黒部渓谷展望ツアーとは宇奈月駅から黒部渓谷鉄道に乗車して終点の欅平駅まで行き、ここから関電の専用列車に乗り換えます。ここから普段は一般の観光客の立ち入る事のできない関西電力施設内の「専用列車」や「トンネル」、「竪坑エレベーター(高低差200m)」の体験と、周辺の白馬鑓ヶ岳、唐松岳などの北アルプスの山々が間近に展望できるといった特別なツアーなのです。
当日にきっぷを買って参加できるものではなく、事前の申し込み支払いが必要です。何といってもまだ通常解放されていない黒四ダムまでつながっている専用軌道に途中までですが乗車出来る事は、鉄ちゃんにとっては大きな魅力です。
毎年初夏から晩秋までの金~月曜日の1日4回、今年は6月3日~11月14日に開催される予定で、各便53名の参加募集をしています。今回は6月4日のクローバー会の富山ツアーに参加しますので、前乗りして初日の3日の参加を申し込みました。
しかし、今日は4日なのに3日と日にちを1日間違ってしまうという大失態を演じてしまいました。自宅にいる時は毎朝、新聞・TVを見ているので今日は何日なのかは分りますが、旅に出た時には接点がなくなります。このため、毎回車で旅に出かける時は小型TVを積み込み、朝食時に朝のニュースを見て確認はしていたのですが、今回はなぜか地デジ受信に必要不可欠なB-CASカードが小型TVから抜け落ちていました。Blu-rayも見ることができる小型TVなので普段は映画を見る時ぐらいにしか使っていませんので確認していません。旅に出てから気づきました。大失態を発生させる重なった要因がありました。
申し込んだのはツアー初日の6月3日の第1便で、集合は7時でした。今日4日も同時刻まで行けば参加要請ができるだろうと早朝6時には黒部渓谷鉄道の宇奈月駅へ着き、2階の受付カウンターへと参りました。
【 再申し込みの嘆願 】
係員の方が来られてからすぐに大失態の事情を申し上げ、今日参加できないものかと嘆願です。係員の方は「昨日集合時刻にお見えにならなかったので何度も携帯電話に連絡を入れましたが応答はありませんでした。仕方がないので無連絡キャンセルと判断しました。今日の参加の申し入れを受け入れられるかはまだ責任者が出社していないので判断できません。8時前後になると思いますが、お待ちできますか?」との返答です。
申し込み要綱には「お申し込み後、お客様のご都合で取消しになる場合、旅行代金に対して下記取消料を申し受けます。」と、記載されていました。
私の場合、規定では100%の取消料ですので返金はありません。新たに参加料は支払いますので何とか参加させて欲しいのが私の嘆願です。待つことにしました。
8時過ぎに責任者の方が来られました。私の責任による大失態で反省しています。黒部渓谷展望ツアーはとても楽しみにしていました。勝手な話ですがもし空席があれば、是非とも参加させていただきたい。申し込み要綱も承知していますが、無理を承知でお願いしますと嘆願しますと、「事情は分りました。ツアーを目的に黒部へ来られたことは理解できましたが、このツアーは関電ではなく別の企画・主催会社があります。私の判断だけではできない事です。また現在、そちらの責任者とは連絡が取れませんので最終結論は出せません。いつ連絡が取れるどうかは不明ですがお待ちできますか?」と、参加できるかどうかは分りませんが、一応嘆願は受けてもらえるご厚意をいただきました。「嘆願を受け入れていただきましてありがとうございました。」と、お礼を申し上げて、参加は無理になっても待たせていただきますと2階の受付カウンターホールで待つことにしました。
今日のクローバー会富山ツアーの集合時間は電鉄富山駅12時で、京阪電車から来たダブルデッカーに皆さんと乗車です。リーダーの”どですかでん”さんに電話を入れて事情をお話しして宿泊するホテルからの合流に変更をお願いしました。
▲ 2階の待合ロビーには黒部渓谷鉄道の生い立ちから現在までの歴史を大型ディスプレイを使って映像による紹介、またパネル展示されています。
電鉄黒部~宇奈月温泉は、1923年(大正12年)11月21日に黒部鉄道として全線開業しています。当初から1,067㎜、DC600Vの電化路線で中型のポール給電の4軸ボギー車が単車で走っていました。電鉄富山と乗換ではありましたがレールがつながったのは1936年(昭和11年)10月1日、直通運転が始まったのは富山地方鉄道に統合、DC1500Vに昇圧されてからの1943年(昭和18年)11月11日からだそうです。
▲ 現在運用されています旅客用のトロッコ車両たちです。初めての乗車を前にして普通はワクワク気分にはなれるのでしょうが、今回は願うのみで静かに待ちました。
【 吉報 】
朝から待つこと約3時間、9時過ぎに責任者の方から電話連絡が来ました。「企画主催者の方と連絡がつきました。ご承知の通り本来、受け入れがたい事ではありますが、ご高齢の方が黒部渓谷展望ツアーを楽しみに来られておられます。既に数時間もお待ちになっておられるのを断るのは忍びない。今日最終の第4便になりますが特別に参加を受け入れます。ただ前日の申し込みはすでにキャンセル扱いとなっています。改めて宇奈月~欅平のトロッコの乗車券は購入していただかないといけません。旅行保険も加入できませんが、いかがでしょうか?」との嬉しい連絡です。
即座にありがとうございますと、OKを出して受付カウンターに行きました。
▲ 受付カウンターに行くと他の係員の皆さんから「良かったですね。こんな事は異例ですよ。」と一緒に参加できることを喜んでいただきました。ありがとうございました。
参加の注意事項を説明いただき、参加賞を受け取った後、きっぷ売り場で往路のきっぷを購入しました。
一人旅では数々の失敗を過去もおかしていますが、今回も人のご厚意を受けさせていただき窮地を救っていただきました。ありがとうございました。
しかし、年を追うごとに失敗が多くなってきました。日頃、のんべんだらりと生活していますので緊張感が足らない事が要因の1つなのでしょうね。勤務時代には考えられない事ばかりでもありました。
▲ トロッコ列車の時刻表です。終点の欅平駅には留置き設備がないので宇奈月からの始発の折り返しが朝の始発列車になっています。
上記の他に7往復の関電貸切列車が運行されています。乗車中の交換でも見ましたが頻繁に貨物混合列車が運行されていました。
鉄ちゃんとしてはこちらの編成に乗りたかったですね。
宇奈月発11:48には十分な時間があります。ほっとしたところで、ようやく周辺を散策することにしました。
▲ 10:50 宇奈月駅を発車していくトロッコ列車です。EDR形電気機関車重連に牽引されて2000形リラックス客車(窓付)7両+1000形オープン普通車7両の長大14両編成がトンネルに入っていきます。列車編成は他にも若干ですが違いがあります。
▲ 宇奈月駅からは旧路線を利用してのやまびこ遊歩道が設置されています。上流の「とちの湯」まで続いていますので途中まで歩いてみることにしました。
▲ 旧線橋梁を渡りますとすぐにかつてトロッコ列車が走っていたトンネルがありました。入口付近はコンクリートで頑丈に造られていますが中央部は素掘りにモルタル吹き付けの状態です。雪崩や落石、土砂崩れから守る洞門や覆道(ふくどう)には明かり窓が設置されいます。
また、並行するように人が通れる程度の幅の細いトンネルが掘削されています。真冬の積雪時の点検用に使用されていたそうで、全長20.1㌔の本線沿いにも同じように設置されているそうです。鉄道が走れなくなった時期にはこのトンネルを歩くのみが唯一の交通手段だそうです。
▲ 11:13 明かり窓から見た赤い新山彦鉄橋を渡ってくるトロッコ列車です。
▲ 11:25 新旧山彦橋が並びます。ボチボチ乗車する列車が発車する時刻が近づきましたので駅へと引き返します。
▲ 11:42 ホームに行くとまだ乗車する珍しく単機は、1991年製造のEDM32号機。
殆どの電気機関車には台湾の阿里山森林鐡路との姉妹提携(2013年)を記念してヘッドマークがついています。
▲ ナチ3形貨車に積み込まれた四輪駆動車。宇奈月から道路が開通していない欅平まで運ばれるそうで黒部渓谷沿いの輸送機関はこの鉄路だけが唯一のたよりと思い知らされます。
▲ 11:45 欅平からの折り返し列車が到着しました。多くの乗客が下りてからの乗車です。
▲ ボハ2500形、ボハ3100形のガラス窓が入った転換式クロスシートのリラックス客車(窓付)と、私が乗車する窓なしの普通車ボハ・ボハフ1000形は1列3人用の座席が9列並びます。いずれもアルナ車両製です。
▲ 側線にEDM30+EDM22重連の関電事業用編成が来ました。大きな車のタイヤと何やら袋に入った荷物をト230+299+239の3両に積んでいます。
▲ 黒部渓谷鉄道公式HPから紹介されています在籍車両です。黒部川には黒四はじめ5つのダムと12の発電所が稼働しています。観光を含めて、これらのメンテナンスのためにも必要な車両たちです。
▲ これが設置されていますダムと発電所です。発電所は関西電力の総出力890,700kwと北陸電力33,200kwの合計923,900kwがあるそうですが、現在停止中の高浜原発の定格発電出力は1基あたり87.0万kw で他の3基と合わせると339.2万kwになるそうです。最新の原発では1基138kwもあるそうです。
黒部川全部でようやく原発1基分とはお聞きして唖然としました。我々の生活に電力は欠かすことができないエネルギーです。東北の大震災で存在そのものが問題視されている原発ですが、発電量からだけを見ると無視できないようにも一瞬思えていました。 Part7へ続く
ぶんしゅう様 参加出来て良かったですね。例のヒゲの威力ではないでしょか。参加のレポートを楽しみにしております。
どですかでん様、コメントをいただきまして、ありがとうございます。
ヒゲの威力もあったでしょうが、かなりしょげていましたので哀れみで断れなかったのではと思ったりします。「折角遠くから黒部に来ていただいた方を自らのミスとはいえお断りしてそのまま帰らす事は出来ない。何とかできるものなら答えたい。これからも黒部に来ていただきたい。」と申されての対応にはおもてなし以上の気持ちを受け取りました。
ご担当者の方々のご厚意一杯の対応には頭の下がる思いでした。感謝、感謝です。また富山が好きになりました。