東で宿泊した丹東中聯大酒店の屋上から見た国境線の鴨緑江に架かる中朝友誼橋と鴨緑江橋梁のライトアップです。どちらも日本軍が建設しましたが、右側の鴨緑江橋梁の方は、朝鮮戦争時期にアメリカの空爆を受けて断橋となっています。橋の詳しい記事は前回訪問の紀行記をご覧ください。下記をクリックしていただければ、記事にリンクします。

2010年秋の中国一人旅 Part4 丹東国際列車、 Part5 丹東(安東) 瀋丹線(安奉線)


第1・2日目 11月12日、13日

① 長岡天神5:19(阪急)→南茨木(モノレール)→6:08大阪空港
② 伊丹7:05(JL102)→8:10羽田9:10(JL023)→12:20北京
③ 北京空港(空港快速)→東直門(地鉄)→鼓楼大街→北京駅
④ 北京17:27(K27次)→翌朝7:17丹東

いつものように伊丹→東京→北京ルートです。羽田乗換の際に以前にあった滑走路エリアを走るバスは廃止されていました。一旦到着ロビーを出て無料バスで国際線に移動です。しかし、乗継1時間では、忙しすぎてラウンジでゆっくり朝飯を食べる余裕はありません。
▲ 待ちかねた機内食は、空弁から少しレベルアップしていました。
▲ 北京からは、平壌行きの国際列車K27次に乗車しました。切符は閑散期と言えども当日購入は難しいので、北京国際旅行社に依頼しました。今回は、丹東から龙井までの切符も一緒に依頼しましたが、日本でもインターネットで購入できるようにしてもらいたいですね。
▲ 乗車当日の北京駅です。以前と違って、正面入り口前にゲートが出来ていました。構内に入ろうとする乗客は、ここで切符と身分証(外国人はパスポート)の提示を求められます。名目上は、ダフ屋対策のために実名制切符が発行されましたが、誰が乗車するかのチェックはなく、有名無実化されていましたが、ようやく飛行機のチェックインカウンターのようにしっかりとしました。ただ全駅での設備には諸事情で至らず、大きな駅のみになっています。
名目上と申し上げたのは、反抗分子の移動チェック対策があるからです。勿論、広大な国土の道路にも日本のNシステム同様の車両ナンバー読取装置が設置されています。今回は、国境沿いを行きましたので、こんな所にもと思える田舎の道路にも設置されていました。

【 国際列車 K27/28次 】
北京~平壌 1,371キロを約26時間かけて結んでいます。運行は、月・水・木・土の毎週4往復で、北京発は月・木、平壌発の水・土は中国側車両が使用されています。13両編成の内、北京よりの2両(軟臥、硬臥包)が平壌まで運行されています。一度は乗車して行ってみたいですが、中々ハードルは高そうです。
 ▲ 国際列車だけあって、普通の食堂車にあるような手書きのメニューではなく立派な冊子です。成都局のように品数豊富ではありませんが、まずまずです。ただ1人ではたくさん頼めませんので、定食(30元)にしました。
▲ 朝食も食堂車へと思っていましたが、先に麺の車内販売がありましたので、こちらにしました。乾麺を戻したあっさり醤油味のにゅう麺 です。
▲ 瀋陽からは瀋丹線に入り、丹東を目指します。かつては、ナローゲージで開業した路線ですので、カーブと勾配が多くゆっくりと走行します。日本侵略時代には、釜山からの直通特急も走っていました。

7:25、丹東駅入線の際に向いのホームにおられる小竹先生の姿が見えました。先生は、まだホームでは撮ったことがないと言われたましたので、2番ホームからだとバックに丹東の名所の1つの錦江山公園に入れての入線光景が撮れます。絵になりますよと、経験談をさせていただいておりました。

ホームでお会いすることにしておりましたが、列車を降りて、直ぐにホームのスナップを撮りましたら、横から声をかけられました。「何を撮ったのか?」と、問われましたのでモニターを見せると問題ない素振りです。しかし、反対方向にカメラを向けると、手でレンズ前を塞がれました。 私服の公安でした。
ホームからは強制退去させられて出口を出ますと、小竹先生が待っておられました。「ホームで撮っていたら数名の公安に囲まれてしまって写真のチェックをされた、残念だが数カット消すことになったよ。」と、言われました。

今、北京では全国人民会議が11月8日~14日で開催されています。この期間中は、各所での厳重な警備体制が引かれています。国境の駅ですので、普段は問題ない事でも許されなったのですね。私もかつて瀋陽近郊の道路で、任意取調中の検問に引っ掛かり、たまたまのパスポート不携帯で本署までパトカーに乗せられて連行された事があります。今日の対応程度なら軽かったと思いましたが、訪中して早々の警告を受け、身が引き締まりました。
▲ 今日の宿泊先の丹東中聯大酒店までは近くですが、荷物がありますので、Taxiで向かいました。チェックイン後に早速屋上展望台へと向かいました。9:04、丹東市内から、鴨緑江を挟んで対岸の北朝鮮が見渡せます。

前回のインドネシアの旅では、カメラ性能が自分の撮影欲求を満たされず、苦渋を強いられました。今回は、腕が付いてこなくともカメラで何とかしたいと、悩みに悩んだ末に、NikonD300Sから最新のD800Eへと、カメラとレンズを買い換えました。APSサイズからフルサイズへ、画素数は、1,230万画素から中判デジタルに匹敵する3,630万画素へと3倍の解像力となりました。他にも等々、これでISO6400の夜撮にも十分な効果を期待できます。

そして、今回の旅にはプロのワンツーマンコーチが常時、横におられます。年金生活者からすれば、清水の舞台から飛び降りるような投資でしたが、こんな恵まれた環境への準備だったら、費用対効果は絶大だと決断しました。購入にあたっては、約70,000円もの価格差があるD800かD800Eにしようかとも悩みましたが、最後は「違うカメラだよ。モレアに差がある。ぶんしゅうさんのように夜の見えない撮影を志すなら絶対にD800Eが良い。」と、既にD800Eを購入されていた今出川淨福寺さんのご指導をいただきました。
今回の紀行記でのカットをお見せしますが、解像力では小竹先生を唸らせたこともありました。多分私が買える最後のカメラになると思いますが、買って良かったです。ありがとうございました。
▲ 9:04、屋上に来た我々の目的は、丹東駅を発車した国際列車が 中朝友誼橋を渡るカットを撮る事でした。この橋は道路と線路が分離した橋で、1車線の一方通行が出来ます。丁度、北朝鮮へ向けての通行が行われていました。驚いたのは、国境検問所には中型バスが止まっていて、出国審査を終えたであろう人民達が乗車していました。9:33、北朝鮮への観光客を乗せたバスが橋へと向かいました。中国人には、手軽に行ける北朝鮮なのですね。
▲ 10:01、定刻の9:33から遅れること約30分で、国際列車が発車しました。荷物車+普通車2両(丹東~新義州 区間列車)+軟臥+硬臥包の5両編成です。ゆっくりと国境の橋を渡っていきました。
渡った先には北朝鮮の新義州駅があります。霞んでいる対岸のヤードを見てみますと、ボヤ~としてはっきりとは分りませんが、フルサイズ300㎜の望遠レンズからの画像には、白い煙が上がっているのが見えました。小竹先生に煙が見えますよ、SLかなと冗談交じりで聞きましたら、煮炊き物の煙だろうとの返事です。 それにしては大きな煙です。
▲ 300㎜フルサイズでの画像です。これでは、はっきりとしませんが、拡大しますと、下の画像になります。デスクトップを使っての26インチディスプレイですと、画像処理が出来ますのでもっと鮮明なアップをご覧いただけると思いますが、ノートPCでは処理能力の限界があります。
北朝鮮ではかつて日本からや满洲で製造されたSLが走行していましたが、朝鮮戦争で多くが犠牲となり、運よく残ったSLも財政難、石炭不足では動かせず、解体されトン当たりいくらかで中国に売られたと聞きます。既に絶滅しただろうと言われていましたので、こんな近くにいるのが事実なら信じられなし話です。

10:09、明るくなって解像度も増したD800Eのファイダーには、はっきりと煙が移動しているのが見えます。APSカメラでは、450㎜に相当する望遠です。ようやく先生も、「確かに動いている。まさかかなあ」とつぶやきながら、疑心暗鬼で見守っておられました。
SLらしき機関車は、セキを牽引して入替作業をしています。 はっきりと車種まで分りませんが、煙を出して走行しているのは間違いありません。皆様方はどう見られますでしょうか?3630万画素で撮った映像は、今迄の通説を変えるかも・・・。
煙を出した機関車は、目を離したスキにどこかに行ってしまいましたので、午前中の撮影は終了です。 川岸の土産品屋台を見ながら散歩をした後は、栄養補給です。ビールを飲みながらの水餃子は中国の代表的な味でした。

▲ 15:42、再度屋上に上がって、夕方の貨物列車撮影を目指しました。新義州駅を見ますと、先生から「ホームに何か入線してきているよ。」と言われました。確認してみますと。北朝鮮の電気機関車が客車約12両編成を牽引してきています。短編成のローカル列車なら分りますが、こんな国境だけの駅に来る長編成列車は、臨時の特別列車しかありません。機関車をDLに付け替えて国境の橋を渡って中国に来るのか、それとも折り返していくのか興味深々ではありましたが、どちらになるかを見極めるには、零下の屋上で長時間我慢しなければなりません。国境を超える列車は、通常2時間前後は停車しますので、予測17:30前後では辺りは暗闇で撮影は警戒厳重な駅構内に入らなければ不可能です。明日朝に期待しました。
▲ 夕刻16時頃には、貨物が朝鮮側から来るので屋上で待ち構えておりましたら、16:19に貨物ではなく客車2両が渡ってきました。今日朝に平壌行きに連結されていた車両のようです。行先表示板には「丹東~新義州」と表示されていました。バスだけでなく観光ツアーとして列車も用意されているようですが、見た感じでは乗客の姿はありませんでした。

夕闇が近づくと橋のライトアップが始まりました。悴んでくる手を温めながら、手持ちで1/2.5~1/60秒、焦点距離30~40㎜、露出補正-2.0段、ISO感度100~400のオートフォーカスで先生のご指導を受けながら撮影しました。先生は、三脚固定でバルブ撮影されていましたが、屋上では少し風があるだけでブレると、ブレなかった画像と比較しながら説明してくださいました。三脚なら万全と思っていましたが、絶対ではないのですね。ミラーアップやライブビューでの撮影等々とプロが見せる夜撮でのテクニックの数々をご教授していただけました。
今日は、プロとアマチュアとの差を実感させていただいた一日でした。夜は明日案内してくださる丹東の看護婦学校の藤先生が来られ、お酒好きものどおしで大宴会となりました。

明日は、午前中は車で断橋撮影に参り、午後からは龙井に向けて夜行列車の旅となります。  Part2へ続く

2012年冬の中国鉄路の旅 Part1 丹東へ、北朝鮮にSLがまだいた?」への4件のフィードバック

  1. “ぶんしゅう”さん、ニコンD800Eご購入おめでとうございます。レンズはお話しになっていたAF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR を同時購入されたのでしょうか。
     私の手元にあるのはフィルム時代のレンズばかりで、ボディの能力を十分に発揮しているとは思いませんが、それでもディスプレイに表示される緻密な描写に思わず息を呑むこと度々。
     貴兄の旅日記楽しみにしております。

  2. 今出川浄福寺さま、コメントをいただきましてありがとうございました。
    昨夜、無事帰国いたしました。早速、今日は朝から通院と検査で缶詰となりました。持病の糖尿病の検査値は良好で、主食としておりますアルコール飲料を毎日欠かさず飲んでいるのもかかわらず肝臓は健康そのもので、担当医はどうして毎回こんな結果が出るのかと不思議がっていました。一度ゆっくりと観察したいので入院して欲しいといわれましたが、忙しいので当分は無理と丁重にお断りしました。帰宅後は、孫の面倒を仰せつかりましたのでPCには触れずご連絡が遅れました。
    コメントの返信を現地からしようと思いましたが、できません。ブロックがかかっていると思いますので、近日中にジュニァと相談します。
    また、今回は、旧満州をウロウロとしましたが、ホテルのインターネット回線がいずれも不調だらけで、IPアドレスを入れて強制的にセッテイングしても途中で断線なったりで、アップロードはもとより、メールの送受信すらできず難儀しました。そんな訳でコメントの返信が遅れまして。申し訳ございません。
    購入しましたNIKON800Eは予想以上に好調でした。AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G EDVR は同時購入しました。他のフイルム時代のNIKONレンズも持っていきましたが、使用する必要はありませんでした。小竹先生も、このカメラとの相性は頗る良い、これは推奨できると絶賛でした。
    これから続編の編集にかかりますが、1コマのデータ量が多くて、私の今のPCでは作業が大変です。12月2日からはタイに向かいますので、何とか頑張ってみますが、難しいかも・・。

  3. 先日大胡ではお世話になりました。
    以前からこちらの掲示板を拝見していたので、直接お会いできたのは思わぬサプライズでした。

    しかし北朝鮮の蒸機はさすがに終わっていると思っていましたので、久々の大発見でしょう。
    最近はこの周辺の中国蒸機が無くなってしまったため、中朝国境まで行く人がいなかったので、知られていなかったのでしょう。
    機関車はJSか以前この場所で撮影されているデフ付のJFでしょうか?
    いるとわかれば超望遠レンズを持ち込んで撮影する人が出るかもしれませんね

  4. 団長 様
    コメントをいただきまして、ありがとうございます。
    只今、タイのウドンタニに来ております。今日は、国境線のDCに乗車してノンカイからラオスのタナレーンに日帰りで行って来ました。詳しい記事は、タイのSL撮影記と一緒に報告させていただきますが、満州から帰ってすぐの熱帯の地で、温度差50度に苦しんでおります。
    北朝鮮のSLは、来年4月以降に旅行が許可される頃に行きたいと思っています。もっと近くで見つけたいと思っております。

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