国府津
50年前、御殿場線にはD52の牽く列車が走っていました。その始発駅が国府津であり、D52の基地である国府津機関区も駅の裏手にありました。D52と言えば幹線の貨物用であり、旅客列車も牽引していたのは、ここ国府津区のみでした。国府津は、東京から僅か80キロほどのところ、こんな近郊にD52が働いていたとは、その時代を知っている人間からしても、今から見るとにわかに信じられないことです。50年前の高校3年生の夏休み、関東方面に向かいました。一番の目的は、C62「ゆうづる」を撮ることにありましたが、夜行列車に乗って、真っ先に訪れたのが国府津でした。御殿場線の電化も翌年に迫っており、最後のD52の撮影をしました。
▲国府津駅5番ホームに停車するD52236の牽く御殿場線の旅客列車、右側のホームに放置されているのは、当時私が使っていた青色のリュックサック。
▲同地点の50年後、基本的な駅構造には変化はないから、車両が代わっただけで、当時の面影がまだ感じられる。古レールを使った支柱も健在。
いかにも歴史を感じさせる「国府津」という駅名、「こうづ」の音も、懐かしい時代へ引き戻してくれそうだ。事実、国府津駅は、1887年(明治20年)、横浜~国府津が開業した際に設置された。保土ケ谷、戸塚、藤沢、大磯の各駅とともに、ことし開業130周年を迎えることとなった、神奈川県では、いちばん古い駅となる。その後、現在の御殿場線を通って、東海道本線が西へ伸びる。国府津には機関区が設けられ、箱根越えの基地として、「つばめ」など当時の最速列車も停車して補機を連結するなど、鉄道基地として栄えることになる。
▲いかにもと思わせる50年前の国府津駅(上)。現在の駅舎は、およそ駅には見えない、無機質な4階建てだが、これは大部分をJR東日本国府津運輸区が占めているため(下)。
なぜ幹線貨物用のD52が、御殿場線の客貨を牽くようになったのかは不明だが、D52が全機揃った昭和26年の配置を見ると、新鶴見、国府津、沼津、浜松、稲沢、米原、吹田と、東海道の主要機関区には、すべてD52が配置されていた。それが電化の西進によって、D52は追い出されるが、国府津だけは、非電化で勾配区間もある御殿場線が分岐していたので、そのままD52が居座った、という推察はどうだろうか。訪れた昭和42年には6両のD52、入換用のC11が3両配置されていた。山陽本線筋にあれほどいたD52も、この時期は消えてしまい、あとは五稜郭、吹田に配置されているだけだった。〉 駅前にある駅開業100周年の記念碑▲国府津機関区は駅の裏手、東京寄りにあった。立派なコンクリート製の扇形庫、転車台があった。D52は原型のままだが、全機、前照灯がシールドビーム化されており、巨大な機体に小さなヘッドライトが何ともアンバランスだった。
▲国府津にはEF10が16両も配置され、電機用の庫もあった。東海道本線の区間貨物を牽いていた。とくに初期車が集中し、トップナンバー機も所在した。
▲現在の国府津機関区跡、扇形庫・転車台があった付近は跡形も無くなり、現在では宅地が広がっていた。そんななかで、道路端で謎の石柱を見つけた(右)。凹部には何かの表示板が入っていたのだろう。果たして、機関区絡みのものだろうか。
〈 当時を偲ばせるもの、と言えば、現在線をくぐる「国府津架動橋」と書かれた通路の前後の石垣だろうか、古色蒼然とした雰囲気がそこだけ残っていた。
▲駅本屋は、1番ホームの西端にある。改札口付近と地下道付近、乗降数は一日6000人程度と少なく、エスカレーターも無い。▲JR東日本と東海の境界駅となる国府津。駅名標は、御殿場線が発着する3番ホーム側の右の駅名標は、JR東海の「下曽我」を指しているが、スタイルはJR東日本様式になっている。▲ポイントを分けて発車した御殿場線の313系の列車、左下に御殿場線の0キロポストが見える。東海道本線の上り線を越す、高架に掛かるところ。複線のように見えるが、左は、下曽我にある国府津車両センターへの入出庫線である。右はJR東海、左はJR東日本の所有線となる。
御殿場線の50年前の写真を楽しませていただきました。私はまだ御殿場線を乗っていませんでしたので、東下りの時に御殿場線を乗ってみようと考えるのですがなかなか達成できません。ところでこの御殿場線のD5270が山北駅近くの山北鉄道公園で動態保存されているのがいつも鉄道関係でチェックしている東洋経済オンラインで知りました。動態の動力は若桜鉄道と同じ圧縮空気ですが、あのD52の巨体が動くのですからすごいです。詳しいことは東洋経済オンラインの鉄道の項目で「「公園のSL」を再び走らせた天上の元機関士
動くからこそ伝えられる鉄道技術がある」という題名で記事が書かれてあります。なお山北町HPでも詳しく書かれています。整備運行が8月29日に行われる予定も書かれています。青春18きっぷで行ってみようかな。
D5272が御殿場駅にあるぽっぽ広場に保存されています。ステップも付いていてキャブも見られます。非常に状態が良いですよ。ついでに足を延ばして行かれても良いと思います。また、夜も幻想的で綺麗です。
どですかでん様
コメントありがとうございます。実は私も御殿場線は、東半分の国府津~御殿場は未乗車のままです。D52も駅・区撮りだけで、富士山をバックに走るD52の走行写真は夢物語に終わっています。D5270のことは、ネットでも見たことがあります。ちょうど転車台の写真がD5270ですね。国府津のなかでは一番の若番でした。保存機がたとえわずかでも“動く”というのは凄いことだと思います。8月29日から動くとのこと、無理すれば、18きっぷ日帰りも可能ですね。
KAWANAKA様
D5272は御殿場駅前に保存されていること、情報ありがとうございます。数年前、御殿場へ行ったことがあるのですが、気が付きませんでした。改めてD52の保存状況を調べてみると、136号が沼津市でも保存され、近隣の戸塚に403号が、相模原に235号が保存されていることが判りました。これに、どですかでんさん報告の70号も加えると、御殿場線周辺に5両も保存されていることになります。それだれ、あの巨大なスタイルが、印象的だったのでしょうか。