このまま廃止? 不通の続く根室本線 東鹿越を訪ねる

北海道へ行って、もうひとつ気になる区間がありました。平成28年8月の台風10号で被害を受け、不通が続いている根室本線東鹿越~新得です。一年半に渡って列車の運転を見合わせて、バス代行が続いています。この区間を含む根室本線富良野~新得は、JR北海道の「維持が困難な区間」に挙げられており、廃止を前提とした地元協議を行なう矢先のことで、行く末が案じられています。また、12月には、列車代行バスのルートが変更され、乗車料金を収受する代行バスでありながら、リゾートホテルの無料送迎バスも兼ねると言う興味深い運行が行われています。
富良野から乗って根室本線下り方5駅目の東鹿越、ここから新得まで不通区間が始まる。周囲に人家はなく乗降ゼロに近く、私もこの駅の存在は知らなかった。もともと2017年に廃止予定の駅だったが、列車・代行バスの接続駅として、皮肉にも生き延びることになった。

平成28年8月の台風10号によって、JR北海道の各線に大きな被害が出て、根室本線、石勝線、石北本線、釧網本線、日高本線、函館本線が一時不通になった。とくに被害が大きく、長期の不通になったのが根室本線、石勝線で、このうち、特急ルートに当たるトマム~新得~芽室は、ほかで使用予定の橋梁を現地に転用するなどして復旧を急ぎ、同年12月に開通した。また富良野~東鹿越も復旧し、結局、東鹿越~新得(正確には石勝線を分岐する上落合信号場まで)だけが不通のまま残ることになった。当日は滝川9:42発の富良野方面東鹿越行き9627Dに乗車、根室本線のこの区間、道東から道央を結んでいた時代は夜行で通ったことはあるが、石勝線開通後はすっかり忘れ去られた区間になった。明るいうちの乗車は初めてだ。ただ、車窓から見える景色は雪だけである。富良野を出ると、積雪量が一挙に増えた感じがする。将来廃止されるかもしれない布部、山辺、下金山、金山の各駅では、停車するたびに二重窓を開けて付近を撮影する。

2両編成の9627Dは富良野で解結され、キハ40単行になった。発車時の乗客は9人。
▲▲DF200が留置中、コンテナ基地があり滝川~富良野は貨物列車も運転されている。

東鹿越は島式ホーム、側線が数本ある。駅前には、人造湖かなやま湖が広がり、駅周辺には民家は全くない。東鹿越、と言うからには鹿越もあるはずだが、今はなく、昭和61年に廃止されている。

東鹿越駅舎、もちろん無人駅だが、行った時は、多くの除雪要員で駅は結構賑わっていた。▲▲かつて石灰石の採掘を行っていて、日鉄鉱業東鹿越鉱業所への専用線もあった。現在でも、駅の背後に設備が残っているのが見て取れる。
JR北海道の「当社単独では維持することが困難な線区」で、輸送密度が片道100人未満線区とされた札沼線北海道医療大学~新十津川、根室本線富良野~新得、留萌本線深川~留萌の3区間は、「鉄道よりも他の交通手段が適しており、利便性・効率性の向上も期待できる」としている。昨年7月、記者会見で社長は、東鹿越~新得について、復旧工事の着手を当面、見合わせる考えを明らかにしたと新聞報道されている。運転中の富良野~東鹿越、バス代行中の東鹿越~新得は、廃止の公算が大きい。列車のサボは、長期戦を予想したのか、東鹿越を終着にしたサボが新たに作られている。

またJR北海道では、一日の平均乗車人員が1人未満の駅は順次廃止の方向で、この根室線富良野~新得では、2017年に3月に島ノ下が廃止されている。実は、東鹿越もその際の廃止リストのなかに入っていて、地元にも廃止の意向が伝えられていた。ところが、台風被害の不通によって、急遽、列車・代行バスの接続駅となったため、廃止予定から外されて、駅は存続することとなった。台風被害がなければ、今ごろは、雪の下に沈んだ廃止駅になっていたのだった。

東鹿越駅に列車が到着すると、駅前に列車代行バスが待機していた。地元のふらのバスが委託を受けて一日6往復運転している。本日の乗車は2人のみ。

昨年12月からバス代行輸送のダイヤが改められた。東鹿越~新得の代行バス6往復には変わりはないが(うち片道1本は新設された富良野発新得行き快速バス)、注目すべきは、そのうちの下り4本、上り5本は、新得からサホロリゾートを経由し、落合へ向かうルートに改められたことだ。JR北海道の掲示でも「新得~サホロリゾート前、およびサホロリゾート~落合は、列車代行バスと十勝サホロリゾートの無料送迎バスとしての役割を併せ持った運行となります」と書かれている。つまり、料金の要る列車代行バスとリゾートホテルへの無料送迎バスを兼ねて運転するという、たいへん珍しい運転形態となった。ただし代行バスの車内では料金の収受は行わないため、有料・無料の区分は乗客の申告がない限り不可能で、実質は全区間無料で運行されているに等しいような印象を受けた。戻りの東鹿越発の列車には、キャリーバッグを持ったアジア系外国人数人が乗り込んだ。彼らは、サホロリゾートから、これも外国人には人気の富良野へ向かう、貴重な根室本線の利用客かもしれない。駅のガラス扉に掲げられた「お知らせ」。

時間があれば、このまま代行バスに乗って観察したいところだが、それは叶わず、わずか9分間の滞在時間だけで、再び折り返し列車で戻らざるを得なかった。

 このまま廃止? 不通の続く根室本線 東鹿越を訪ねる」への2件のフィードバック

  1. 総本家青信号特派員さま
    いつも丹念にお調べになっている詳細なレポートを読ませて頂いております。お手間のかかった調査に脱帽です。
    実は昨秋に代行バスに乗ってみたくて行ってきました。滝川発5:49の東鹿越行きで8:09発の代行バスに乗り、新得着9:11でした。この時は新得9:10発の帯広行きには接続せず(バスが駅前ターミナルに入るのを見届けたようにスーッと発車して行きました(バスはバスで新得手前から急にスピードが落ち、何が何でも乗継はさせないというかの如き走りっぷりでした)。時刻表通りとはいえ、仕方なく次の列車まで無駄な1時間半を待合室で過ごしました。さすがにこれは今回の改正で列車を10分ほど遅らせて改善するようですが、なぜ1年間も放ったらかしになるのか全く理解できず、このあたりが北海道社の実態なのだと思ったものでした。
    さてバスが走る狩勝峠越えの道路は元新内駅前後を除いてほぼ旧線に沿っており、この時も峠の手前(西側)で深い谷の対岸下方に今も残る狩勝駅(信号場?)の広大な跡地が見下ろせて、年齢の関係で乗れなかった狩勝旧線にさも乗ったかのような気分になったものです。この代行バスで興味深かったのは通学生の輸送でした。富良野の先の下金山辺りからポツポツと落合の高校に通学する学生諸君が乘ってきて、代行バスには十名ほどが乗り込みました。2つ先の落合駅前に着いてもだれも降りようとせず、ハテと首をかしげているうちにバスは発車、まさか新得までの通学はないよなあ、第一9時を過ぎての登校はありえないなどと思っていると数分走って街中の「落合高校前」というバス停に着き、小生と幾寅から乗ってきた二人を残して学生諸君が下車してゆきます。標識を見ると町営バスのバス停です。通常代行バスは駅前にしか停められない(否、物理的理由がない限り必ず駅に立ち寄る)のですが、ずいぶん粋な計らいをするものだ、さすがは北海道だと感心したものでした。
    ところでお乗りになった滝川発9:42の列車は元釧路行2429D(ローカル削減後の不通直前は2427D)で、当時最長距離ローカル列車として宣伝され、終着の釧路駅で滝川から有効な乗車券を見せると「完乗証明書」をくれました。また10年ほど前からオレンジ(俗にいうタラコ)の「首都圏色」に塗戻された車両が充当され、当初は第2・第4土曜には滝川発単車で富良野から増結した2両のタラコ車確約で運用されていました。これと秋以降に運転されていた富良野迄のDD51臨時貨物を掛け持ちで追って、何度も狩勝峠を往来したものです。北海道社が連続事故を起こしておかしくなるまではタラコ車の運用も公表されていて、かなり厳重に運用されていました。その後前述のようにそれどころではなくなったようで、公表されなくなってしまいました。この時期に2429Dで滝川から釧路まで乗り通して運用を調査し、その結果を基に翌日から撮影に走り回ったものです。余談ですが同レに乗ると十数運用あったタラコ車のうちの1~2運用を除きほぼ判明したので、効率の良い撮影計画が立てられました。
    今回富良野から新得までノンストップの快速バスが新設されますが、これを利用すると乗継~乗継でほぼ元2427Dのスジで釧路へ行けるようになります。同レは一部がバス代行になったとはいえ今でも人気があるようで、そのための快速バス新設ではないかと思いますね。

  2. 1900生さま
    長文のコメント、ありがとうございます。こんな僻地まで行ったクローバー会会員は、まずいないだろうとの思いで寄稿しましたが、さすが、1900生さん、やっぱり行っておられたのですか。先走ってしまい、失礼しました。それにしても、滝川5:49発からのスタートですか、すごい行動力です。私は乗れなかった代行バスの乗車記は、たいへん興味深く拝見しました。ほぼ旧線に沿っているなら雪のない頃にぜひ乗ってみたいです。高校生の乗車が、下金山あたりから、代行バスに乗り継いで、落合の先まであったとは驚きです。私が乗車した2429Dは、不通前は日本最長の普通列車でしたね。この改正で新設された富良野からの快速バスに乗れば、新得で釧路行きに接続します。富良野では、駅前から快速バスが接続することを盛んにアナウンスしていましたが、見た限りでは、2429Dからの乗換客はいませんでした。

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