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会員の皆様、酢酸臭の強いフィルムの表面がキラキラと光ってはいませんか。
針状・柱状結晶のようなものが析出していませんか。
私のストックのうち、カーリングと酢酸臭の強いフィルムのかなり多くに発生し
しています。 フィルムフォルダの内側に近い方に多く発生し、外側に近い部分は少ない。つまり空気に触れ難い部分に発生が多いのです。手元の拡大鏡では、析出物の形状がもう一つはっきりしません。
とにかくスキャンしました。すると、画像上に白く細い直線や斜線、太い半弧状曲線などが無数に見えました(画像before参照)。遂に画像破壊が進んだと思いました。画像処理ソフトで消去できるような数ではなく無数にあります。虫食い状ではないが、なんだか汚い醜いパターンです。
あきらめていたある時、何となく『鼻の脂』をちょいと付けました。様子が違います。無くなりはしないが柱状結晶がぼやけたのです。思い切って手元の家庭常備薬、『ムヒソフト』をフィルムの表面に薄く延ばして塗布しました。キラキラ感は消えました。が結晶状の物が完全消失したわけではなく痕跡は残っています。それでもスキャンしたらクラックが見事に無くなったではありませんか。しかも画像の黒の部分−蒸気機関車の黒が特に−輝いて見えるではありませんか。
(画像after参照)。
そのフォルダのフィルム全てに塗布して再び保存しました。それから8ヶ月後の最近に、取り出してスキャンもしました。結晶状物など新たな析出物の付着はありません。フィルム表面にも特別の変化は無いようで一安心です。
さて、フィルム上の析出物は何か。ネット上の文献で調査しますと、どうやら
TACフィルムの配合剤の一つ、TCPという可塑剤もしくはその分解物であるとのことです。アルコールには溶けるが、水には溶けません。常温では固体とのことフィルムの加水分解がかなり進んで、遂には可塑剤まで滲み出て、常温で固体の状態でフィルム表面に付着しているとの説明です。
ここで、疑問があります。析出は、感光乳剤層の側(表側)だけで、反対側(フィルムの裏側)には全くない。なぜだ?!。通常プラスティック・フィルムのブリード(常温で液状の可塑剤などの滲み出し)、ブルーム(常温で固体物の析出)には、表裏の区別がない。析出するなら裏側に出てもよさそうなものなのに。ここにもカーリングとの関係が隠されているようにも思います(後述)。
それはともかく、『ムヒソフト』の主成分はグリセリン(保湿剤、少しの水分付与は構わぬか?)です。析出物を溶解しないが、一面に塗布した後、ティッシュペーパーで一度ふき取ります。ティッシュにはわずかだが、薄い黄色の汚れが移っていました。その後、もう一度薄く塗布して拭き取りました。それでスキャンし、あと保存した訳です。
『ムヒソフト』に類似の、ハンドクリーム『アトリックス』やスキンクリーム『ニベアクリーム』があります。同様に塗布して比較した結果、『アトリックス』の伸びが一番であったように思います。3者の成分でフィルムに悪影響する組成物は少なく、フィルムにはいづれも優しいようです。
私のストックフィルムに、析出は結構たくさんあります。早急に処理を急がねばなりません。でもこれで分解と劣化が止まるのでしょうか。どうも判りませんね。今のうちに早くデジタル化保存することでしょうね。では、デジタルデータの保存媒体は長期にわたり安全か。これまた判りませんね。CD−Rはそこそこだし、MOでも50年?。まあ、私の場合、そんな長期保存は要らない中身ですが。
次最終回は、カーリングや加水分解の始まったフィルムの延命策などの紹介と、私のストックフィルムのカーリング異常ありと異常なしの両タイプなどについて記述してみます。
写真のデータ
臨試2794レ 機C5345 スシ28301+マロネフ591+マロテ492+スハフ
東海道線・甲子園口-立花間、1961.9.21
【after.jpg : 209.4KB】
【before.jpg : 222.3KB】
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