「青信号」、と言ってもこの「デジタル元祖青信号」ではありません。
本家青信号たる、鉄道同好会創部以来、連綿と受け継がれている紙媒体の「青信号」、それも、特派員の現役時代、ガリ版と謄写版で格闘した手作りの青信号です。
もう何を書いたのか、当の本人ですら忘れてしまっている記事内容を、当会とは何の縁もない人が覚えていたことから話は始まります。
その人、某電鉄会社勤務のKさんは、当時の青信号に書かれた”おとぎ電車”の記事をはっきりと覚えていました。おとぎ電車とは、宇治川沿いをわずか10年の間だけ走った、発電所資材運搬用の軌道を使った遊覧用の鉄道です。
「青信号」に著したのは、いまは富山に幽閉されている、私の3年下のYさん、おとぎ電車の製造・運営に関わったYさんの伯父さんからの聞き書きを数ページに纏めたものでした。
EVE見学に来たKさんは、この記事が載った青信号を購入したものの、いつの間にやら行方不明。ただ、おとぎ電車の記事が載っていたことだけは、はっきりと覚えていたのです。
このたびKさんがおとぎ電車のことを季刊「レイル」に発表することになり、ぜひ青信号を参考にしたいと、出版社のMさんを通じて、私のところに依頼があったのです。
さっそくYさんに連絡し、転載の快諾をもらい、このたび発売された「レイル」78号に、記事の抜粋と地図が、青信号のクレジット入りで紹介されたのです。
改めて40年も前の青信号を見直すと、現在のものとは比べ物にならない、粗末な出来上がりですが、書かれた内容は埋もれてしまうどころか、ますますの輝きをもって、甦ってきたのです。Kさんが「初めて鉄道趣味紙に載った記念すべき記事」と称賛するように、とくに、おとぎ電車の場合、今まで発表された報告もほとんどなく、青信号の記事が端緒になったのです。
改めてこの記事を著したYさんに敬意を表するとともに、我々の著した紙・電子媒体の著作物が、広く鉄道趣味活動の向上に貢献していることを再認識した次第です。
▲いま発売の「レイル」78号と、貴重な参考文献となった「青信号」26号