▲ 今迄公式には撮影を許されなかった广元の監獄鉄道の栄山駅。初めて訪れた駅で迎えてくださったのは、最近訪れています東南アジアの皆さんにも増してのさわやかな笑顔のおばあさんとしっかり寄り添うお孫さんでした。これで天候に恵まれない重い気持ちが吹っ飛びました。ありがとうございました。
いよいよ今日から3日間、監獄鉄道を走るC2型蒸気機関車の撮影開始です。
この鉄路は、四川省广元市郊外の栄山から山の石炭採掘場までの約6キロを走る762㎜ナローゲージの石炭輸送鉄道です。しかし途中には刑務所があって軍の管理下にあるために一帯は未開放地区に指定されています。立ち入りは不許可で勿論、撮影等許されるものではありませんが、蒸気機関車が大好きな鉄ちゃんにはそう言われれば言われるほど興味が膨らみ撮りに行きたくなるものです。
そして禁止と言われてもここは中国です。できないことは何もないと信ずる鉄ちゃんはあの手この手を使っても果敢に挑みます。結果、私の聞いているだけでも数10人が捕まり拘束されて始末書を書かされ、折角撮影したフイルムは没収、デジカメデータは削除されて追い返されておられます。しかしデータは現場で消されても復元ソフトで復旧できますので、確信犯覚悟で行かれているわけです。
処がこの厄介な刑務所が昨年6月に移転されて、外国人がこの地区に入る障害が消えました。政府発表はなかったそうですが、これで堂々と撮影が出来るようになったと勝手に理解した鉄ちゃんは8月の稲刈りシーズンを待って参られましたが、現地はまだ厳戒体勢はとかれてはおらず、また島の問題勃発もあって、あえなく御用となられたそうです。
しかしながら優秀な案内人のおかげをもって無事に撮影を何度も続けられておられた方もおられます。この案内人は銀川の寧夏招商国際旅遊有限公司国際中心の鄧さんでよく知っています方でしたので、昨年10月にはO氏と一緒に行く予定を立てていました。しかし島の問題は沈静化せずむしろ拡大化してきましたので「君子危うくは近づかず」の精神で取りやめることにしました。
今回も予定には入っていませんでしたが、小竹直人先生企画の興隆鎮森林鉄道ツアーが都合で中止になり代替案として監獄鉄道が上がりました。小竹先生と案内人の鄧さんは先生が中国鉄にハマられてより20数年来の旧知の朋友です。私もいつかは行かねばと思っていましたので、もろ手を上げての参加となりました。
第4日目 5月4日 その1
早朝5時過ぎには目覚めました。外を見ますと昨夜から降り出した雨が続いています。初日から暗雲が立ち込めていますが、期待はこれを吹き飛ばします。そして雨でも生かすアングルとカメラアイを持った経験豊富な中国鉄ちゃん軍団は、もろともせずに6時半には、宿泊している广元巨洋酒店からチャーター車で起点の栄山駅へと向かいました。
出発前のホテルのロビーで鄧さんは不安の残る我々に何と撮影許可証を渡してくださいました。許可証には発行ナンバーが記載されています。我々で最も若い番号は00014でした。と、言うことはこれを手にした鉄ちゃんは我々より前に13人おられたようです。詳細は事情により控えさせていただきますが、これは天下の印籠です。もう安心です。不安は消えヤル気が増す中で栄山駅に着くころには雨も上がってきました。7:01、入替機回しを行い出発準備をする218号機と219号機です。 栄山駅から採炭場までは、空セキと客車の混合列車でプッシュプル運行されています。
左が標準時刻表ですが、遅延や運休はあるそうですので、その都度の確認が必要です。
栄山駅は標準ゲージの国鉄線との積み替え駅でもあったそうです。今は广元駅までのレールは撤去されずそのまま敷設されていますが廃線となって、上遊型1305号機が野ざらしで放置されていました。朽ち果ててはいませんが走行はとても無理っぽい状態です。
雨が降ったせいもあって肌寒いくらいに気温はぐっと低くなっています。ドレインも吹けば辺り一面真っ白な世界になりました。力闘の噴煙を期待しました。発車は7:20で直ぐです。チャーター車に乗り込んで小竹先生ご推薦の場所へと向かいました。
7:47、栄山駅の街並みを出ると大きく馬蹄形カーブを回って川沿いを上がって行きます。正向きは栄山駅方向ですのでテンダーファーストの逆向き運転です。後補機がもう少し煙を出してくれれば良かったのですが、5月ですのでこれだけ出れば良し良しですね。
8:11、撮ったらすぐに追っかけですが、舗装が最近にできた狭いカーブ連続の山道です。列車が途中の刑務所前で停車したので追い越せました。1番目の場所と同様に春の菜の花シーズンはとても綺麗だそうです。
追っかけはここまで、もう追いつけません。終点の採炭積込み駅に行く事にしました。
採炭積込み駅に行くにはチャーター車を降りて長い吊り橋を渡ります。保津峡駅のようでもありますがこちらの橋は、所々踏み板が外れたリポビタン橋です。踏み外さないように気を付けて渡りました。
▲ 機関士さんC2からホースを伸ばしてカマの足回りを高圧水蒸気で洗車を始めました。余りかけすぎると油を必要とする箇所もありますのですが、お構いなしに万遍と綺麗にしました。毎回この調子でやっているのでしょうね。まあ大事にされていると思っていいでしょうね。
▲ 昨年6月までは多くの囚人が就役していた刑務所です。山を走る道路から見られるとは無防備過ぎませんか。これを見せるなと言っても自然と目に入ってしまいます。山の皆さんも迷惑な存在だったのでしょうね。ここにも炭鉱があるのか停車をします。塀の中には空セキが数10両おいてありました。
▲ 8:50、山から下りる返しの便はC2型蒸気機関車単機と客車だけでした。セキの積込みが終っていなかったようでもう1台のC2型は山に残したままでした。午後2時ごろ降りるだろうとの事でしたが、決まっていない返事でした。この後追っかけをして栄山駅手前の橋でキャッチを試みましたが、列車の方が瞬間早く蒸気機関車の頭が切れてしまいました。まあ無理は禁物です。
0:09、遅い朝食です。繁華街?に行けば何か食べられそうなものがあるだろうと参りました。
朝市が開かれていまして、覗き込むとこの時期の山の幸「熟れたグミ」です。初めはサクランボかなと思って一斤4元(約68円)で買い求めましたが食べるとグミでした。
懐かしい味ですね。幼年期の頃は我が町の山にたくさんありましたのでよく食べました。山の幸にも恵まれた广元と知りました。
朝食は皆さんの希望で麺でしたが、ぶっかけです。寒いので暖かいスープ麺を望んでいたのですが、ここではこれが定番の麺です。おまけに四川ならではの辛さです。全部平らげる方はおられませんでした。
ぶっかけ麺も伊勢うどんや徳島の生醤油ぶっかけでしたら口に合うのですが・・・。
▲ 10:01、栄山駅に戻って構内を大手を振っての撮影会です。私は地元の方とのコミュニケーションが好きですので、お会いした方から順にご挨拶をしますと、今迄に撮影に来られた方の対応にはなかった笑顔でのお返しがきました。住民の方もこんな日が来るのを待っておられたようです。
▲ ウマが合ったのか気に入られてしまったお姉さん、どこから来たのか等々話しが弾んで盛り上がってしまいました。満身の笑みはもう少し自分が若かったらと思わずにおられませんでした。楽しいひと時をありがとうございました。
次の撮影は昼からだろうかなと思っていましたら突然に走行音が聞こえて山に残っていたC2が単機回送で帰ってきました。
あれあれ、これは想定外でした。2台揃ったので、昼からの運用は通常になるのかなと思いましたが、またまたそんなわけにはいきませんでした。
中々撮影スケジュールが立てにくい鉄路のようですが、取りあえず全体がだいたいですが呑み込めました。さあこれからが本番です。 ーーその2 Part 4 へ続く