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当会諸先輩のフィルムの被害が著しいようです。私どもの比ではないようです。
1.酢酸臭がする。 2.カーリングする。
中でもカーリングは深刻で、極端にカーリングしたものは、鉛筆の太さくらいに丸まっているそうです。故人の貴重な記録フィルムも含まれているようです。
映画フィルムの復元策に、アイロンで熱をかけ伸ばす方法も見かけましたが、一つ間違えばフィルムをダメにしそうで、あまり進められる方法ではないようです。
残念ながら、物理的な圧力で徐々に回復するしか方法はないようです。鉛筆くらいの直径の木質丸棒やそれより太い直径の丸棒を数種類用意して、徐々に径を広げて行き、最後にアクリル板か木製板に挟んでゴム付きC型クランプなどで加圧して少しづつ伸ばす方法が安全かと思います。
実際私のフィルムも展示会などから帰宅した時は、加圧状態が開放されていたためにカーリングが激しい状態です。この時は厚さ10mmくらいの木の板に挟みクランプで固定して1〜2ヶ月放置、その後缶に戻しています。
私のストックフィルムの場合、諸先輩よりは年数が新しく、また保存期間も少しは短いためか、カーリングは少ないようです。保存は菓子や乾物類の空き缶に窮屈な状態で詰めていたせいかも知れません。ただし、酢酸臭は強く、春秋に家中をフィルムだらけにしながら『虫干し』し、カルシウム系の乾燥剤、シリカ系の除湿剤を時々取り替えながら保存していました。温度は室温ですから、良い保存環境ではありません。
このカーリングと酢酸臭、私の場合1965年以降のフィルムには全くみられません。それ以前のフィルムが異常なのです。この記事を読んだ会員の方から連絡を頂きました。その方は1967年以前のものに酢酸臭とカーリングがあり、それ以後のものはやはり全く異常なしとのことでした。
メーカーが述べる、酢酸臭発生→分解の始まり→カーリングの順序だけではなくて、カーリングは別の原因で発生していると、私には思えて仕方がありません。フィルムメーカーが製品に何か変化を加えて改良した時期こそ1965年頃で、これを境に少なくなったと邪推しています。詳細は勿論公表されることは無いでしょうが。
NPO法人『映画保存協会』のTACフィルムの劣化に関する情報記事の一部です。
アセテート(注:TAC)の劣化の進行段階−典型的なアセテートの劣化とは
1.酢酸臭
2. 縮み
3. 反り(カッピング):フィルムがカーブして平らにならず波状になる
4.クレージング:エマルジョンが剥がれて画像がぐちゃぐちゃのモザイクのよう になる
5. エッジに白い粉があらわれる(バインダーの劣化、バインダー=ベースとエ マルジョンのつなぎの役割を果たす部分)
6.フィルムの巻きが角張ってくる
7. フィルムが柔軟性を失い、乳剤面やベースが剥がれ落ちる
(http://www.filmpres.org/)
酢酸臭が発生し始めたフィルムはTACの分解の始まりであり、止めようが無いとのことです。密封を避けて風通しを良くし、涼しいところに保管する。と同時に、異常の無いフィルムへの伝染を防ぐため、別々に保管すべきとのことでした。
カーリングも物理的な圧力でカーリングを防ぐようにとのことでした。
前回記述の私の場合のように、可塑剤等の析出がないようであれば良しとする。あるいは画像が極端な変化を起こしていない内は、まだ良しとするしかないのでありましょうか。貴重な資料を長期保存できるからこそ、写真にしたのに、フィルムで保存したのに。”SAFETY”とフィルムに印字された文字は恨めしい限りです。
話は変わりますが、国産のカラーフィルム(このベースもTACです)は少し退色が見られるものの、変化と変質はないですね。マウントの接着剤は完全に用を足さずにバラバラですが、カビも発生していません。高温多湿の気候に順応しています。一方、コダカラーはカビがひどいです。でも、マウントの接着剤はしっかりしています。その点アグファカラーはカビも無く接着剤も健全で安泰です。
保存状態が危うい一部のフィルム、今のところ大丈夫なフィルム、いずれも早い内にdigital化とは思いますが、なかなか進まぬ今日この頃であります。
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