「浜大津」に寄せて

江若ジオラマを製作し、平成23年から大津で何度か展示の機会を得ました。そのなかで最も製作に苦労したのは最後に作った浜大津ジオラマでした。江若と京阪の両方があり、特に京阪は特殊なポイントやクロッシングばかりで市販品が使えず、H君の協力を得て完成しました。ジオラマの展示にあわせて掲示物も作ったのですが、その中に浜大津の線路の変遷図がありましたので、その一部をご紹介したいと思います。

昭和14年(1939)当時

大正元年に京津電気軌道によって京都三条・大津札ノ辻間が開業し、大正14年にようやく浜大津まで延伸されました。そして前身が琵琶湖鉄道汽船である石坂線と昭和14年に線路がつながりました。なお手書きの地図の水色の部分はかつての大津城のお堀を示しています。

昭和21年(1946)当時

戦後昭和21年に内堀の一部を埋め立てて1本突っ込みの京津線ホームが作られました。この状態が昭和32年まで続きました。

昭和32年7月15日以降

昭和32年7月15日に浜大津駅は1本突っ込みから2線となり、スイッチバックする線形に変りました。さてそこで湯口先輩のお宝写真ですが、1957年(昭和32年)2月15日の撮影とあります。上の図のように完成するのが同年7月15日ですから、丁度完成5ケ月前の貴重な記録です。湯口先輩の写真を拝見して最も興味深かったのは、背景に写っている広告看板です。京阪浜大津駅のジオラマで結構大切な役割を果たしているのがこの広告看板だったと思っています。広告主は次々変ってゆきますのでいろいろな方の写真を見ながら「藤井大丸」とか「紅葉パラダイス」など知名度の高い広告主の看板を作ってジオラマ上に置いたことを思い出しました。そんな記憶に残る看板なのですが、実物は駅の完成5ケ月も前にすでにしっかりとした形で建っていることに驚いたのです。右側の仮ホームが線路上に張り出してきていますが、一旦石山寺方向への線路が敷かれたあと、元の駅を前に出す形で移設し、うしろで新駅の工事をしていたのでしょう。この60年後に「ヒマ人」先輩がこの現場の真上にお住まいになるとは湯口先輩も思いもよらなかったことでしょう。なお浜大津ジオラマは現在、クルマがないと行きにくい場所ではありますが、柳ヶ崎のびわこ大津館3階に常設されております。今年5月18日にジオラマの清掃・点検に出向きましたが、車両の盗難にも遭わずすべて健在で安心しました。三井寺下、白鬚、高島町のジオラマは大津市歴史博物館の収蔵庫に眠っております。もう陽の目をみることはないかもしれません。

「浜大津」に寄せて」への3件のフィードバック

  1. 西村さま
    再び貴重な資料を拝見する機会を得て感謝申し上げます。一連の展示が懐かしく思い出されます。
    恥ずかしながら小生はこの資料によって初めて京津線が浜大津に向かって急カーブで浜大津東口に入っていたことを知りました。今見てもかなりの急カーブです。新設された駅への左カーブも相当のものでしたが、図面からはそれ以上のカーブに見えます。急カーブのオンパレードたる京津線ですからなにも驚くに足らないかもしれませんが、おそらく逢坂山トンネル東口位の急カーブではなかったでしょうか。
    京津線への想い出は数々ありますが、小生5~6歳のころ父に連れられ職場の海水浴に連れていかれことを思い出します。憶えているのは京津三条駅のホームは海水浴客でごった返していたことで、小生はドアからではまともに着席できないとみた父に乗車ホーム側の窓から座席へ放り込まれました。おかげで座れたようですが、大勢の人が押し合いへし合いする異様な状況に終始泣き叫んでおりました。しかしそういう状況下でも電車は前面が丸かったのをかすかに憶えていますから、おそらく200形の急行だったのではないかと思います。その頃から鉄道ファンの芽は育ちつつあったのでしょう。しかし到着したはずの浜大津とそれ以降のことは全く記憶にありません。

  2. 西村様
    先に湯口先輩へのコメントを書いた後でこの投稿を拝見しましたが、浜大津駅の変遷の様子よくわかりました。また、資料拝見して、あのジオラマが綿密な時代考証の上で作られたことを知りました。再来年は江若鉄道の敷設免許が下りて100年、その翌年は会社設立と着工100年となります。この節目の年にまたイベントがあるかもしれません。その折にはぜひこのジオラマをもう一度見てみたいと思っています。

    • 大津の86様
      コメントありがとうございます。江若OBのM氏はお元気でしょうか?彼がお元気でないと100周年イベントはまとまらないようにも思えます。もう一度ジオラマを歴博の収蔵庫から運び出す日が来ることを期待しておきましょう。

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