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【706】おじん2人ヨーロッパ軽便 その12-2
 湯口 徹  - 06/12/8(金) 10:34 -
  
YPPSTALBAHN(その2)

先回に入れた路線図で左上、標準軌間線のWAIDHOFEN(HOFENとは河港であろう)駅本屋前から発するイップス線は、3つ目の駅GSTADTでYBBSITZへの支線を分岐する。分岐駅とはいっても、先回ご覧いただいたように、バックにかなり大きな工場こそあるものの、反対側や周囲は日本人なら間違いなくゴルフ場と勘違いする牧畜地帯で、羊が草を食んでいる。人影もなく、それでいて貧しさなどかけらもないのはスイスとも似ている。

そのイプシッツ支線が又格別も格別に気分のいい超ローカル線である。機関車は1B1凸型の電気式ディーゼル機で、連結器を含む全長は10,800mm、1936/37年製が22トン、1939年以降製23.2トンと、我国軽便とは比較にならない程大きい、かつ古い車両である。機関は154kW(210馬力=当然積み替えているのだろうが)、128kW/360V/356Aの発電機に直結され、モーターは57kW×2。貫通ブレーキは真空式と思われる。

凸型だが、片方のルーバーのないほうのボンネットは実は手・小荷物搭載スペースだそうで、現在ではチッキ輸送はしていないから、空っぽ?であろうが、確かめてはいない。当時の時間表で月〜金曜の週日は15往復(週末は減る)の運行だったと記憶する。

イプシッツ終点での列車写真の右端バックに教会の尖塔が見えるが、葱坊主のような形は、少なくともプロテスタントではないのだろう。

昼前ではあったが暑かったので、この田舎町の駅前何でも屋で冷えた缶ビールを所望。ところが親父は何のかのといって渋る。結局向こうが根負けして肩をすくめ、奥に入って自家用冷蔵庫から冷えた缶を出してきて売ってくれた。
これでやっと事情が分かった。要するに客がその場で飲める飲料は、小売屋では売れない(それは飲食店の分野)習慣あるいはルールだが、言葉が分からん東洋人が飢え死んでは可哀想?と、自家用を分けてくれたのであった。

牧場を斜めにやってくる列車は、今思い出してものどかで気持ちのいい風景だった。ただし相棒は8mmビデオだったから、遠くで使っている草刈払機と思しき音もずっと録音され続けていた。


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