18きっぷで東海道を巡る -6-

鶴見線の枝線を巡る ①

全JR路線のなかで、まだ相当残っている未乗車区間の踏破も、遅々としながらも継続中です。しかし、乗りこぼしの区間はアプローチ困難なところが多く、心して訪問しないと距離も伸びません。とくに関東地方には意外な未乗車区間が残っています。鶴見線もそのひとつです。過去に、ひと駅だけ乗ったものの、未乗車区間として残ったままでした。南武線の尻手から浜川崎へ向かい、鶴見線の踏破をスタート。尻手~浜川崎は南武支線と呼ばれ、貨物線として敷設され、のちに旅客営業をするようになった。3番ホームが南武支線の専用ホームで、終端部は行き止まりになっている。車両は205系の2両編成のワンマンカー、本日はクモハ205 1001+クハ204 1001

鶴見線は本線だけでなく、固有の線名を持たない2本の枝線がある。
・鶴見線(支線)武蔵白石~大川 1.1km
・鶴見線(支線)浅野~海芝浦 1.7km
さらに本線でありながら枝線のように見える
・鶴見線(本線)浜川崎~扇町 1.3km
の3線にも乗車し、鶴見線を全区間乗ることにした。と言っても、合わせて10km程度で、距離は伸びない。

JR東日本発行「鶴見線・南武支線ガイドブック」より転載

鶴見線の沿線は、京浜工業地帯の真っただ中にあり、人家・商店はほとんど見られず、工場への通勤客の輸送でほぼ完結している。沿線の就業者の減少もあって列車本数も削減され、さらに昼間は運転休止区間もあって、一挙に乗り回すには、朝か夕方に限られてしまう。久しぶりに時刻表をひっくり返して接続を調べ、川崎から南武線尻手へ行き、南武支線に乗り換えて浜川崎へ向かい、扇町、大川、海芝浦の順に訪問することにする。

尻手駅に隣接する、尻手~鶴見を結ぶ貨物線の尻手短絡線には、しょっちゅう貨物が通過する。この先で武蔵野線とも合流する。

 

 

鶴見線と合流する浜川崎駅は特異な線形をしている。南武支線と鶴見線はほぼT字型に交わり、それぞれ別個に旅客ホーム・駅舎がある。以前は、南武鉄道、鶴見臨港鉄道と、別々の私鉄だった名残で、線路も繋がっていないが、貨物線だけは、尻手方から扇町方への短絡線が設けられている。

 

旅客線と貨物線の間には、赤さびた移動機DLが放置されていた。

 

 

 

扇町へ

浜川崎駅を出た鶴見線は、複線から単線に変わる。左側には浜川崎貨物駅が広がり、多くの貨物列車が出入りしている。それが終わると、貨物線と旅客線が単線並列となる。右手のJFEスチールの工場に沿って緩やかに右カーブし、扇橋を渡ると昭和駅に至る。同駅は昭和電工の正門脇にあり、ここから駅名が採られた。昭和を出ると右にカーブし、貨物ヤードが広がると終点の扇町駅に至る。駅のある扇町は、浅野財閥による埋立地であり、創業者の浅野家の家紋の扇にちなんで駅名が付けられた。

旅客ホームは一面一線で線路は行き止まりだが、横の貨物ヤードは奥まで伸びて、三井埠頭や昭和電工の工場からの車扱の貨物列車が仕立てられている。一日乗降数は1000人程度で、到着した電車に三々五々乗客が乗り込んでいった。また“猫駅”としても有名なそうで、確かに野良猫が我が物顔でホームを横切っていった。
運河を渡る頃がちょうど夕陽が没する時で、思わず“工場萌え”にカメラを向けた。

大川へ

武蔵白石~大川(1.1km)は、大川支線と通称されている。電車は朝夕のみの運転で、日中は8時間ほど運転がない。平日は1日9往復、土曜・休日は3往復のみとなった。ただ1km少しの路線であり、本線の武蔵白石からは歩いでも行くことができる。かつては首都圏最後の旧国クモハ12が、単行で行き来していたことで知られていた。平成8年に103系に置き換えられた際に、20m車ではカーブしたホームに接触する恐れがあり、以来、武蔵白石の大川支線ホームは廃止され、安善から、武蔵白石に停車せずに大川支線に入るようになった。ただ大川支線の正式な分岐点は武蔵白石のままである。
大川行きは安善を出ると、渡り線で本線上り線を逆走して武蔵白石の直前で大川支線に入線する。武蔵白石のホームの右側を右に急カーブしながら通過し、右手の日本鋳造本社工場を通過し直進。白石運河を越えると、まもなく終点大川駅に至る。木造の駅舎が、終端部分にある。一面一線を有する駅で、ホームに面した線路以外にも側線があるが、貨物扱いがなくなったため使用されていない。一日の乗降数は2000人程度。駅名は、多くの製紙会社を興した大川平三郎に因んでいる。このように、沿線は、明治以降に開発された埋立地であり人家はなく、地名すらなかった。

 18きっぷで東海道を巡る -6-」への4件のフィードバック

  1. 総本家青信号特派員様

    私にとっては南武線や鶴見線はイワユル地元ですが、貴殿の綿密なレポートには全く脱帽です。
    知っているつもりで、それが如何に粗雑でアヤフヤだったかを思い知らされました。

    よくよく振り返って見ると、私が足を踏み入れたのは鶴見線の川崎~海芝浦間でしか無く、今回のレポート区間のほんの一部分に過ぎません。

    海芝浦の海上ホームにハシャいで、稀少車となったクモハ12に感激していた自分が小さく見えました。

    それと言うのも私の興味が車両中心で、なおかつ『手抜きの河』にとっては全線を乗り潰す思想が全く無かったからで、今回も貴殿のレポートを読んで反省する事しきりです。

    南武支線と鶴見線がほぼT字型に交わり、線路も繋がっていない事や、武蔵白石をスキップして大川へ直行する変則運用も興味津々ですね。⇒こんな事すら知りませんでした。(反省!)

    • 河様
      長いトンネルを抜けて、河様の地元の話から、復帰いたしましたが、さっそくのコメントを頂戴し、ありがとうございます。ちょっと東京方面に用事があり、半日を鶴見線訪問に充てました。鶴見線、というのは車両においても、沿線風景においても、失礼ながら魅力に欠けるところがありますが、訪れてみると、なかなか興味深い発見がありました。事前情報に振り回されず、予断を持たずに現地を訪問するほうが、好奇心が芽生えるものだと思った次第です。
      河様のご活動もP誌で拝見しております。河様ならではの視点を味わっております。

  2. 河様
    ひとつ訂正します。浜川崎では、鶴見線と南武支線は繋がっていないと書きましたが、これはJR東日本の旅客線のことで、すぐ横にある、JR貨物の貨物線は通じており、日常的に、扇町方面と尻手方面へ向かう貨物列車が運転されています。電車も回送・検査などで、貨物線を経由して鶴見線と南武支線を行き来しているようですし、過去にはイベント列車で営業列車が行き来したこともあったようです。

  3. 総本家青信号特派員様

    ええ、それは承知の上です。 貴殿の記述にも、ちゃんと『貨物線には短絡線が有る』旨示されており、それは当然電車の変則通過も含むものと理解しておりました。
    要は定期列車(電車)は直通していない訳で、それは過去には夫々が別会社だった名残りと言うのも当然でしょうね。

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