岳南電車の現況

クモハ7003走行-2
吉原~ジャトコ前間を走行するモハ7003

4月9日「青春18」の消化を兼ねて、昨年3月16日貨物営業廃止以降、話題性が薄くなった「岳南鉄道」改め「岳南電車」を訪れた。

今年4月1日「岳南鉄道」の鉄道部門が分社して「岳南電車」が設立され、親会社の「岳南鉄道」は、不動産事業、ゴルフ場事業、物品販売事業を行い、鉄道事業は子会社の岳南電車が行うことになった。背景には貨物営業廃止による減収により経営環境の悪化があげられる。
沿線自治体の富士市は、2014年度までの公的支援を表明しているが、以降のついては不透明である。

東京駅9時15分発の快速熱海行に乗車、熱海で静岡行の待合せが24分あり、駅前に保存されている「へっつい」を見に行くと以前と向きが変わっていた。
熱海へっつい
静岡行は211系3連と313系2連の5両編成であった。東海道本線の静岡地区のローカルはオールロングシートで211系にはトイレがなく長距離を利用する場合は注意が必要である。
211系

吉原での岳南電車との接続は6分であった。平日用の1日乗車券を購入、値段は700円で岳南江尾までの往復運賃と同額である。休日は400円で更に安い。停車中のモハ7003に乗ると乗客は20人程で、平日のためビジネスマンの姿も結構あった。車庫のある岳南富士岡でED501が見えたので降りて撮影した。パンタが2挺とも上がっており通電されていた。後にはワム380128、ワム380411、ED403、ED291の順に連結されていた。

隣にはデハ7001がパンタを上げて停車、車庫の中ではED403が検査中でこちらもパンタが上がっていた。次の電車(モハ7002)で岳南江尾に向かったが5名程の乗客が降りると一瞬車内はゼロになり私一人の貸切状態であった。次の須津、神谷の駅周辺にはそこそこ住宅が立ち並んでいるが電車の利用には繋がっていないのであろう。新幹線を潜ると直ぐ岳南江尾に到着した。ホームの反対側にはラッシュ時に使用されるモハ8001+クハ8101が停まっていた。帰りはジャトコ前で降りて富士山をバックに撮影後帰宅した。

【現 況】
〔電 車〕

モハ7000形3両、モハ8000形1両、クハ8100形1両の計5両在籍する。
モハ7000形(7001~7003)
元京王井の頭線の3000系の中間車デハ3100形を京王重機整備で両運転台付に改造した。旧車号、改造年月は次の通りである。
京王デハ3103→モハ7001(平成8年12月)、デハ3101→モハ7002(平成9年9月)、デハ3102→モハ7003(平成9年9月)
モハ7002とモハ7003は総括制御が可能であるが、モハ7001は単行運転しかできない。


モハ7001
クモハ7001
クモハ7001-2

モハ7003
クモハ7003

モハ8000形(8001)、クハ8100形(8101)
予備車で残っていたモハ5001(元東急デハ5027)+クハ5101(同サハ5361)を置換えるため、元京王井の頭線のデハ3000系を京王重機整備で改造した。
旧車号、改造年月は次の通りである。
京王デハ3110→モハ8001(平成14年11月)、デハ3060→クハ8101(同)
朝夕のラッシュ時に使用され、それ以外は通常岳南江尾駅に留置されている。
クモハ8001
クハ8101

電気機関車
貨物営業廃止後もED291、ED402、ED403、ED501の4両在籍し、ED402、ED501は可動状態である。車歴等は24年6月30日【21489】「岳南鉄道の機関車」を参照いただきたい。

ED501
ED501

ED402
ED402

相変わらず休車中のED291
ED291

〔貨 車〕
JR貨物より購入したワム380128とワム380411が存在するが、車籍の有無は不明である。
ワム380811

【その他】
吉原でのJRとの接続の関係で等間隔ではないがほぼ1時間に2本運行されている。全線9.2㎞の間に中間駅は8駅(ジャトコ前、吉原本町、本吉原、岳南原田、比奈、岳南富士岡、須津、神谷)あるが、ジャトコ前、吉原本町、神谷の各駅が棒線の他はすべて交換可能である。駅間距離は吉原~ジャトコ前間が2.3㎞と最長で、最短は吉原本町~本吉原間0.3㎞である。またジャトコ前~吉原本町間も0.4㎞と短い。他は1㎞前後である。

吉原に停車中のモハ7003
吉原駅

ジャトコ前に進入するモハ7002
クモハ7002

ハングルの表記もある駅名板
ジャトコ

岳南富士岡駅
岳南富士岡駅

岳南江尾駅
岳南江尾駅

旧掲示板 平成16年8月20日【263】「岳南江尾駅が見えなくなった訳」の証明
岳南江尾駅2

平日用フリー切符
SCAN0005
SCAN0006

【過去の車両】
元東急車と小田急車は紹介済であるので、それ以前の在籍車両を紹介する。

モハ1100形(モハ1101~1103、1105、1106)
昭和34年から38年に木製車の鋼体化改造車として誕生した。日本車輌が地方私鉄向けに設計した「日車標準型」と呼ばれるスタイルである。
1101、1103、1106が日本車輌、1102、1105は汽車会社製で1105は外板をステンレス鋼としたセミステンレス車体であった。当時、地方私鉄のステンレス車は茨城交通ケハ601と共に珍しい存在であった。
制御器は当初HLであったが48年から49年に国鉄から譲り受けたCS5に交換した。1102は44年事故で廃車、他の車両は56年元東急5000系の入線に伴い廃車になったが、1101、1103、1106は近江鉄道で、ステンレス車の1105は大井川鉄道で再起した。

モハ1101/ (43-4-6) 吉原
前身は元伊那電鉄のモハ204で昭和18年8月1日鉄道省に買収された。28年1月岳南富士岡~岳南江尾延伸開業時に国鉄より譲受け、モハ201に改番した。34年鋼体化改造された。
モハ1101

モハ1102/ (43-4-6) 吉原
前身は元富士山麓電鉄(→富士急行)モハ20→モハ601で更に前身がある。大正3年新橋工場でデロハ6139として新製、デハ6373を経て事業用車デヤ33100に改造、改番でモヤ4001に、24年富士山麓電鉄が譲受け東京電気車両で旅客車改造してモハ20に、改番でモハ601に、32年岳南鉄道が譲受けモハ601、35年鋼体化改造でモハ1102、44年事故により廃車となった。
モハ1102-2

モハ1103/ (44-8-30) 岳南富士岡
前身は駿豆鉄道(現伊豆箱根鉄道)のモハ101で昭和24年開業時に譲受けた。更に前身があり、大正3年汽車会社製の鉄道省モニ3012(←デニ6461←デハ6366)を10年3月に駿豆鉄道が譲受けた。岳南鉄道入線後も改番せずにモハ101を名乗っていたが36年鋼体化改造でモハ1103となった。
モハ1103

モハ1105/ (44-8-30) 岳南富士岡
前身は元西武鉄道モハ106で大正12年汽車会社製で池袋線の前身武蔵野鉄道の車両である。昭和24年開業時に譲受け、モハ106を名乗っていたが35年鋼体化改造でモハ1105となった。大井川鉄道に譲渡され平成7年廃車になったが、現在も千頭駅構内に留置されている。
モハ1105

〔参考/大井川鉄道モハ1105〕/ (60-12-30) 新金谷
大井川1105

ハ1106/画像無し
前身は駿豆鉄道のモハ38で、駿豆鉄道が戦災で廃車になった木製国電の台枠、台車等を流用して昭和26年6月自社で新製した木製車である。同年12月岳南鉄道が譲受け、同一車号で使用されていたが、38年鋼体化改造でモハ1106となった。
不要になった木製車体は比較的新しかったため窓配置の変更等再度改造され、中古台車と組み合わせてクハ2101として再起した。

クハ21/(43-4-6) 岳南江尾
平成23年7月9日【21925】「富山地方鉄道クハ91と一昔前の万葉線」で写真と共に解説済であるが再度解説する。
富山ライトレール←国鉄富山港線の前身、富岩鉄道セミボ21として新製された半鋼製車で昭和3年日本車輌で新製された。
富岩鉄道は大正12年3月設立、翌年7月富山口~岩瀬浜間7.3㎞を開業、昭和2年12月富山口~富山間0.7㎞を開業した。12年12月富山地方鉄道の母体となった富山電気鉄道の傘下に入り昭和16年12月に合併されたが、昭和18年6月国家要請により鉄道省に買収された。
買収後の26年8月クハに改造、28年3月廃車になったが、岳南鉄道に譲渡されクハ21として再起した。
クハ21

クハ1012/(43-4-6) 岳南江尾
前身は駿豆鉄道(現伊豆箱根鉄道)のモハ102で昭和24年開業時に譲受けた。更に前身があり、大正3年汽車会社製の鉄道省モニ3013(←デハ6366←デロハ6364)を10年3月に駿豆鉄道が譲受けた。岳南鉄道入線後モハ102を名乗っていたが28年に制御車化してクハ102に、その後の改番でクハ1012となった。
クハ1012-2クハ1012

クハ1210/ (43-4-6) 岳南江尾
 この車も経歴は複雑である。明治23年鉄道局新橋工場製のホユニ5067を昭和16年武蔵野鉄道が譲受けて制御車サハ122となった。その際鉄道省釧路工場で車体を新製した。西武鉄道成立後の改番でクハ1210となり、24年9月岳南鉄道に入線した。
クハ1210

クハ2101/ (43-4-6) 吉原
モハ1106の項で解説したが、モハ38の鋼体化改造で不要になった旧車体を再利用して作られた。原形は3扉であったが窓配置を変更して2扉化する等、かなり手を加えられたが木製車の故僅かな期間で廃車された。
クハ2101-2

参考までにモハ38とほぼ同形の伊豆箱根鉄道モハ37の写真を添付する。(42-9-1)大雄山
モハ37

【バ ス】
平成10年3月末日までバスの営業を行っていた。昭和55年7月末時点では貸切車6両、路線車19両が在籍していた。
この地域は富士急行から分社した富士急静岡バスのエリアで独自の路線も存在したが、経営効率化のため富士急静岡バスに移管した。貸切車は富士急行とほぼ同じ塗装であったが、路線車は塗装が異なるほか富士急行には存在しない独自のタイプの車両があり、独自性をアピールしているようであった。
撮影した車両の一部を紹介する。撮影場所はすべて本吉原の営業所である。

時刻表と路線図/ (61-8-10)
路線図 61-8-10

静2か1521/45年式日野RE120 (61-8-10)
静岡2か1521 61-8-10

静2か1591/45年式日産ディーゼル(以下日デと略す)4R95 (61-8-10)
静岡2か1591 61-8-10

静岡22き801/47年式日野RE120  (61-8-10)
静岡22き801-2

静岡22き1198/51年式日デU20H  (2-12-16)
My beautiful picture

沼津22く102/52年式日デU20L (2-12-16)
沼津22く102 2-12-16

沼津22く202/53年式日デUA30L
(2-12-16)
登録は路線車であるが貸切兼用車
My beautiful picture

沼津22く203/53年式日野RD300  (61-8-10)
顏だけ観光バスタイプである。方向幕の「吉原中央駅」は吉原本町から徒歩7分のバスの駅=バスターミナルで新富士駅経由富士駅行、西富士宮駅行、沼津駅行等のバスが発車する。
沼津22く203 61-8-10

沼津22く204/53年式日野RD300  (61-8-10)
沼津22く204 61-8-10

沼津22く1103/56年式日デK-RM80G  (2-12-16)
沼津22く1103 2-12-16

沼津22く1420/63年式日デP-RM81G  (2-12-16)
沼津22く1420 2-12-16

沼津22く 87/52年式日野RC320P  (61-8-10)
貸切車の塗装は富士急行とほぼ同じである。
沼津22く87 61-8-10

沼津22く360/54年式日野RⅤ530P  (2-12-16)
沼津22く360 2-12-16

沼津22く1553/63年式日デP-RA51T  (2-12-16)
沼津22く1553 2-12-16

【おわりに】
現況と過去の車両をバスも含めて紹介したが、今回の訪問で岳南電車が非常に厳しい状況下にあることを身をもって感じた。元々営業距離の短い産業鉄道のため沿線にさしたる観光地もなく定期外客を増やすのは至難の業と思われるが、富士市が10%を出資しており行政と共に存続策を考えていただき、電車が地域住民の足として走り続けることを願う次第である。

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