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LINZの町で(その3)Postlingbergbahn−2
この登山トラムは昔の形態をゲルマン民族的に頑固に守り、戦後新製した電車でもハンドブレーキしかない。運転用は通常の水平クランク式だが、105‰の下り勾配専用にはケーブルカー非常用とほぼ同じ特殊ブレーキを使う。
この詳細は久保 敏氏「オーストリア リンツのペストリングベルグバーンに乗る」鉄道ファン469号(00年5月号)に詳しいので参照されたい。
運転台上記通常ブレーキハンドルの右側に小型の丸ハンドル(水平)があり、これにより床下シャフト・ベベルギヤを経て、両レール頭部分を両側から挟み締め付ける。写真でレールに沿って細長い木片があるのは、単なるプロテクターないしはカバーのようで、レールを締める部分は外からは見えない。
前回の10月7日[651]最初の写真「登山電車」をクリックして拡大すると、ポイントが通常ではなく、「鈍端」式なのが分かるだろう。これは脱線防止に両フランジ車輪(通常のケーブルカーでは中央離合部分で外側になるレール側にのみに使う)を使っていた時期があるのと、このレール頭部を挟むブレーキのため、通常のポイントが使えないからである。
下り専用ブレーキハンドルは使うときだけ、まるで丸鍋の底に手を付けたようなカバーを外し、ブレーキ使用が終わるとすぐハンドルに被せ直すのが面白い。
終点では運転手がポール回しをやるが、紐の先端に小さな丸いもの=レトリバーがついている。
我々が知っている「米国式」レトリバーとは、ポールが外れ、ピンと直立した際紐が勢い良く繰り出されるショックでクラッチが動作。次いでポールが架線メッセンジャにあたってガン!という大音響とともになぎ倒された時、すかさず紐を巻き込むが、先程のクラッチで作動した「戻り」で、再びポールが直立しないよう引張りを持続する、というものである。最も戦時中から手入れ不足でほとんどまともに作動するものはなかったが。
この登山トラムのものは、まことに小さく、かつ終点ごとに前後付け替える(恐らくバヨネットにでもなっているはず)から、かような複雑な構造ではなく、単に紐がたるまないよう巻き取るだけである。
終点には元々は城砦だった、古刹というべき巡礼教会があり、リーズナブルなレストランがあって、塩辛く硬いブレッツエルという、一筆書きみたいなパン(ブッシュ大統領が喉に詰まらせ有名に)をアテにワインやビールを飲みながら、トラムを撮影できる。最も誰が撮っても同じ構図になるのは致し方がない。
この少し奥に家族向け遊園施設Grottennbahnなるものがあり、どうやら宝塚ファミリーランドにあった「世界は一つ」を大規模にした乗り物(遊戯施設)らしい。
【集電器回し.jpg : 125.7KB】
【下り専用制御機構.jpg : 89.2KB】
【終点を出るとすぐ急勾配.jpg : 129.5KB】
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