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◎つぎは茨城交通へ【写真10】
水戸で泊った翌日は、茨城交通湊線へ行く。湊線は、常磐線勝田から阿字ヶ浦までの14.3kmの路線だが、2008年3月限りの廃止を沿線自治体に申し入れしたとの報道があったばかりである。鹿島鉄道と比べて、路線長は短いものの人家は稠密で、輸送密度は鹿島の倍以上の1400人程度あるが、減少率は著しいようだ。地元の新聞によると、茨城県は可住面積が全国4位で、人口が分散化しやすく鉄道にとっては不利な人口分布となっており、また高齢者とその子供が近くに住んでいる割合、高齢者近住率が全国1位で、クルマによる送り迎えが習慣化しているという。要は、年寄りも鉄道に乗らなくなってしまったのだ。さて、湊線の目玉は、何と言っても国鉄カラーの復元車である。本日は平日のため、朝のラッシュ時には、クリームに赤帯の準急色と、一般色が仲良く2連で走る姿を捉えることができた。
◎模型のような那珂湊【写真11】
中間にある那珂湊は湊線の要衝で、乗客はここでほぼ入れ替わる。裏手には機関区があり、廃車になったボロボロの車両はじめ、在籍車両がすべて置かれている。駅舎も古いもので、駅員も常駐していて、人間の営みが見られる。さらにバス車庫や煉瓦造りの倉庫もあり、駅周囲全体が“模景”と呼びたくなるほど、コンパクトな中にすべてが揃った、ローカル線の要衝駅らしい佇まいだ。待合室でスナップ写真を撮っていると、品川ナンバーのロケバス3台が駅前に乗り付け、突然テレビのロケが始まった。ロケバスから姿を現したのは、テレビでよく見かける、東京のお笑い芸人だった。どうやら、日曜日の晩にある某局の旅グルメのロケらしい。そういえば、那珂湊は河口に開けた古くからの港町で、一角には古い街並みが残っている。鄙びた観光地としての魅力も持った那珂湊なのである。
◎仕上げは中根で【写真12】
那珂湊から終点の阿字ヶ浦へ。かつては海水浴場として名高く、上野から臨時列車が乗り入れたほどの終着駅だが、この季節、その賑わいが全く信じられないほど、駅前は荒涼として、冷たい秋風が吹き抜けていた。一人だけ折り返しの列車に乗り中根へ。人家の多い沿線にあって、この前後だけ田畑、森林が続き、人家は全くなく、どこからでも狙える。往きの列車から見た、中根〜金上の中間地点へ最後の歩を進める。軌道は50kgレールですべてコンクリート枕木化されており、インフラはまったく問題ない。まっすぐ伸びたレールが緩くカーブする地点へ。横にはいわくありげな小山があり、その横で今回の旅を締めくくる列車を待った。天気は下り坂、夕陽も絶望になった。長居は無用、去っていく列車を見送ったあとは、帰宅の途に就くだけだった。 (終)
【写真10 準急色DC.jpg : 105.4KB】
【写真11 那珂湊.jpg : 153.8KB】
【写真12 中根.jpg : 212.5KB】
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