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【651】おじん2人ヨーロッパ軽便 その10-2
 湯口 徹  - 06/10/7(土) 12:22 -
  
LINZの町で(その2) Postlingbergbahn-1

これは広く知られた登山電車―クラシックで、実に綺麗な2軸単車である。リンツ中央駅から市電3系統で旧市街を抜け、ドナウ河を渡って終点へ。ここにはOBB=オーストリア国鉄の支線終点(リンツ・ウアーファール駅)もあり、海抜は264m。

ここから海抜519mのペストリングベルクまで2.88km、1898年開業、軌間1000mmのトラムが、実に105‰の勾配を粘着力だけで上るのがウリだが、その2軸電車が実に綺麗でクラシカルなのだ。ほとんどの本や情報は、粘着のみによるヨーロッパ最急としている。

しかしPostlingberg というホームページのみには、世界二番目、一番はリスボンの電車で、145‰とある。リスボンのトラムも急勾配、急カーブ、やたら狭い路地を抜けるなどが有名だが、ケーブルカーもあるはず(行ったことはない)で、145‰が粘着力だけで上れるかどうかも含め、小生には分からない。http://www.subways.net/austria/post/postlingberg.html参照。
なお今はなき京阪電鉄京津線蹴上の勾配は碓氷峠と同じ66.7‰、箱根登山鉄道は80‰である。

このトラムに関しては従前から記事も多く、鉄道ファン469(2000年5月)号に久保 敏氏が図面入りで詳細な紹介をされている。車輌はオープンカーが I〜IV(1898年製=当然夏季のみ)、密閉型がXI〜XVIIIと、ローマ数字が珍しく、かつ美しい。後者はクラシカルな車体ではあるが 1948〜58年製で、24kw×2個。クロスシートで座席22人、立席11人の計36人乗り、自重9.6トン。

車内はニス塗りで、不燃材料に馴らされた我々には何とも懐かしい。木ネジも電動ドライバーが使えないマイナスねじで、真鍮だけでなく、溝がきっちり木目にあわせてある。スイスもそうだが、ゲルマン民族の頑固さと美意識なのだろう。

大方は道路に沿い、別に立派な道路もあるから住民利用は少ないかと思ったが、老人を含め途中乗降の住民もあり、自転車は逆さにして妻面の大きな釣り針のようなフックにつるして運んでくれる。下りは自走するのであろう。

我国ではかつて気動車の荷台が自転車搭載に重宝され、茨城鉄道では妻面床下に、仙北鉄道では窓下に、西大寺鉄道の客車は連結面に、それぞれ自転車を保持する工夫をしていた。しかし逆さにしてぶら下げる発想は日本にはない。結構力も要るはずである。


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