梅小路公園の保存市電その後

過日、京都市が梅小路公園に保存してある市電7両のオープン展示と、運転中のN電について運転区間の変更と蓄電池化すると発表したことをここで報告した。 これに関してはすでに新聞紙上やテレビでも報道されているのでご存じのことと思う。

この件には多くの知人からメールや電話で京都市へ蓄電池化反対の意見を言うべし、とのご意見を頂いた。そこで個人として市長へメールでN電に蓄電池を積むことは車体への負荷が多すぎないか、架線はどうなっているのか、保存車両を民間業者へ貸し出して飲食店に使うのは車体保存に問題が生じないか、等の質問をしたところ回答を得た。

<京都市のホームページにアクセスいただき,ありがとうございます。お寄せいただきましたご意見に,お返事させていただきます。

  まず,梅小路公園のチンチン電車につきましては,明治後期に製作された車両の雰囲気を残しつつ,平成6年度に車体の復元や駆動モーターの交換等を行ってお りますが,今回の公園の再整備を契機に,維持管理や運営面など,総合的に検討を行った結果,末永く走り続けるため,蓄電池方式に変更することとしたところ です。 蓄電池については,小型化・高性能化が進んでおり,座席下のスペースに格納することが可能です。また,充電設備については,車両の車庫に設置する予定です。 給電方式の変更については,経費面も理由の一つではありますが,古いものに新しい技術をとり入れてきた,ものづくり都市,京都における貴重な文化資源の承継のあり方として,熟考したうえで決定したものです。

次に,市電の公開方法についてでございます。 保存している市電の展示・活用方法につきましては,京都市の公営交通が100周年を迎えたことや,梅小路公園で昨年3月に京都水族館が開業し,今後,鉄道 博物館が立地するといったことを契機に,梅小路公園での拡張整備の検討を進める中で,梅小路公園内に7両の市電を展示・活用することとしたものです。

   そのうち,最も古い年式の市電1両(広軌1型)については,運行当時の姿を再現し,常設展示する予定としており,残りの6両については,地域の活性化に寄与できるような提案を民間から募集し,総合案内所や貸店舗として活用する予定です。 本市といたしましても,市電は貴重な財産であるという認識のもと,展示・活用に際しては,市電の外観を維持できるよう努めていくこととしており,特に,常設展示を予定している市電1両(広軌1型)につきましては,可能な限り原形を維持する必要があると考えております。 残りの6両につきましても,市電の外観を損なわない範囲での活用となるよう検討するとともに,屋根を設置する方向で検討を進めております。

   市電の展示・活用にあたっては,より多くの市民の皆様に愛され親しんでいただけるものとなるよう努めてまいりますので,何卒,ご理解くださいますようよろしくお願いいたします。>引用終わり

以上のような内容であった。 しかし、まだ納得がいかず再度質問をしようかと考えていたところ、先日京都市議会議員を釜山市の市議会へ案内したとき、同行して下さった京都市交通局の方と話す機会があったので少々愚痴をこぼした。帰ってから写真を届けに行ったところ、交通局長に会って話してみたら、と言うことになり思いもよらない交通局長へ直訴と言うことになった。

現在の交通局は地下鉄天神川駅の上にある。 まず最初に、以前行った交通局の雰囲気とは全く違うことをお話しする。 以前の交通局は壬生車庫にあり、暗く、職員の態度も服装も悪く、とても明るい職場の雰囲気ではなかったが、今回行ってみて驚いたのは、職員が挨拶をしてくれることであった。 案内頂いた方の話しでは、いまは昔と違い職員は管理職と局員が一致して創客にあたっているそうである。人数も以前より遙かに少なく活気が感じられた。

さて、局長室に入ると西村局長がにこやかに出迎えて下さり本題に入った。 局長によると、すでに市電の件は交通局の権限ではなく、建設局へ委譲されていて交通局としては如何ともし難いとのことである。これはすでに他所から聞いていたので納得した。 詳しいことは建設局で聞いてほしい、交通局としては話すことはできないとのことだったが、最初のきっかけについて興味ある話が聞けた。

保存してあった7両の市電はすでに三十数年を経て床は抜け、車体は錆びて廃棄処分しかないとの意見が出ていたそうだ。しかしせっかくここまで保存してきた物を廃棄するには忍びず、なんとか展示だけでもできないか、できれば走行はできないか、と市長を交えて考えたが予算もあり市だけではどうすることもできないとJR西日本に相談を持ちかけた。しかしJR西日本は関係がないと門前払いであったそうだ。そこに市長から建設局に相談してみたらと言われ、公園を管理する建設局と話しをしたところ、今回のアイデアが出てきたのだとのことであった。

なにをしてもファンの方に満足してもらえることはできないだろうが、廃棄処分にするよりはマシだと言うことで何とか皆様に納得してもらうように説明をしてほしい、といわれ矛を収めることにした。それでも、そんな苦労があるならなんで市民に説明してもらえないのか、と愚痴を言ってみたが詮ないことであった。

ところで最後に諸兄へ西村交通局長から伝言があるのでお伝えする。

今後はクローバー会をはじめとするファンの方々と連携をしたい。京都市の交通行政について忌憚のないご意見やアイデアを頂戴したい。 ついては現在全ての職員が知恵を絞っていることで、いいアイデアが出ない問題を皆さんで是非とも一緒に考えて協力を頂きたい、ということで頼まれたのが次の問題である。

地下鉄の乗客を一日当たり5万人増やしたい。

現在の一日の乗客数は約33万人、従って5万人は約15%にあたる。 局長は、どんなアイデアでもいい、たとえ実現不可能だと考えるようなアイデアでも聞かせてほしい、と言っておられた。奇抜な発想や意表を突くアイデアは我々にとってはお手のものではなかったか? ここは全員で京都の地下鉄を黒字化するお手伝いをして見ようではないか。 このような関係ができれば、今回のようなN電の蓄電池化は避けられたか、少なくとも不信感で立腹することはなかったように思う。

最後に局長から、どうかファンの皆様に京都市交通局のサポーターになってもらいたい、との言葉をご紹介して報告を終わる。

 

梅小路公園の保存市電その後」への5件のフィードバック

  1. 市営交通については大いに意見も提案もある。ただし交通局だけで実現するものではないことも分かっている。こうした意見、提案を集約するには言いたい放題の場を交通局なり市当局が設定する必要がある。とにかく行政は聞く耳を持つことであると思う。過去、現在の行政は自分たちの立場を守るのに汲々としているように思われる。市民と一緒に考える素地を作ることが大事と思う。老人達の過去のいろんな経験を参考にして、これからの日本を背負う若者たちの夢に耳を傾けることが必要であろうと思う。クローバー会もこうしたことには何らかの役割が課せられるようになれば嬉しい。吠えまくり、言い訳上手のどこやらの突貫市長は京都では不要です。

  2. 乙訓の長老様、
    ありがとうございます。
    せっかく行政からお誘いがあるのですから意見が通るか通らないかを問わず(むしろ通らないことが多いと思うが)パイプを通しておくことが大切と思います。
    そうして少しでも昔のように鉄道事業者と我々ファンがいい関係になるようになればいいのではないでしょうか。その先鞭がDRFCがつけられたらうれしい限りです。
    皆様のご協力をお願いいたします。

  3. N電の蓄電池化で進んでいるようですが、今はポール集電は黒部アルペンルートにあるトロリーバスでしか見ることが出来なくなっているようです。最近はNHKのアナウンサーまでがディーゼルカーを電車といっているのが時々聞くことがあります。N電をポール集電の電車であることを知ってもらう必要があると思いますし、近くに鉄道博物館ができるのであればポール集電とはこのようなものであると実際に見てもらうのは意味のあることと思います。そこで考えたのですが動力は蓄電池で動かすとして、イミテーションの架線を設置(出来れば開業当初の設置方法で)していかにもポール集電しているようにしてはいかがでしょうか。もちろんポール回し作業なども行うとよいと思います。日本で唯一のポール電車が走る姿が見ることができる所として評判になるのではないでしょうか。これであればあまり経費がかからないと思いますがいかがでしょうか。江戸時代に経済発展に寄与し、今日の商業都市の礎となった桧垣廻船の復元したものを維持に経費がかかると木屑にしてしまえというどこかの街のようなことはないと思いますので、知恵を絞って何とかしていただければと思います。

  4. どですかでん様、
    この件につきましては、交通局長との会談でも質問しました。
    京都市の計画では、両端の停留所のみダミーの架線を設置し、ポール回しを再現してみせるとのことです。
    せめて架線だけでも全区間設置してほしいと申しましたが返事はいただけませんでした。主管が建設局に渡り、交通局長には権限がすでに無いからでしょう。残念です。

  5. 田野城様  ダミーの架線のことについて教えていただきありがとうございます。両端の停留所のみのようですが、走行中はポールを下ろしておくのでしょうか。しかし、ポール回しが再現されると知って少し安心しました。何もなくただ走らすだけと思っていましたから。保存されていた7両も手入れをされて利用されるだけでもここに至った経緯を知ると良かった方ではないかと思います。ところで、明治村でN電が走っているのを思い出しました。唯一のポール電車が走る姿と前のコメントで書いたのは誤りでした。お詫びして訂正いたします。また、桧垣廻船は菱垣廻船とも書くようです。

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