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【1062】続・山陰本線の思い出
 乙訓の老人  - 07/11/1(木) 22:45 -
  
その後、戦時中は山陰本線に乗ることはなかった。
ちょっと脱線しよう。1943年の夏、兄との二人旅があった。深夜に岡山で乗り換え、ホームのベンチで貨物列車(しか来ない)を見ていたとき、目の前にEF10が停まり目を見張った。兄の説明では、関門トンネルの開通による増強用だろうと言う。初めて見た電気機関車だった。呉線を前にして、窓、日除け(木製ガラリ)を閉めるよう車掌に言われた。瀬戸内には軍艦がアグラをかいていたからである。戦時少年である兄は軍艦、軍用機が好きで、ガラリの隙間から見ようとするのだが、よく見えない。そこでガラリを少し上げて、弟に説明してくれた。いちばんデッカイのが「陸奥」だったのは覚えているが、まさか燃料がなくアグラをかいていたとは二人とも知らなかった。このルートの旅はいつもスハ32で、岩国から省営バスに乗り、母の故郷、六日市へ行った。
富山県福岡町から大阪へ転勤になったのは1963年9月、転勤理由のひとつに、四国、中国地区に代理店網を展開することになり、その先鋒役となるためであった。学生時代は旅行が趣味と上司に言ったのが功を奏したようである。「しめた! これで山陰へ行けるぞ」とほくそ笑んだ。1964年春、下関を除き地区代理店網ができた。上司はさっそく当時珍しかったヒルマン車で代理店めぐりをやろうと言った。コースは、国道2号で小郡へ、9号で鳥取へ、さらに津山に立ち寄り、岡山から2号で戻るものだった。
国道から列車を見るなんて富山時代の金沢〜富山間しか経験がない。小郡からは山間部を除き国鉄と並行している。何度もD60の雄姿を見ることができた。3日目、松江に入ったとき、上司に大阪から電話が入った。急用ができたから今日中に大阪へ帰れとのことだった。地区代理店の社長は当地の有力者であり、米子鉄道管理局へ案内してやると言っている。上司は「沖さん、連れて行ってもらえ、残るお店は汽車で挨拶に行っておいで」と言ってくれた。しめた、これで自由になれて電車が見られるぞ!
米鉄局へ行く途中、社長に「むかし米子にも電車が走っていたそうですね」と切り出したら、「そんなことよく知っているね」。「母が六日市生まれで、満鉄に勤務していた父が病で帰国した後、皆生温泉で療養したときに駅前から市電に乗ったと言っていました」と言うと、驚いたようであった。このときすでにPIC誌55号で西鉄北方線313〜317の5両が元米子電車のものだと谷口良忠さんの紹介で知っていた。1953年9月の九州一周旅行の最終日夕方、雨の小倉駅前で電車を眺めていたが、米子からの4輪単車は意識せずだった。この年は、双子台風が四国沖にアグラをかき、雨の中で周遊券を消化しただけであった。
さて、須磨の大人に応援を求めたら、即317号の在りし日の姿を送ってくれた。また最新電動客車明細表及型式図集では図とともに次のように紹介されている。
W2,138×L8,072×H3,215(屋根迄)mm、電動機容量30hp×2、手用制動、自重9.0t、乗車定員40人、台車・日車ブリル型、車体製造・梅鉢鉄工所、大正15(1926)年購入。なお最近では、JTBキャンブックス『日本の路面電車III』でも紹介されている。写真の収集には見るべきものがあり、関心のある方はぜひご覧になると良いと思う。

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【米子電軌5号.jpg : 73.9KB】

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【北方線 元米子電軌.jpg : 43.1KB】
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