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函館本線山線でC62重連を堪能してから、札幌にやってきた。一泊後、早朝の札幌駅前で写した光景がこの一枚。
自動車がほとんど見当たらない、閑散とした駅前に停車中の市電は、A830形連接車。その後、昭和51年に名鉄美濃町線へ移りて2005年まで働いていた、あのモ870形の札幌市電時代の姿である。とにかく窓の大きなヨーロピアンスタイルは、人々の度肝を抜いた。カラーもグリーンの濃淡で、小窓改造もなく冷房も付いていない原型時代である。当時、札幌市には地下鉄もなく、市電が全盛の時代で、ディーゼルカーや連接車、親子電車を続々と生み出し、路面電車では先駆的な都市でもあった。
駅前は、現在では道路中央にグリーンベルトができて、このような広々とした印象はなくなった。反対方向を振り返っても、一直線の道路の先に、すすきのあたりまで望見できたが、今は街路樹が遮り、見通しが利かない。左手は地上時代の札幌駅。北海道の民衆駅第一号として完成したが、商業施設は僅かで、上層階は札鉄局、北海道総局が占めていた。
右手の茶色のビルは、五番館デパート。当時札幌では唯一の百貨店で、駅前にはここぐらいしか商業施設がなかった。右端に「万博まであと◎日」のカウントダウン時計がある。2年後のことなのに札幌でも掲示してあるのを見るに付け、いかに万博が国家的な大プロジェクトであったかが分かる。過日、久しぶりに訪れた札幌は、洞爺湖サミット一色だった。万博とサミット、思わず時代の隔たりを感じてしまった。
市電をよく見ると、祝日でもないのに日章旗を立てている。この日、昭和43年9月1日は、北海道ができてちょうど百周年に当たる開道百周年の式典が、午後から天皇、首相が列席して行われる記念すべき日でもあった。札幌駅前も心なしかか晴れやかさと緊張感に包まれていた。これから、そのお召列車を追って、道内を駆け巡ることになる。
▼tsurukameさま
「ゆうづる」と「龍ケ森」の記事ありがとうございました。東北本線での「ゆうづる」は、上りは完全な夜、下りも青森寄りでないと撮りにくい時間帯で、たいへん貴重なシーンです。よくぞ撮られたものと敬服いたします。赤と青の編成はまさしくカラー向きの憧れの列車でした。「龍ケ森」のヒュッテに2回も泊まられたとは驚きです。スキー客でいちばん賑わっていたいた時代の貴重な資料で、当時の盛鉄局の意気込みが伝わってきますね。
【札幌駅前の市電.jpg : 266.8KB】
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