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郡山から満員の急行「八甲田」に乗って、深夜1時過ぎに盛岡に着いた。待合室のベンチは、すでに寝袋族に独占されていて、やむなく通路に新聞紙を敷いて横になるが、固いコンクリートの上ではとても寝られたものではない。明るくなって、駅の裏手にある、盛岡機関区へ向かった。
東北本線は盛岡〜青森間が最後の未電化区間として残っていた。しかし、1ヵ月余り後のヨンサントウ改正で、いよいよ全線の電化が完成する。改正を前にした盛岡機関区は最後の煙の競演を見せていた。D51のトップナンバーがいる。初めて見るC61がいる。東北本線独自の小デフを付けたC60が続く…といった具合で大型蒸機が扇形線にあふれていた。そんななか、ラウンドハウスの横に、特急のヘッドマークが置かれているのを発見した。
区の方に聞いてみると、蒸機に付けても構わないとの返事。喜び勇んで、重いヘッドマークを同行の士とともに担ぎ上げて、次々に付け替えて写しまくった。写真はその一枚、「ゆうづる」を付けたC6016。
「ゆうづる」は、昭和40年10月改正で生まれた上野〜青森間の寝台特急。昭和42年までC62牽引で話題となったが、これは常磐線の仙台〜平間のこと、東北本線の非電化区間は、誕生当時からDD51重連牽引で、実際にはあり得ない組み合わせではある。朝焼け空をバックに飛び立つ鶴をイメージしたヘッドマークは、出色のヘッドマークとして名高いが、「ゆうづる」はヨンサントウ改正で583系電車に置き替えられるため、ヘッドマーク自身もまもなく消えてしまう。歴史的な大改正を前にして、蒸機特急の意外な晴れ姿を、区の粋な計らいで演出することができたのである。
【C60ゆうづる.jpg : 96.3KB】
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