「信号場」を巡る   ④

スイッチバック式 常紋信号場

信号場の存在がファンの間に知れ渡るようになったのは、蒸機の撮影適地としてクローズアップされたことが大きいでしょう。北海道での代表は、やはり石北本線、生田原~金華にある常紋信号場でした。前後、25‰の勾配が連続し、スイッチバック、補機付き、そして、いわくのあるトンネルと役者が揃っていました。石北本線の遠軽から留辺蘂へ、山越えの途中、延長507mの常紋トンネルを抜けた先に位置するのが常紋信号場。分水嶺のある常紋トンネルに向けて、生田原側、金華側から25‰勾配が続き、信号場はスイッチバック式になっていて、段差を持って、列車交換が見られるのは、スイッチバックならではの光景。右の列車は混合列車で、ダブルルーフの事業用客車、白帯貨車も見られて、この時代ならではの編成(以下、昭和43~47年撮影)。

鉄道が敷設されるまで、地名さえもないような、未開の辺境だった。常呂郡と紋別郡を分ける峠に当たるところから、「常」、「紋」を採って、「常紋」の地名が付けられた。北見から下湧別を目指す雄別軽便線が、507mの常紋トンネルを開通させて大正3年に開業、トンネルの北見側に設けられたのが、スイッチバック式の常紋信号場だった。最初は762mmだったが、すぐに改軌され、のちに石北本線となった。昭和26年から仮乗降場となり、「常紋」の名は時刻表にも記載されていた。

レベルになった着発線は2線あって、D51同士の交換が見られた。貨物はすべてD51または9600牽引、旅客はDCも進出していたが、前掲のように混合列車もあった。常紋トンネルを抜け、通過する貨物列車、通過式のスイッチバックなので、列車交換が無い場合は、停車することなく、信号場を通過して行く。▲▲小樽発釧路行き「大雪4号」が通過して行く。右奥に伸びているのが折返線で、タブレット授受用の小さなホームも見える。

こちらは2線ある着発線、補機を務めた9600が切り離されて待機している。両側に臨時乗降場の木造ホームがあり、末期は多くの撮影者が下車した。▲▲着発線で上下の旅客が交換する。

 

交換を終えた貨物列車は、9600に押されて、生田原方面に向けて発車する。

金華を出て、25‰勾配が、常紋信号場まで連続して続く。9600が懸命に後押しをする。左手に信号場の建屋が見える。▲▲いっぽう反対の貨物は下り勾配を軽々と下って行く。当時は本務も9600が牽いていた。

 

当時はタブレット閉塞であり、列車の交換、通過ごとに、信号場職員の動きを見るのも、常紋信号場訪問の楽しみだった。

 

 「信号場」を巡る   ④」への6件のフィードバック

  1. 総本家青信号特派員様

    本シリーズ、毎回楽しみにしております。いわくつきの常紋トンネルは存じておりましたが、信号場もあったのですね。デジ青は鉄道趣味界の古典的参考書で大変勉強になります。

    • 奈良の駅研さま
      “古典的参考書”の称号、ありがとうございます。でしょ、ネットで検索しても新しい話題ばかりで、古典ネタは抹殺されようとしています。新しいネタはどこからでも入手できます。デジ青は、古典ネタで勝負する反抗勢力でありたいと願っています。

      • 総本家青信号特派員様
        仁山は鉄道ピクトリアルに掲載されたり、私の中・高校の後輩にあたるJTBキャンブックスの元編集長の大野さんを偲ぶ会で総本家さんから紹介された江上さんの「スイッチバック大全」にも採り上げていただきもう同じ写真ばかりになりますが準備してみます。

  2. 総本家青信号特派員様
    常紋信号所は行ったことがありませんが昨年クモハ73106東ウラさんの運転するレンタカーで三田会の木村さんとご一緒した時この近くまで行っております。メモには2024.9.29金華(信)‐生田原DF200-62+貨物+DF200-52とあります。名ドライバーのおかげでこの列車は遠軽での出入りも撮っております。

    • 準特急様
      写真、ありがとうございます。蒸機の時代は、列車に乗って常紋へ行ったものですが、今ではみんなクルマに乗って常紋へ行く時代になりました。写真はフルコンのうえ、DF200後補機と、さすがに石北本線らしい迫力です。ところで、私は、北海道では、狩勝、仁山の信号場は行ったことがありません(狩勝は年代的に間に合わず)。準特急さんと言えば、仁山信号場のスイッチバックの特徴を生かした、素晴らしい写真を多く撮っておられます。ぜひ、発表、お願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

wp-puzzle.com logo

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください