警告!ネオパンシンドロームはどっこい続く

かまいたち
1950年代のネオパンフイルムのベースが、化学分解し抽出した酢酸が強烈な臭気を発し、次いでフイルムにカビの如き不気味なものが発生し、フイルムベースが縮むだけでなく、他のフイルムにまで伝染し、結局は使い物にならなくなる―猛威を振るったネオパンシンドロームは、1960年の製品までと思われてきた。小生も学生時代の一番脂が乗りきっていた時期の35mmフイルムが100本以上やられてしまい、再起不能である。

ところが、1961年のフイルムもやられ出したことに昨今気付いた。早目に処理すれば表面に発生した「鎌鼬=かまいたち=小生が名付けた現象」をフイルムクリーナーで力任せにこそぎ落とし、デジタル修正で何とかレスキューも可能だが、ある時点を過ぎると見るも無残=救出不能になる。掲載は1961年2月撮影の福島電気鉄道軌道線である。

今回気付いたのは、1960年以前のやられ方と少し違い、フイルムベースがペラペラに薄くなっていること。化学専門の鶴兄によれば、一旦この現象が現れると、元には絶対戻らない由。

諸兄!1961年以降のネオパンを、至急点検し、早めにデジタル化されることをお勧めする。他に対策はない。それにしても日本を代表する大企業の富士フイルムは、一体どこまで「知らぬ顔の半兵衛」を決め込むのか。企業モラルの欠如はJR北海道や諸々の(一流)外食産業だけではない!

警告!ネオパンシンドロームはどっこい続く」への4件のフィードバック

  1. ”かまいたち”は修復できそうです。(偉そうに断言していますが、)
    フィルム全面に、商品名”アトリックス・ハンドクリーム”(メーカー:ニベア花王株式会社)を指で塗布します。余分のアトリックスをティッシュペーパーで優しく拭き取り、その状態でスキャンします。フィルム表面の微かな曇りも取れ、透明感が増し、光沢のある画像が得られるようです。私がこの方法で修復した武庫川を行くC5345の画像、レイル誌に掲載されたこともあります。修復前は湯口先輩の福島電鉄よりも酷いものでした。

    アトリックス・ハンドクリーム以外に、ニベア(ニベア花王)、ムヒソフト(池田模範堂)、アロインスオーデクリームS(アロインス化粧品)などもテストしましたが、現在のところアトリックス・ハンドクリームが良いようです。

    アトリックス・ハンドクリームの主成分は精製された良質のグリセリンや高級(炭素数の多い)アルコールです。ですからフィルムに害を及ぼすことは少ないと考えて良いと思います。アトリックス塗布後、通常の硫酸紙のネガケースに入れ長期保存テストをしております。今のところ、酸化変色等や、その他の異常は発生しておりません。硫酸紙にグリセリンが付着し、油紙になった様子もありません。しかも”かまいたち”の拡がりもそれ以上に進行していないようです。

    ネオパンのフィルムベースは、三酢酸セルロース(セルロース・トリアセテート)です。セルロースアセテートから酢酸(ビネガー:フランス語)が遊離して匂います。アセテートベースは柔軟性を失い、収縮したりカールし、硬くもなります。さらに進行すると下記のような被害も現れます。アトリックス・ハンドクリームは、ほんの少しですがベースに柔らかさ(可塑性)をも与えているように思います。

    ビネガーシンドロームの被害の内、”かまいたち”はまだ”ましな方”です。フィルム上に、直径2mm~5mmの丸い黒点が現れることがあります。スキャンすると当然、白点となります。車両の画像に影響しない空や、地面ならまだ好いのですが、窓枠や車両の重要な部分に現れることがあり、これは困ります。修復するには一コマで5、6時間はかかります。お蔭で私の右手3本の指が痺れることになり、現在マウスは左手専用機を使用しています。富士フィルムに治療代、マウス代金(12,500円)を請求したいくらいです。熊本電鉄のモハ51は重要な部分に発生した白点を、我ながら見事に修復し、デジ青に無事に投稿したこともあります。

    更にひどいのが、乳剤層がフィルムベースから浮き離れそうになることです。最早これは修復できません。諦めるしかありません。

    私の場合、被害は1964年12月以前のフィルムのほとんどに発生しており、山陽電車のフィルムは大被害を受けています。以後のフィルムに発生はしていませんが、ビネガー臭はだんだん強くなって来ております。

    目立った被害が少なくても、フィルムがカールしたり、寸法が縮んだり、スキャンできても果たして忠実な画像か疑わしくなることもあります。湯口先輩のおっしゃる通り、一刻も早くスキャンしてデジタル化すべきなのですが、なかなかできていないのが現状です。

    皆さんもネガの状態を一度よく確認されることをお勧めします。

  2. 湯口 徹様
    tsurukame様
    1961年より富士フィルムで撮影を始めたので大変気になりますが、まだ何も対策をしておりません。カビやキズはphoto-shopで修整しておりますが、スキャンしてデジタル化したいと考えております。アトリックス・ハンドクリナーというものは薬局で手に入るのでしょうか。それをフィルムの表面に指で塗りフィルムをティッシュで拭き取ってすぐにスキャンすればよろしいのですね。一度やってみます。

    • 準特急様
      はい。汎用タイプのハンドクリームですから、スーパーでも薬局でもどこででも買うことが出来ます。コンビニでも売っているかも知れません。5~6種類ありますが、フィルムに使うのですから、余分な配合剤は不要で、スタンダードなアトリックス・ハンドクリームAが良いと思います。チューブタイプや平底の缶入りがあります。筆者は後者を買っています。

      準特急さんのフィルムの状態がどのようなのか判りませんが、”かまいたち”状の損傷が無ければ無理に使用する必要は無いかも知れません。大切なフィルムですから、扱いは呉々も慎重に、いろいろ試行錯誤して下さい。

      フィルムの傷やカビの類は、湯口先輩や私のフィルムの損傷に比較すると、程度の軽い方です。スキャナー付属のソフトや、Photoshop Elements を使えば自動で削除も出来ます。

  3. 湯口 徹様
      当方、一階の押入れ下で保管していましたが、床下からの湿気のためか1965年頃のフィルムも酢酸臭がして、カールしています。

    tsurukame様
      とても有効な処方をお教え頂き、ありがとうございます。近々、試してみます。

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