昭和の電車 改訂版(173)ー京王電鉄6000系ー

準特急さんのレポートです。
京王(帝都)電鉄6000系5扉車

昭和の電車 改訂版(173)ー京王電鉄6000系ー」への2件のフィードバック

  1. 京王6000系5扉車について、導入に携わった者としてコメントさせていただきたく思います。
    この5扉車は、「トップダウンで作れ」とか「思いつき」とかいう噂話も出ておりますが、これは誤りです。
    鉄道事業部門の課長を中心とした検討結果を「ボトムアップ」で導入提言し生まれたものです。
    当時、京王線の輸送力増強は喫禁の課題であり、そのためのネックは明大前でした。(千歳烏山についても、優等列車停車時間は明大前並みかそれ以上でしたが、普通列車の停車時間が30秒程度と短くネックとはなりませんでした。また、新宿は線路配線上、1時間25本が限界ではありました。注;何分にも30年前のことですので、数字に若干の誤差があるかもしれません)

    明大前については、ホーム中央部の拡幅による降車のお客様の分散と乗車のお客様との交錯防止、乗り換え階段の下高井戸方への増設による多少空いている後部車両への乗車促進、閉塞割り細分化により場内待ちの場合のスムーズな列車起動と駅進入などの方策を講じてきましたが、それでも、優等列車の停車時間は平均57秒、普通列車は45秒も要していました。うち、優等列車における停車からお客様降車完了までの時間は38秒もかかっていました。(停車時間とは、車掌のドア開扉操作から列車起動までの時間です)
    一方、先行列車出発から続行列車到着までは運転士により個人差があり、最短で65秒平均70秒という実測値でした。これでは、ダイヤ上1時間30列車運転が出来ず、輸送量増強どころか、慢性的な遅延発生というのが常でした。
    そこで、鉄道事業部門として、輸送力増強へのネックである停車時間短縮という課題に対し5扉車導入をトップに提言した次第です。10両編成全てを5扉車という考えもありましたが、そうすると定員に対し座席数が規則に抵触するため、2両目と3両目の間に運転台というデッドスペースが生まれるものの、、中間5両だけを5扉にしました。(6扉という案もありました)
    結果、停車から降車完了までの時間が4扉車の38秒から33秒に5秒短縮され、普通列車も含め全列車5秒短縮されたと仮定すれば(普通列車のデータはありませんが)、1時間当たり1列車の増発或いは慢性的な遅延防止という効果が期待できることを確認しました。
    5扉車導入は、運転から運用を組みにくい等反対意見が出されましたが、代案が示されず、部門として導入に踏み切った次第です。
    しかしながら、その後の社会情勢の変化により、輸送力増強の必然性が薄れてきたため、4扉への改造等が行われたものです。
    そのために、後日になって厄介者というレッテルを貼られてしまたのではないでしょうか。

    なお、出発時の加速は車両性能そのもので個人差は無いのですが、停車に際しては制動扱いの個人差があるため、定位置停止装置の導入も考えましたが、トップへの提言では外しました。
    また、各扉ごとに係員を張り付け、お客様へのお声かけ等を行うことを実践し、さらに停車時間が短縮されることの確認も行いました。
    とりとめのない記載となりましたが、6000系5扉車導入当時の記憶を頼りに綴った次第です。

    • クモハ73106東ウラ様
      貴重なお話をお聞かせ頂き、ありがとうございます。
      開発に携わった方のお話が直接拝聴できたのは感激です。大変な熟慮の結果製作したものの、状況の変化などで増備がなかったり、配置転換されたり、甚だしくは改造されたりした車両でも作る方々はあらゆる状況を考えて対応できるように準備しますが、いざできてみると予想に反して・・とは、私も何度も経験したことがあり、いまでも夢に出てくることがあります。
      ありがとうございました。

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