4月11日に70299で福塩線訪問記を載せましたが、あれから1ケ月が過ぎ、先般のぶんしゅう殿との旅で新緑の美しさを再認識させられたこともあって 少し遅いかと思いつつ 新緑や田植え風景を求めて福塩北線沿線を走ってみました。何しろ府中・三次間の午前の部は5:00から10:00までの上下6本が勝負です。一方 午後の部で撮影できるのは15:00から日没までの4本です。昼過ぎの通学用臨時列車が走れば2本増えます。昼間の 列車の走らない時間帯を芸備線や三江線に場所を変えてもやはり列車がありません。従って5時間の空き時間を持て余すので たいていは午前の部狙いで早朝の出撃となります。今回は前夜の準備がまずく 早く起きたものの出発でもたつき、下り1番列車1721D三次行きには間に合いそうになく、上り1番列車1720Dからの撮影となりました。今回は今までに撮っていない場所に行くことにして まずは備後三川に向かいました。
駅には自転車でやってきたり、マイカーで送ってもらった女子高生3名と通勤客1名が列車の到着を待っていました。この駅は近代的なつくりですが、八田原ダムの建設に伴う線路のつけかえがあり、そのときに作り替えられたためです。駅を出た列車はすぐに長さ6123mの八田原トンネルに吸い込まれてゆきます。ダム湖と平行に走るこの長いトンネルが福塩線で唯一キハ120が高速で走れる区間です。
次は備後矢野・上下間へ向かいます。福塩北線が生き永らえている一因は通学生の存在だと思われますが、県立上下高校もそのひとつです。その上下高校をバックに入れて撮れないかと 航空写真やストリートビューで目をつけていた地点に向かいました。ところが着いてみると全く見通しがきかず高校は見えずガッカリ。でも他の地点を探す時間的な余裕はなくここで撮ることにしました。
次の列車はこの1722Dと備後矢野駅で交換してやってくる1723D三次行きです。場所を変えるヒマはなく ここで撮らざるを得ません。場所の選定を間違いました。
あと追いとなりましたが 1723Dは朝陽に輝く新緑に吸い込まれてゆきました。気をとりなおして次の地点へ移動します。
手前の川は上下川です。やがて馬洗川、江の川となって日本海に注ぎます。そもそも上下という地名は分水嶺を意味していますので、上下の北にあるこの地点は日本海側になります。高い場所から俯瞰できれば水の張られた棚田の中を行く様子が撮れたのですが、軽自動車でないと通れそうにない狭い道だったので断念しました。この1724Dを撮って、午前の部はあと1本となりました。どこで撮ろうかと悩んだ末 ぶんしゅう氏とも訪れた吉舎の明玄寺前に向かいました。
ぶんしゅう殿に「お寺好き」とひやかされそうですが 今回は馬洗川の対岸からサイドビューで撮ることにしました。列車を待つ間に観察しているとお寺の山門右手はイチョウの木らしく、更に右手はモミジのようなので紅葉の頃も来てみなくてはと思いました。数名の乗客を乗せた1725Dが通り過ぎて午前の部は終了しました。
さてこの日は昼間の臨時列車もなく、あと5時間待たねば次の列車は来ません。実はこの吉舎や備後安田近辺は「ブッポウソウ」という珍しい鳥が見られる地域です。ちょうどこの時期に東南アジアから飛来し、北海道を除く日本全国で繁殖していた夏鳥です。この鳥は大きな樹木の「ウロ」で子育てをする習性があるのですが、森から「ウロ」のある大木が少なくなり、代わりに 木製電柱にキツツキがあけた穴で繁殖をはじめましたが、今度は木製電柱がコンクリート電柱に代わってしまって飛来数は激減し、今では絶滅危惧種に指定され、沖縄のヤンバルクイナと同じくらいの希少種です。全国各地でブッポウソウを呼び戻そうという活動が展開されていますが、この地区では地元有志が集中的に巣箱を設置して 成果をあげつつあります。そこで1725Dを撮ったあとは「ブッポウソウ」を探しにゆくことにしました。巣箱の設置場所地図を持っていますので いくつかの巣箱を訪ねてみましたが、鉄道のように時間が来れば間違いなく来るというものではなく 残念ながらブッポウソウにはなかなか出会えません。欲張ってもダメだと思って ほどほどにして切り上げました。実は数箇所 福塩線の車窓からも見える巣箱もあります。ということで以前同地区で撮影したブッポウソウの写真を添えておきます。
なおブッポウソウは三江線の伊賀和志駅近辺にも飛来していて5月14日には伊賀和志駅集合の観察会も企画されています。そんなわけで列車密度も人口密度も低い地域には 貴重な動植物が見られるという好例かもしれません。
平凡な風景が多く ポイント探しに難儀する線区ではありますが これからも再々足を運び 四季の風景を記録しようと思っています。