市電が走った街 京都を歩く 伏見・稲荷線⑭

城南宮道

“道”と言っても、その城南宮へは停留場から1キロほど西にありました。停留場名には、施設名などにプラスして、「~前」「~口」「~通」「~道」と接尾語を付すことが多くあります。「前」「口」は、他都市でもよく見られますが、「通」「道」は、かなり京都的と言えます。「道」は、この城南宮道のように、「前」よりも少し歩く場合に適用されるようです。その違いを端的に理解できるのは、「金閣寺“前”」と「銀閣寺“道”」です。さて、高瀬川沿いを走っていた、古来の竹田街道は、この城南宮道で新しい竹田街道と合流しますが、その地点には「城南宮参詣道」の大きな石碑があります。そして、まもなく近鉄京都線をくぐります。近鉄線の前身は奈良電鉄、さらにさかのぼると、敷設当時は現在のJR奈良線のルーツとなる奈良鉄道でした。京電が敷設された当時は平面で交差しており、開業直後には、電車と奈良鉄道の機関車が衝突して多数の死傷者を出したと言います。砂塵を巻き上げ、少し車体を傾けながら、北上を続ける9号系統693号。市電の向こうに伏見信用金庫の広告塔が見えるが、それ以外に高い建築物は何もなかった。

 

城南宮道の電停の前には、酒蔵が建っていた。別の写真には「名誉冠」の大きなロゴがあった。「名誉冠」は、伏見の蔵元のひとつだが、今は別のところで醸造をしている。

 

 

 

 

 

城南宮道の北行き停留場、と言っても消えかかった白線で区切られているだけ。

「城南宮参詣道」の大きな石碑。▲▲その石碑のから斜めの道があって、これが古来の竹田街道、開業時の京電もここを走っていた。

MEMO  開業時の京電の写真

京電が明治28年に開業した頃の写真については、ほんど残っていない。京電の“公式写真”は数点あるが、例の石井伯爵の写真とも違う、市民が撮ったと思われる唯一の写真が一点だけある。京都府立総合資料館にあったアルバムの原版を、大西友三郎さんか複写されており、「チンチン電車物語」でも公開されて知られるようになった。車両は写っていないが、当時の状況が読み取れる貴重な写真だ。「城南宮道辺ナリ」とあり、ちょうど上記の右上のカラーの旧竹田街道付近ではないかと推測される。泥だらけの道の片側に、単線が敷設されている。轍の跡があり、荷車や牛馬車がまだ輸送の手段だったことも分かる。竹田街道に車石が敷かれた理由もこれでよく分かる。左手に男二人、右手には着物の女性も見え、傘を差しているところから夏の撮影のようでもある。

 

 市電が走った街 京都を歩く 伏見・稲荷線⑭」への3件のフィードバック

  1. 一人コメント、続けます。京電開業当時の写真ですが、大西さんが毎日新聞「チンチン電車物語」に載せられた記事を抜粋します。キャプションには「棒鼻の北方」とあり、やはりカラー写真の当たりのようです。

  2. 城南宮道前の「名誉冠」を見て、ふと随分昔のことを思い出しました。1964年(昭和39年)の2月頃のことだったと思います。
    その頃の私の実家は京都市内(四条堀川西入ル)で乾物屋を営んでいましたが酒類も扱っていて「名誉冠」の特販店をやってましたので、新酒が出来上がる頃に蔵元から試飲会のお招きがありました。
    そこで、その当時のBOX的な存在であった長徳寺(西洞院中立売下ル)の下宿人であった名古屋の和尚(実家がかなり大きいお寺の長男の彼が何故キリスト教となじみ深い同志社に来たのかは未だに知らない)を誘って行きました。
    新酒は極めて香り高く美味で「美味い!美味い!」と樽から滴るのをひしゃくでうけてゴクゴクと何杯も味わいました。
    (市販されている日本酒は出荷前に加水しているのでアルコール15度程度ですが、樽から搾りたての原酒は25度くらいあった)
    さて、「美味かったなぁ~!」と城南宮道から⑨京都駅行に乗ったのは覚えていますが、そのうちに二人とも酔いが回って爆睡してしまい、終点の京都駅で車掌に起されたもののまだ足をとられてフラフラでまともに歩けず、ベンチでもう一度しばらく寝てました。
    それからどうして帰ったのかは記憶にありません。

    • 無印不良品さま
      城南宮道の思い出、ありがとうございます。この写真は、先輩のMさんからお借りしたもので、私自身、市電沿いにこんな立派な酒蔵があったとは知りませんでした。私は、搾りたての新酒の旨さを知らないまま、齢を重ねてきましたが、ホント旨そうですね。伏見線では、丹波橋の項でも記しましたが、電車に乗っていると、清酒の匂いがプーンと車内にも漂ってきました。酒と市電、伏見線ならではですね。

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