韓国の観光列車

KTX 釜山駅 2019.4.28

昨今、鉄道に乗ること自体を楽しむ乗り鉄は、鉄道番組の隆盛を見るまでもなく、すっかりメジャーになりました。その頂点は、JR九州のななつ星でありJR西日本のトワイライト瑞風、JR東日本の四季島でありましょう。1泊、2泊するだけで何十万もかかるこれらの超高級列車は別格としても、JR九州の「指宿のたまて箱」や「いさぶろう、しんぺい」等九州のD&S列車、JR西日本の「○○のはなし」、「花嫁のれん」などキハ47系を改造種車にしたジョイフルトレインなら乗られた方も多いのではないでしょうか。こうした潮流はお隣の韓国でもあり、デジタル青信号でも、かつて先輩がクルーズトレイン「ヘラン」の乗車記を投稿されています。
「ヘラン」は客車の改造ですが、観光地を個室寝台の豪華列車で巡り、各地のご馳走をいただくクルーズトレインとしては、日本に先駆けています。また、他にも客車改造を中心に「Gトレイン」、「Sトレイン」などの観光列車も定期的に運行されています。韓国旅行でこうした観光列車の存在を知り、乗ってみたいと思いつつ、鉄チャン旅行として訪韓していなかったので、乗る隙、機会はなかったのですが、令和の時代を迎える十連休の休み、LCCも含め航空運賃が押しなべて暴騰する中、なんと関釜フェリーが、ゴールデンウィーク10連休を楽しむ大応援キャンペーンとして運賃を3割引するというではありませんか。2等なら片道9千円のところ6300円(税、サーチャージ別)です。もちろん大阪からの新幹線代はかかりますが、これもJR西日本の50歳以上限定のおとなびパスを使えば、費用を抑えることができます。これは行かない手はありません。平成から令和に変わる4月28日から5月1日までの間を韓国で迎えることにしました。
関釜フェリーは、正確には、日本の会社である関釜フェリーの日本籍「はまゆう」と韓国の会社の釜関フェリーの韓国籍「星希」の共同運航となっています。4月27日は、星希でした。日本と韓国の定期船ですので、クルーは日本語、韓国語ともよく通じるのですが、星希は、船内のコンビニ、レストランなど一言で言えば、乗船した時から韓国ワールドです。日本円と韓国ウォンが同じレートで使えるのもお得感があります。韓国料理のバイキング夕食も800円にしてまずまずでした。20年以上前に乗ったときは、日本海に出てから、かなり揺れた記憶があります。今回は10人部屋の2等船室は満員でしたが、揺れもなく快適に寝ることができました。
4月28日の日曜日、予定通り8時に釜山港への上陸が始まりました。釜山港は、コレイル(韓国鉄道公社)釜山駅のちょうど裏にあり、駅まで歩いても10分~15分で移動することができました。釜山からはいよいよ鉄道三昧です。外国人には、コレイル乗り放題のコレイルパスがあり、138000ウォン(約13800円)の3日連続券をウェブサイトから購入しておきました。いろいろなパターンがあり、詳しくはコレイルのウェブサイトをご覧いただくとして、例えば、使用開始日から10日間内に任意の2日間を選択できる2日券は121000ウォン。連続5日券は210000ウォンとなっています。KTX(新幹線)やGトレイン、Sトレインなどのジョイフルトレインも含め、全ての優等列車に乗ることができます。但し、KTXなど一部の列車に設定されている特室(グリーン車に相当)に乗る場合は、利用区間の50%追加料金必要と案内されています。面倒なのは、1日あたりの座席指定は2つの列車までしかできないことで、3つめ以降の列車には乗れますが、立席乗車、つまり空いていれば着席できる自由席利用の条件付きになります。

釜山駅 2008.8 (今もこの建物ですが、工事中なので古い写真ですみません)

釜山駅 1989.8 (30年前はこんな建物でした)

先ず、釜山からソウルまで417.4キロの距離を10時ちょうどのKTXで向かいます。ソウル着は12時31分で、料金は59800ウォン。KTXは、フランスのTGV技術で導入された最高速度305キロの高速鉄道で、在来線が標準軌間であるため、フランス同様に新幹線、在来線直通が強みです。KTXは、20両編成ですが、前後はプッシュプルの交流25000Vの電気機関車で、中間の車両は、連接車体になっています。20両とはいっても、先頭車は22mですが、中間車の長さも18.7mなので、日本の新幹線16両404mよりも編成長では短くなっています。車体も絞っており、日本の在来線特急車に比べても、狭いというか圧迫感があり、リクライニングシートですが、移動時間が短いのでいいやという割り切りのような感じを受けました。ソウル到着後、駅構内のレストランでとんかつ定食をささっと食べてから撮影に向かいます。
ソウルの次のKTX発着駅である龍山(ヨンサン)から少し南下した電鉄線(地下鉄)の駅、新吉(シンギル)のSカーブで上り下りの長距離列車を狙います。ソウルと龍山を着発する優等列車が全部通りますので、上下多くの列車が行きかいます。ちなみに龍山は、東京がソウルとすれば品川に相当するような位置づけに思えました。

KTX (20両全部入れるのは難しいです) 新吉 2019.4.28

ムグンファ号 新吉 2019.4.28 電機は8200型

貨物もよく走ります。 新吉 2019.4.28 7300型ディーゼル機関車 3000馬力とか

KTX山川 新吉 2019.4.28 ソウルはもうすぐ

ヌリロ号 新吉 2019.4.28 これは日立製です

ここのSカーブは、20両のKTXを全編成入れるのは難しく、6両のITXセマウルでは短すぎ、10~12両くらいの列車がちょうどいいのですが、これがなかなかありません。フランスから技術導入したKTX(ロテム社で製造した同じ形式も入れて)の後、国産したKTX山川(サンチョン)は8両か8両×2編成の16両での運行です。KTX山川は、KTXが京急2000型のような集団見合い方式のシートで、回転ができず、進行方向逆向けの不評を料金値下げで対処しており、またシートピッチ940ミリを980ミリに拡大した居住性などの改良バージョンです。山川というのは、川魚のヤマメの形からきているそうですが、個人的にはフランス由来のKTXの方がシャープなデザインに思えます。
赤と黒の塗りわけの電車は、ITXセマウル。セマウル号は先頭と最後尾がディーゼル動車で、かつて韓国の鉄道を代表する優等列車でした。私自身、はじめて渡韓した1988年、釜山からソウルまで特室の乗りました。レッグレストや応接間のソファについているようなオットマン(足載せ)もあって、どんなに足を伸ばしても前の席にかすりもしない程のシートピッチに感心した記憶があります。この時は、ソウルプラザホテル運営の食堂車でご飯を食べた記憶がありますが、残念ながら、今では食堂車の運行はなくなっています。このディーゼルのセマウルの後継が、210000系電車のITXセマウルで、KTXが走らない在来線区間の特急としての役割を担っています。白地に青のラインの入った4両編成の200000系電車がヌリロ号で、これも特急としての位置づけのようで、これは日立製となっています。機関車牽引の客車列車は、ディーゼルも電機も両方ありますが、これがムグンファ号で、急行に相当します。ソウルから釜山までですとKTXなら速い列車で約2時間15分くらい。ITXセマウル号ならだいたい4時間半で遅い分かKTXの59800ウォンより少し安い42600ウォン。但し座席はこちらの方がKTXよりゆったりしています。ムグンファ号ならだいたい5時間半で28600ウォンです。ムグンファ号の下にかつては、トンイル号(準急?)とビトルギ号(鈍行)がありましたが、今は廃止されています。

ITXセマウル 水原 2019.4.28

Gトレイン 龍山 2019.4.28

Gトレイン一般車の車内 2019.4.28

ひとしきり新吉で撮影した後、電鉄線で約1時間かけて水原(スウォン)まで出ます。水原市は、人口120万人を擁する京畿道の中核都市です。人口120万人というと、政令指定都市のさいたま市や広島市と近いところなのでかなりの規模です。世界遺産の漢城や水原カルビが有名だそうですが、今回、水原まで来たのは、龍山まで約40分しかありませんが、観光列車Gトレインの体験乗車をするためです。Gトレインは、西海金光列車といい、確かに金色に塗られたディーゼル機関車の前には、WESTGOLDTRAINと描かれています。龍山から益山(イクサン)までの247.8キロを3時間9分かけて走り、料金は28600ウォンとなっています。コレイルのウェブサイトを見ると、普通車ではなく、いきなり特室、ファーストクラス設定になっていましたが、乗ってみると照明や内外装は特別な列車の演出はありますが、座席は至って普通の特急車両でした。今回、時間がなかったので、よくわからない部分もありましたが、オンドル部屋や足湯のコーナー、ビュッフェ室のような車もありました。ようなというのは、乗り込んだのが、終着に近かったのでもう営業はしていないようでした。続きは、韓国の観光列車(続)をご覧ください。

韓国の観光列車」への2件のフィードバック

  1. ブギウギ様
    はじめて渡韓した1988年の時というのは青信号57号に紀行を書かれた時のことですね。本棚から引っ張り出して読み返してみました。
    以前は韓国には鉄ちゃんはいないよと聞いていたのですが、最近は増えているのでしょうか。韓国には2000年ころから仕事でよく出かけていましたが、退職後は一度も行ったことがありません。
    在来線のセマウルは座席の間隔が広くさすが標準軌は違うと思っていましたが、新幹線は狭いうえに集団見合いタイプの配列でがっかりしたのを覚えています。不評だった席の配列はまだ変わっていないのですね。

    • 大津の86さま
      青信号57号もご覧いただいたとのこと、ありがとうございます。30年経つとはいえ、この前のことのようで、時の流れの速さを感じます。KTXは速くて便利ですが、座席も狭く窮屈感があります。しかし、他の列車には個性とか豊かさを感じる部分もありますので、また機会を見て渡韓してみたいと思っています。

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