まだまだ続くよ、台湾鉄路への遠征その1

虎尾のサトウキビ列車

今年の1月前半の台湾鉄路撮影記をレポートします。新型コロナウィルス禍が世界中に拡がる前の記録です。台湾については、諸先輩方が詳細なレポートをこのデジタル青信号で何度も発表されており、とてもその域に達するものではありませんが、内容は、振り返りも込めて、また、この状況を乗り越えた先に再び訪台出来ればとの願いも込めて発表するものです。

ここ暫く、年末年始の時期は台湾に行っている。この10年ほど日本から多くの鉄道好きが台湾に渡り、既に情報量も十分ある。台湾鉄路の魅力は、言い尽くされている感もあるが、南国ならでは景色、日本のファンにとって昭和時代の郷愁を感じる客車列車など多彩な車両群、等々挙げ出すといくらでも有ると思う。台湾では、鉄道ファンも多く、日本のようにファンをターゲットとした鉄路局のイベントも多くあり、例えば、6月の鉄路節の時期には、蒸気機関車けん引の客車列車を走らせている。また、ファン組織の活動も活発で、既に定期運行から引退したディーゼルカーを団体列車で走らせるようなイベントもありなかなか興味は尽きない。このように大きく興味を引く行事に合わせて訪台できればいいのだが、これがなかなか自由自在にはいかないのが悩ましい。いくら働き方改革と言っても、どうしても趣味のスケジュールよりメシの種となる仕事の予定の方がどうしても優先順位が高くなる訳である。それでも、台湾鉄路にはイベント狙いでなくとも、まだまだ客車急行や釣り掛け式の特急電車の定期運行があり、コバルトブルーの海の絶景を走る路線など日常の中に大いなる魅力がある。1月のはじめなら、仕事が本格的に起動する前で比較的行き易いし、日本が寒さに震えている時期に、高雄など南部の地域ならTシャツ一枚で過ごせるくらいに暑いのも愉快である。さらに冬時期は、台湾で唯一残るナローゲージのサトウキビ列車が稼働するのも強く背中を押す。というわけで、1月10日、関西空港7時50分発のMM023便で台北桃園をめざすことにした。この便は、関西から早い時間で台湾入りするのに便利な航空便で、日本航空が午前便を取りやめてしまったので、早く行こうとするとこのMM023便しかない、いや正確にいうと夜中便もあるのだが、これは寝る時間がない前提なので体力的に厳しい。桃園に10時10分着後、高鐵桃園11時34分発の新幹線で虎尾のサトウキビ列車をめざす。

虎尾のサトウキビ列車

 

虎尾のサトウキビ列車

虎尾のサトウキビ列車

新幹線は、何とかつて経験したことのない混雑である。指定は全て満席で、デッキですし詰め状態である。台湾では11日の土曜日に総統選挙があり、戸籍地でしか投票出来ないので国民の大移動が発生するのだそう。期日前投票や在外投票といった制度もないのだという。日本でも同じシステムなら単に投票率が下がるだけになりそうな気がした。新幹線でデッキに立ったままの満員ラッシュは実に久しぶりであるが、こんな経験はないに越したことはない。高鐵雲林で降り、タクシーで数分の崇徳高中で降り、上り下り合わせて3本ほど撮影する。ディーゼル機関車は轟音を立ててゆっくり走り、何十両もサトウキビを満載した貨車が行く様はナローゲージとは思えない存在感がある。サトウキビを満載して虎尾の町に向かう上り列車がやはり迫力がある。時間があれば午前中のうちに旧虎尾駅のレンタサイクルを借りて動くのがよいのだが、この日は撮りだしたのが午後だったのでそうはいかない。やはり虎尾はゆったりと一日動けるスケジュールを取っておいた方がよかった。何時まで虎尾のサトウキビ畑の枯れた景色の中をゆくナローゲージの貨物を見ることが出来るか解らないが、この極めてフォトジェニックな貨物列車は、何度見ても飽きないのでまた再訪したいと思っている。ただ今回は、そそくさと町の中心部から、バスで斗南の駅まで行き、斗南から電車を乗り継ぎ彰化まで出る。

斗六駅での荷物客車、莒光554次

彰化からはEMU300型の自強140次に乗る。今回は、EMU300型に乗ることも目的の一つだったので、虎尾での滞在時間がしわ寄せを受けたという訳だ。EMU300型は、自強号(特急)用のイタリアソシミ車製の釣り掛け式電車で、登場は1987年なので製造後30年は経過している。この30年をもう、と捉えるかまだまだと捉えるかで変わってくるが、関東ならJR東日本の251系や西武鉄道のニューレッドアローのように平成の初め頃の特急車両は引退しだしているが、関西では昭和の時代に製造された車両はまだまだ活躍している。もちろん例外はあるが。台湾鉄路管理局では、日本の車両メーカーに新しい特急電車をまとまった数を発注しているのでEMU300も引退が近いようである。そういう訳で乗って、撮っておこうと思ったのだ。釣り掛け式電車といっても今日の特急用車両なのでJRや大手私鉄の有料特急とも遜色はない。空調付き固定窓、ゆったりとしたリクライニングシートにデッキもあり、通路はじゅうたん敷き、空気ばね台車で乗り心地もよい。正確なシートピッチは判らないが、国鉄時代のグリーン車、サロ185などとはほぼ同等の車内設備と思われる。肝心の釣り掛け式モーターの音も固定窓のせいか、割と静かである。乗った6号車も、空調の音が騒がしかったが、モーター音はかすかにしか聞こえず釣り掛けモーターの音は残念ながら楽しめなかった。

EMU300型 彰化駅にて自強140次

 

EMU300型電車の車内

自強140次は金曜日のみの運行で、18時7分に彰化を発車し、終点の七堵には21時32分に着く。発車時から既に暗くなっており、景色は期待できない。この間、、彰化で買った台鐵弁当を食べ、まどろんでいるうちに海線の区間を抜け、新竹、桃園と台北と近づくにつれ、車内もかなり混雑してきた。台鐵弁当は60元の排骨弁当で、骨付きの豚肉、からし菜、タケノコをごはんの上にぶっかけ、味付きのゆで卵も載っている。台湾では定番の弁当で少し脂っこいがなかなかいける。
七堵で21時43分発の莒光554次を撮る。この列車は高雄より更に南方、車両基地のある潮州を13時34分に発車し、海線を経由し、台北に21時5分、終点の花蓮には日が変わって0時45分に着く客車急行で、荷物客車を3両繋げているので被写体として見栄えのする列車である。いつも、いかに効率よく列車を撮影するか狙いに慌ただしく動くことが多いが、このように半日以上時間をかけてゆっくり走る客車急行に今のうちに乗っておきたいものである。台湾は、もうすぐ知本―枋寮間の電化により、環島一周の電化が完成する。日本のように電車の特急と通勤車だけとなり、定期列車の客車急行は消滅の道を辿るのではないかと思われる。深い屋根、手動扉、深く倒れるリクライニングシート、味わい深い台湾の客車急行は、今のうちにもっと乗って記録しておきたいと思っている。この日は、基隆の駅近の宿で寝るだけである。

莒光554次 七堵駅 電気機関車E205の次位に荷物客車3両が

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まだまだ続くよ、台湾鉄路への遠征その1」への4件のフィードバック

  1. 虎尾いいですね。私も毎年サトウキビ列車が走る時期には訪台していたのですが、昨年と今年は行かずじまいでした。この時代トラック輸送で代替できそうなのに、なくなると言いながら続いているのは何か理由があるのでしょうか。他にも客車列車等見どころ満載の台湾鉄道、早くこの騒ぎが終息して出かけられるのを待っています。続編楽しみです。来年1月には虎尾訪問したいので是非ご一緒しましょう。

  2. 大津の86様
    コメント有難うございます。仕事が変わって、前のように成人の日三連休絡みは難しくなりましたが、サトウキビの走る期間は長いので、何とか隙を見つけた行きたいと思っていますので宜しくお願いします。こういう楽しい調整が一日も早く出来るよう願うばかりです。

  3. ブギウギ様
    台湾の1月はよろしいですね。羨ましき限りです。私も吊り掛け特急に乗車してうるさいモーター音を楽しもうと思いモハ80あたりを期待したのですが、車体構造なのか全く吊り掛け音が聞こえずカルダン車と変わらない感じでした。外から見た走行音も静かであったような気がします。これは何かモーター自身に細工されているのかなとも思います。

  4. 準特急様
    コメント有難うございます。以前になりますが、大里や亀山の撮影地でご一緒させて頂きいたのは懐かしい思い出です。台湾の釣り掛け特急は、全ての電動車が唸る訳でなく、唸る車両が特定出来ないのが謎です。どなたかご教示頂ければ。

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