新刊本の紹介

3月14日に大津市歴史博物館で講演を行ったばかりの総本家青信号特派員さんが今度は京都市電の本を出版されました。当会では湯口徹さんが島秀雄記念優秀著作賞受賞のほか数々の著書を発表され、山科の人間国宝さん、乙訓の老人さん、田淵仁さんも出版されておりますが、今回の総本家さんもこれに続くものであり、当会にとっても嬉しいことであります。総本家さんはこれまで出版の手伝いや共著で数多くの本を発表されてきましたが、今回は単独出版であります。

さて、本の紹介ですが

題   : 「京都市電」 昭和を歩く -街と人と電車-

発行所: トンボ出版(大阪市中央区森ノ宮2-3-1 Tel 06-6768-2461)

発行日: 2015年4月10日

です。         本の表紙 ▼s-福田さん京都市電表紙

内容としては京都市電の昭和30年代の北野線、いわゆるN電を含め昭和53年の全廃に至る凡そ10年間の記録であります。その特徴は副題にありますように街と人と電車の絶妙な組み合わせにあります。もちろん車両の説明もありますが、この写真集は京都の持つ明確な四季、行事、山河等の自然、建造物と人々の姿をうまくとらえ、懐かしさ、人情、触れ合い、ぬくもりを感じさせます。これは総本家さんの鉄道写真に対する基本姿勢の表れで、蒸機などを撮影した過去の作品やトンボ出版で前回共同でまとめられた「阪神国道電車」、JTB出版「京都市電の走った街今昔」、エリエイ/プレスアイゼンバーン レイル 「京都市電」でも同じ傾向が伺えます。3万枚に及ぶ撮影記録から推察しますと総本家さんは地元を愛し、四季のイベントは当然格好の題材で常に計画線上にあり、天候の変化や太陽光線の処理に気を配り、タイミング(シャッターチャンス)を待ち、今後はこう撮ろう、ああ撮ろうと試行錯誤を重ねてきたことが今回の素晴らしい作品に表れたのではないかと思います。加えて今回特筆すべきことは総本家さんが京都の中心に近い河原町丸太町で生まれ育ち京都のことを知り尽くしていることが全線全停留場という特別コーナーを作らせているところです。京都人ならではの執筆コーナーで読み応えがあります。巷にある旅行ガイドブックと比べても内容は異なりますが、地域の歴史や街の変遷という点では情報が数多く入っており読んでみると各人新たな発見もあると思います。もちろん総本家さんでもよく知らない地域もあり、各種文献にあたり、聴き取り調査をされたことは想像に難くないと思います。

この本は当会の顧問をやられた故大西友三郎さんを始め当会の乙訓の老人さん、西村雅幸さん、佐々木秀隆さん、京都在住の趣味の世界の先輩の皆さんの協力も得て完成されたとのことです。発売以来好評で書店によっては鉄道書以外の一般書や旅行書のコーナーでも平積みになっていると聞いております。

京都に4年以上おられた皆さん、京都の好きな皆さん、京都市電が好きだった皆さん、この本は皆さんにきっと懐かし時代を思い出せてくれることでしょう。

京都の三大学と市電

同志社 ▼s-同志社

 

京大 ▼s-京大

 

立命館大 ▼s-立命館

 

朝日新聞掲載のベストセラー(2015年4月24日) ▼

s-朝日新聞 京都版

新刊本の紹介」への7件のフィードバック

  1. 15年前に京都の町を走っていた路面電車を2人で紹介した片割れとして、よくぞここ迄詳細に紹介したものだと感心している。思い出せば前回は2年足らずの取り組みで、文字原稿担当の乙訓の老人も、最初は何をどのように書けばよいのやら戸惑った。車両のことならまかしといて、との広言する電車少年であったが、いざ京の町と電車との組み合わせとなると考えに考えたものである。学者ではないから故事来歴に精通しているわけでもなく、新米のガスガイドのようにネタ本を読むわけにも行かない。そうした観点からすれば今回はうまくまとめていらっしゃる。これにはクローバー会メンバーならご存知の「サカタニ」で写真展示、お話、店の機関紙で写真解説などを5年以上も重ねてきた経験からくるものがあろうと思うのである。
    他人の写真や文章などを中心にまとめる仕事から離れて5年、きっと自分の好きなような写真集を刊行してみたいと思っていたのだと思うが、やる!と知ったのは1年前であった。江若鉄道の企画のこともある中でよくぞここ迄まとめたものだとビックリしている。準特急君と同じ紹介文を書くわけに行かず、「昭和を歩く」はワンマンカーが走り出した以降の京都の町のご案内であるとすれば、写真というものがそんじょそこらにはない「いぶしがね」のような光を放ちつつ、貴方に語りかけているものとして受け取って頂きたい。
    講読希望の方は「元祖青信号」本人または応援団「乙訓の老人」までご連絡いただけば、便宜を図らせて頂くことも可能であります。

    • お得の老人さま
      “乙訓の老人”改め?“お得にの老人”さま、コメントありがとうございます。今回の本の編集に当たり、15年前の「走った街今昔」がベースになっています。老人の“与太話(失礼)”も、大いに参考にさせていただき、改めて御礼申し上げます。また、七条の店の機関誌にも、コツコツ投稿を続けてきたことが、今回は大きな助けにもなりました。何事も、地道な用意・準備が肝心との思いを強くしました。

  2.  新緑が青空に映え、心地よい季節になりました。ご案内有り難うございます。
    かねがね、発刊される旨のお話しを伺っていましたので、早速拝見させて頂きました。素晴らしい内容のご本ですね。
     全てお書きの通りだと思います。
     私の学生生活は、2番の市電と共にありました。22番が来たらそれはラッキーでしたが・・・片道13円、往復25円から始まり、すぐ片道15円になりましたが・・・古い話です。
     その昔を偲び、その時代の風俗、習俗が伝わってくる内容で、著者ならではの視点が、見事にそれを写し出していることが伝わり、感服しています。
     お陰様で、タイムスリップさせて頂きました。
     最終運転の写真には、クローバー会のお歴々の若々しい姿が写し出されています。プロかと思われる大きなビデオカメラで撮影されている方は、・・・さんでしょうね。
    今は亡き、Sさんのお顔もあり、思わず合掌しました。
     京都で学生生活を送った者に素敵な本が出版されたことを慶びたいと思います。
    総本家さん、ありがとう、お疲れ様でした。どうか沢山皆さんの方々のお手に渡ることをお祈りします。
     次はぶんしゅうさんもご発刊如何ですか?お待ちしています。
     ご案内有り難うございました。

  3. マルーンさま
    お褒めの言葉を頂戴し、ありがとうございます。マルーンさまの下宿先を「青信号」で確認しますと、浄土寺○○町と書いてありましたから、白川線浄土寺から市電に乗っておられたのでしょうか。確かに2番ですと出町(河原町今出川)で乗り換えですね、22番なら直通ですから、ラッキーですが、本数が少ない。“2に乗るか、22を待つか”、そんな葛藤を停留場でされていた、40年前のお姿を想像しました。
    このように市電利用者にとって、停留場と系統番号は、必須のものです。本書では、市電利用者の立場に立った企画・編集を盛り込んだつもりですが、いかがでしょうか。

  4. 準特急さま
    お身体が優れないと聞いておりましたが、暖かいお言葉、ありがとうございます。
    私が、地元の京都市電をテーマにして、撮り始めるきっかけになった言葉がありました。まだ、蒸機の撮影に明け暮れていた昭和40年代中ごろの鉄道ピクトリアルの写真コンクールの選評でした。ある辛口の選者が「地元でマトモな写真を撮れない人間が、C62重連だけが上手く撮れる訳がない。感動だけで写真は撮れるものではない。地元を大事にせよ」という内容でした。
    思い立ったら、すぐ飛んで行ける、お気に入りの撮影地を持つことは大事だと痛感しました。それが、市電なら京都市電でした。とくに準特急さんから書いていただいたように、市電の交差点から歩いて30秒のところに生まれ育った地の利は大きかったと思っています(その分、京阪や阪急など、郊外電車には乗る機会が、大学生までほとんどありませんでしたが)。
    今回は、クローバー会の有志の皆さんには、写真を提供いただいたり、編集・企画面で、相談したりで、本当にお世話になりました。改めて御礼申し上げます。

  5. 趣味というものは金食い虫で、なかなか「お得になる」にものではない。例えば私が死んだ時に古本を沢山残したとする、それを買って読んだ時に満足感が得られたとしても当たり前のことで、それなりに対価を払っている。その古本をあの世へ行った後で遺族が売って何がしかの収入が得ることが出来れば、「お得になる」のであって、買った本人は読む事によって満足感が得られたら、それでよいのである。その満足感が命ある間持続できる本にぶちあたることは少ない。紹介している「京都の市電・昭和を歩く」は何度も繰り返しめくってはその場を思い出すにもってこいであると思うのである。先日、老人をポン友の一人に加えてくだっさた方の奥さんが、残された書籍の数々を処分されたそうだが、いくらにもならなかったらしい。須磨の大人も「目方でもっていきやがった」と、ぼやいたことがあったが、老人も整理してもしても山積みになっていく書籍、1冊でもよいから誰か引き取って楽しんでほしいと願っている。それが出来る書籍は「お得な」ものだと思っている

    • 乙訓の老人さま
      なかなか本が売れない世の中、本にも「お得に」感が必要だと、つねづね思っています。それは、決して値段ではなく、情報量だと思います。買ってもらおうとすると、優れた写真が並んでいるだけでなく、そこに情報、とりわけ文字情報が必要です。それにより、相対的な「お得に」感を演出できると思います。今回の本も、あえて全線全停留場として、文字情報を増やし、すぐには見ないけれど、資料的価値を出すようにしました。
      古本のことにも言及されています。以下は、乙訓の老人さまにはお伝えしたことですが、最近、神田の古本屋で、たまたま店主が立ち話していたのを盗み聞きしたことが印象に残っています。数年前、ある高名な鉄道ファンが亡くなられ、遺族が大量に鉄道書を売却され、古書店に出回っているそうです。ところが、この方は、愛蔵家ではなく、研究家のため、切り取りやアンダーラインなど本を酷使しておられ、しかも蔵書印が押されているため、本の値打ちが、ウンと落ちるそうです。有名人の蔵書印ですと、価値があるのかもしれませんが、鉄道ファンで名を成しても、所詮はこの程度なのかと、妙なところで、鉄道ファンの世間的な評価を思い知ったところです。

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