ニュースから2題

身近なことからいうと、堺市が殆ど決まりかけていた新型LRT電車の導入を断念。これにより久々の関西地区における路面電車の新規路線の夢が画餅に終わった。それのみならず阪堺線の堺市内区間の存続も極めて危うくなったことが想像できる。単に鉄道マニアだけでなく近未来の交通政策を考えているものにおいても非常に残念な結果になったといえよう。

昨年の堺市長戦における争点であったLRTの導入は、前市長のシャープの工場誘致とともに大浜地区の活性化などのビジョンは描けていた。しかしリーマンショック以降の急速な経済状況の悪化で、「もしかして赤字が増えるものはやらない方がいいのでは」という世論にもつながった。橋下大阪府知事の政治パフォーマンスも時にはポピュラリズムに敷衍する。識者としては非常に残念な結論と言えなくもない。今の経済状況下では消極法しかでてこないが、これでは座して死を待つのみではないかとも言えるであろう。橋下知事の大阪府政には戦後処理的な暫定的な役割も感じるがそこの負の部分が最もでたことの一つがこれではないだろうか。

もう一つのニュースは鉄道でなくバスの話。九州に本社をおく西日本車体工業が会社解散という悲痛なニュースだ。

http://kyushu.yomiuri.co.jp/keizai/detail/20100122-OYS1T00197.htm

70−80年代に正面運行窓付近の逆「く」の字型の車体デザインで一世を風靡したNSKボディーであるが、近年は親会社である西鉄のバス事業がずっと縮小して苦戦していることが伝わってきた。今の路線バス事業はローカル部門は殆ど赤字でそれを高速バス事業で補うのがせめてもの経営。しかし高速道路の大幅割引で公共交通の役割だけでは存続が困難になった事業者が増加している。そうでなくても西鉄はじめ九州地区ではバス会社の苦境が伝わっていた。

NSKボディーは京都市バスでもかつては結構見られたが、私自身が九州出身だけに非常に残念に思う。またこういう企業が無くなって代わりの産業があるかという問いに「ない」としか言いようがないのが今の社会状況だ。

映画「フラガール」では常磐炭坑の閉鎖に伴い「ハワイアンセンター」設置の夢というテーマがモチーフになっていた。今の地方には就業や若者の未来、数十年働ける環境や企業の存在と言った基盤が非常に薄い。そういう背景からみてもこの西日本車体の解散には行政や地方政治の無策を痛切に感じる。地方の「荒れ」は最後には日本中を覆うのではないか。私の不安ができれば当たらないことを願うのみである。

ニュースから2題」への2件のフィードバック

  1. 久しぶりに骨のあるコメントに接しうれしく思う。鉄道はその時々の政経のトレンドに身を任せることがあるが、「国づくりの一環」だと思えば政治家は世界の潮流に乗り遅れては後に笑い物になってしまう。その昔の”お犬様将軍”をどのように評価するかだが、そうした意味での堺のLRT問題は遺憾なこであると思っている。
    それに比べると「雷鳥、しらさぎ」の誕生は大きな出来事であった。富山・福岡から大阪への転勤は1963年秋であったが、481系登場後、京都8:43発雷鳥1号で高岡11:58着、加越能バスで福岡着12:35頃、13時の会議に悠々間に合った。帰路は17時前福岡発のバスで高岡へ、18:05発しらさぎ2号で米原20:46着。乗換21:06発ー865M-で京都22:16着。市電で下鴨の自宅に23時までに御帰還。翌日6時起床で大阪・京町堀の大阪(営)に8:30出勤出来た。役員さんの鞄持ちをやると米原から新幹線こだま20:53発、京都21:20着となった。
    この時刻は1969年12月号の時刻表によるものだが、本社での会議や打ち合わせに月1~3回行っていたが、481系登場までは夜行普通の往復をしていた。その頃、夜行に乗ると2,000円の手当が出た。宿泊費も一泊二食2,000円であった。本給が20,000円強ぐらいの頃の夜行手当は魅力があった。それが特急料金800円となった。出張手当は一日500円、大鉄局管内外だと支給された。45年前の話。

  2. コメントありがとうございます。
    新幹線と雷鳥の経済的需要の裏付けがよくわかる話です。
    45年前の画期的な時代の先端だったことと、出張費の裏話に興味
    深く思いました。
    会社員は身入りの余分な部分が殆どなくなって、それでも
    という時代です。
    前途不確定なLRTの投資を止めるというのも手なのでしょうが。

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