3月7日から大津市歴史博物館で開催されていた「江若鉄道の思い出」展は、4月12日にめでたく閉幕を迎えました。翌13日にはクローバー会員の応援も得て撤収作業を行ない、今回の展示は滞りなく終了しました。この期間、同展への準備、見学、聴講、撤収などで協力いただいたクローバー会の皆さんに感謝申し上げます。
同館での江若鉄道の展示をさかのぼると、平成10年に「大津の鉄道百科展」で江若鉄道の一端を展示、平成18年には、単独で「ありし日の江若鉄道」展が開催されました。館始まって以来の入場者を記録、発行した図録も何度増刷しても売り切れて、再度の開催が各方面から待望されていました。その後、スカイプラザ浜大津では、平成23年、24年、2年連続で、西村雅幸さんの江若鉄道ジオラマ展示と模型運転会を開催、、忠実に再現されたジオラマが人気を呼び、これまた連日超満員の大盛況となりました。また、平成24年には、クローバー会有志で鉄道雑誌「レイル」に江若鉄道特集を寄稿することもできました。
こういった経緯をバックにして、今回の展示が実現しました。従来のように、古文書やグッズを借りて来て時系列に並べる展示ではなく、タイトルに“思い出”とあるように、個人・団体から思い出の品々を展示、合わせて、来場者からもコメントを積極的に収集・公開し、ともに江若に思いを寄せる展示者・来場者のツーウェイによって、展示場で会話の生まれる展示を目指しました。全く新しい展示で、これには、歴博学芸員の木津さんの企画力・行動力によって実現したと言えます。
▲来場者は、赤ん坊からご老人まで、あらゆる人たちが訪れ、熱心に見学していた。いちばん癒されたのは、小さな子どもの笑顔だった
▲展示室に置かれた浜大津のジオラマは大人気、ここは撮影OKとあって、カメラやスマホでの撮影も賑わった。西村さんも説明に大忙しだった
クローバー会では、西村さんが、浜大津、三井寺下、白鬚、高島町のジオラマを1階エントランスと2階展示室に展示、とくに浜大津駅は、来場者の共通の思い出の場所だけに、いつも二重三重の人垣ができて、和やかな雰囲気が生まれていました。また今回、1900形客車の原寸モックアップを製作、受付前に設置され、窓から顔を出して記念撮影ができるようになっています。私は「江若鉄道、最後の二日間を追って」と題して、昭和44年10月31日の営業最終日と、その翌日さよなら列車運転の11月1日の二日間の様子を、時系列の写真で展示するとともに、当時のカメラやアルバムを展示しました。
この狙いは的中したようで、展示場のあちこちで、話の輪ができて、会場は当時を懐かしむ人びとの和やかな輪が見られました。期間中の有料入場者は約8600人となり、土日は400~500人の入場で、会場は終日熱気に包まれていました。また、同時に館としては初めて一般の書店でも発売した「江若鉄道の思い出」も、初版がアッと言う間に売り切れて、再版となるほどの売れ行きでした。
▲「れきはく講座」と題して、期間中3回、講演会・現地見学会があった。トップバッターは、不肖わたくしが「江若、最後の二日間を追って」と題して90分話した。クローバー会員も遠路から駆けつけていただき、講座終了後も、会員内外で話が弾んだことも嬉しかった。▲2回目の「れきはく講座」は、三井寺下・浜大津周辺の廃線跡ウォーク。私も知らない廃線跡があり、有意義なウォークとなった。写真の道路が線路跡、背後中央の土蔵は、江若時代の写真にも収まっている。写真ではよく分からないが、左手には枕木も放置されている。
クローバー会の活動は、基本的には会員同士が楽しめれば、それで良しと思っています。でも時には、その活動が社会でも認知され、引いては、地域・社会に貢献できればとも思っています。僭越ですが、西村さんの模型や、私の写真が、来場者の眼に止まり、対話が生まれ、引いては思い出づくりのお役に立てたなら、こんな嬉しいことはありません。博物館と言う公的な場で、クローバー会の名が8600人の来場者に刻まれ、会の認知度の向上に多少は貢献したかなと思っています。
元はと言えば、廃止当日の二日間は、鉄道同好会現役時代に、沿線の北小松学舎に泊まり込んで合宿を行なったもので、鉄道同好会に在籍したからこそ実現できた二日間でした。その意味でも、鉄道同好会の輪が、江若廃止後46年後に再び結実したこと、たいへん嬉しく思います。
▲JR京都駅の電照広告、ポスターは大津市内はもちろん、遠く首都圏でも貼られていたとのことで、これがきっかけで、首都圏から駆けつけたクローバー会会員もいた。広く催事の周知が行なわれたことも、入場者増につながったようだ。
クローバー会の皆さま
ご来場、ご協力ありがとうございました。会場の様子は特派員氏の解説の通りです。特に印象深いのは 遠来のお客様が多かったこと、江若を知らない若い世代の方が熱心に見ていただいたこと、そして32日間の会期中 何度も会場に足を運んで頂いたリピーターが多かったことでした。今回の企画の目玉は「それぞれの思い出」を書いてもらって掲示することでしたが、正直言って 果たしてどれくらいの人が書いてくれるだろうかと危惧していました。しかしこれは杞憂でした。中には家に持ち帰って何枚も書いて再来された方もあって、掲示するスペースがなくなり 写真パネルを取り外してスペースを作るという苦肉の策もありました。数多くの思い出には 楽しさ、なつかしさだけではなく、悲しい思い出をもってジオラマを見つめておられた方があったことも知りました。大げさに言えば 人生の縮図のようなコメントがつづられた「思い出」展でした。大津でのイベントが成功裡に終了し ホッとしているところですが、今年9月には高島市でのイベントの話が持ち上がっています。まだ滋賀県との縁は切れそうにありません。何はともあれ ありがとうございました。
西村さんには、遠路、週一のペースで大津まで来ていただき、本当にお疲れさまでした。今回の双方向の展示には私も若干の不安もありましたが、フタを開けると、終始、来場者の熱意、パワーには圧倒されましたね。皆さん、一点一点食いいるように見ておられ、対話し、発信されていました。
西村さんには、まだ滋賀県通いが続きそうですが、これからも、よろしくお願いいたします。
いろいろな方が見に来られ思い出を語る場を創られて大変立派なことだと思います。昔、同志社大學鉄道同好会は「鉄道趣味を通して人類の平和に貢献し」とか何とか仰々しいことを目的に掲げていたと思いますが、今回の思い出展は人類平和とまでは行かなくても滋賀県の江若鉄道を思い出とする地域の方々の人生には多少貢献できたような気がします。青森の写真展の時も若干そのような気になっていましたが、今回はその比ではなく、次回開催の招致の話もあるようでして結構なことだと思っております。トークショーとジオラマのお二方と手伝い等で盛り上げていただいた皆様お疲れ様でした。
準特急さま
コメント頂戴し、ありがとうございます。何気に撮った写真が、何十年も経つと、このような形で皆さんのお役に立つとは、これぞ大人の(老人の?)鉄道趣味だと思いました。準特急さんも、つねづねおっしゃっている、細く長くの鉄道趣味の醍醐味です。クローバー会の皆さんからは、遠隔地からも、わざわざ来ていただき、ご支援、ご協力に感謝、感謝です。
素晴らしい企画展でしたね。8600名ものお客様がお見えになったとは、本当に凄いことでした。福田さん、西村さんのお力を改めてお見せ頂いたことでした。それに加え我らがクローバー会会員各位の支援があっての大成功、皆で喜びたいですね。
日頃、「サンダーバード」で何気なく通過している湖西線に、このようなドラマがあったのか、勉強させて頂きました。「江若鉄道」という存在に地元の皆さんが、これだけの思いを抱いておられたのか、それを教えて頂いたことは何物にも代えられません。
有り難うございました。
マルーンさま
いつも、ありがとうございます。私の写真展示も、モトを正せば、鉄道同好会時代にみんなと行った合宿や撮影会、見学会がほとんどです。大学紛争中という追い風?もあって、より深く記録することができました。鉄道同好会に在籍していたこその展示で、その46年後、同じ仲間のご協力、ご支援で、このような形で実現できたことに感慨深いものを覚えます。