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鉄道を中心に陸海空の乗り物の展示や調査研究活動の拠点として幅広い世代に親しまれてきた東京・神田の「交通博物館」が14日、70年の歴史にピリオドを打つ。実物の車両に触れ、鉄道模型を動かすことのできる先駆的な展示手法は子供たちの心をつかみ、その後の博物館のモデルになった。戦前戦後を通じ、鉄道ファンの夢とロマンを満載してきた“鉄道文化の殿堂”は建物の老朽化でひとまず長い旅路を終える。
0系新幹線とD51形蒸気機関車の先頭部が飾られた玄関は、閉館が迫るにつれ家族連れが目立ち、4月は9万2202人が入館。ゴールデンウイークの10日間には7万4260人が訪れ、昨年同期比約4倍の盛況ぶり。
中でも実物の80分の1の列車が行き交う鉄道模型セットの周りは身動きができないほどで、運転体験ができるシミュレーターの前にも長蛇の列が続いている。
同館は85年前、東京駅北側高架下に開館した鉄道博物館が前身で、関東大震災で被災したのを機に1936年、現在地に移転した。その後、自動車や船舶、航空を含めた交通機関の歴史や未来を実物や模型で常設展示してきた。重要文化財の1号機関車や1号御料車などを含む約25万点の資料を収蔵。統計を取り始めた46年以降の入館者は8日現在で2977万2073人に達した。
専任学芸員の佐藤美知雄さん(58)は同館と35年間、歩みを共にしてきた。佐藤さんは「貴重な資料を寄贈してくれた関係者の顔が浮かぶ。収蔵資料は質量ともに世界でもトップクラスだと思う」と胸を張った。展示内容は学芸員が考え、工夫し、アイデアを出し合いながら手作りでやってきたという。文化遺産ともいえる収蔵品はJR東日本がさいたま市に建設中の「鉄道博物館」に移設され、来年10月14日の鉄道の日に開館予定。
佐藤さんは現在の施設に暫定的に置かれる研究部門に残り、鉄道博物館には移らないという。「新施設でも資料を寄贈してくれた人の熱い思いを引き継ぎ、今まで以上に親しまれる企画展をやってほしい」。佐藤さんはしんみりと語った。【斎藤正利】
写真は、閉館が迫まるなか、ファンでにぎわう交通博物館=東京都千代田区で11日午前10時35分、山本晋写す
(毎日新聞) - 5月11日17時24分更新
【交通博物館のコピー.gif : 112.2KB】
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