2012年~2013年 極寒の中国鉄路の旅 Part2 哈大高速鉄道初乗車 大連北駅、ハルピン西駅

第3日目 12月25日

① ホテル7:30(Taxi・18キロ)→8:00大连北站
② 大连北8:44(D1307次)→14:30哈尔滨西
③ 哈尔滨西站14:50(Taxi)→15:10哈尔滨駅前

昨夜ホテルに帰ってからフロントのお姉さんに、大连北站に行くBusの系統を聞きましたら、「大连北站?、そんな站はないよ!聞いたことがない。」とのお返事です。
12月1日に新しい哈大高速鉄路が開業した。大连に新しくできた站ですと説明しても「不知道」です。ホテルのフロントマンなのに、不勉強だなと思いましたが、ここは中国です。フロントマンの程度はこんなものです。
近くに旅行社の事務所がありましたので、行って聞くと、「私はまだ行ったことはないですが、できたのは知っています。しかし、市内からそこへ行くBusがあるのかどうかまでは知りません。」 と、まあまあ、まともな返事が返ってきました。

大连北站は、瀋陽大连を結ぶ在来線の瀋大線に建設されました。大连站からは4つ目の駅で、15.9キロに位置します。しかし、現在は哈大高速鉄路の駅として使用されていて、在来線の列車は止まらず、すべて通過します。列車で行くこともできません。

02_DSC_6324仕方ありません。今日はTaxiで行くことにしました。問題はTaxiの運転手が知っているかどうかでしたが、今の大连站よりもっと手前に駅ができていた等々を説明しますと、行ったことはないが、行ってみようとの中国人らしい返事です。大丈夫ではありませんが、他のTaxiに乗り換えても同じだろうと、任せました。

02_大連北駅8:00、高速道路を走ること約30分、目指す站が突如現れました。道路と反対側にありますが、駅へと向かう分岐した横断高架橋がありました。約18キロを走りました。

02_DSC_6326運転手さん、”俺はプロだよ、どんなもんだい。”と、自信たっぷりのお顔でにっこりです。40元の料金でしたが、気持ちでプラス5元をお渡ししました。

当初北京空港の鉄路切符売場で購入したD1309次切符は、9:28発です。大连北站は、できたばかりですので、見て回ろうと思っていましたが、最近の中国鉄路站はだいたい似たような造りをしています。
これは、10分もあれば十分だろう、それよりも早くに哈尔滨に行った方が何かと都合が良いと、考え直しをして切符発売窓口に行きました。1本前の列車の空席がないかを聞きますと「有=あります」との返事です。切符の変更をお願いしました。切符は、購入した所か始発駅窓口でのみ変更が可能です。
01_切符6245&D1307ついでに明日26日発売と北京空港で確認した、1月3日のチチハルから古蓮行きの6245次の切符も、もしやと思い聞いてみますと、「有」です。一緒に行く小竹先生のと合わせて、2枚の軟臥下鋪を即決で買いました。

中国では、一人に聞いてもいい加減なことを言われることが多く、何度も苦い経験しています。必ず2人以上、できれば3~5人に確認することが必要なのは、身につけた経験でもあります。
2日前の北京空港の切符売場では、26日発売と言われ、今日の朝にホテルを出る前にもインターネットの残席情報で、まだインターネットでも発売していないのを確認しましたが、やはり現実は違っていました。これが中国なのですね。
この切符は、哈尔滨からお世話になる旅行社にも購入依頼をしていました。パスポート(中国人は身分証)を提示しての実名制切符になっていますので、同じ人物が同じ切符を購入することはできなくなっています。ダブリ購入はありえないのですが、購入に行っていただくことは失礼となります。直ぐに連絡しようとしましたら、逆に先方から「今日から売り出されることになった。駅から連絡が入ったので今から買いに行く。」との電話が入りました。頼んでいて申し訳ないが、今自力で買えましたと丁重にお断りをしました。

この列車の軟臥下鋪の切符は、始発駅のチチハルの旅行社に聞いてもとれるかどうか分からないと言われました。また残席情報でも連日「没有」表示が続き、軟座寝台車両が連結されているのかさえ疑りました。また、プラチナ切符のようですので、多分始発駅が抑えていて公示されないか、ダフ屋に流れているのではと、疑心暗鬼でしたので、確保できたのは感動モノでした。
頼んでおいて反故にするのは、大変に失礼なことなのですが、依頼した旅行社も確約はしてくれていませんでしたので、了解していただきました。
03_大連北駅06_大連北駅D1307

▲ 上は、大连北站の2階待合室コンコースです。最近新設、またリニューアルされた中国鉄路の駅コンコースとほとんど違いはありません。下の発車ホームですが、どの站も同じです。天津站と言われても見分けは、できないでしょう。

待合室からは下りエスカレータも設置されていて、今までの中国鉄路の駅と比べると、とても便利にはなったのですが、改札開始は、発車の15~30分前が殆どで1本のエスカレータでは、乗客が集中して混雑するのと、ホームに降りても指定車両に行くには距離がありすぎる場合が多いのが難点です。
その度に無座客は走りますし、指定席券を持っている客でも大きな荷物を持っての移動は大変です。利用客の立場に立った設計ではないと思います。

【 極寒地で初めての高速鉄道の哈大高速鉄路 】
2012年12月1日、大连哈尔滨を結ぶ世界初の極寒地を走る高速旅客専用鉄道が開業しました。総延長距離は921キロ(別報道では904キロ)、23站が設置されました。この路線は、冬季にはマイナス40℃の極寒にさらされますが、高速で走行する技術はこれまで確立されていませんでした。そのためはやて型CRH2を技術供与したJR東日本に対応策の相談がありましたが、日本の新幹線ではマイナス25℃までの対策しかなかったために、困り果てた中国鉄路当局は、ドイツに援助を求めました。ドイツではロシアにおいて技術援助をした実績があり頼ったと聞きます。

設計速度は350km/hですが、冬季12月~3月は最高速度200km/hに減速して運行、4月~11月は300km/hで走行される事になりました。未だ極寒対応問題が全て解決していないか、実績不足なのかは未発表です。メンツを何よりも重んじる中国人です。安全重視との文言はでてきません。もしも事故があった場合の不安感の方が強いと思われます。当分の間は、利用客は実験材料として使われていると思って、覚悟の乗車が必要です。
日本では耐寒問題の中でも耐雪問題が大きく、線路に積もる湿った雪や架線への対応が必需でしたが、中国は乾いた雪で降っても風で飛んでいきます。ラッセルよりもほうきで掃けます。積雪はそれほどではなく、車両やレールへの極寒対応が必需になったと思われます。
私はメカ音痴ですので詳しくは分かりませんが、超低温から超高温となるブレーキ関係の機器や材質には、高度な技術が求められたでしょうね。まずは初乗車のレポートです。

【CRH380B 車両紹介】
07_CRH380B▲ 開発された車両は、ドイツシーメンス製のICE中国版のCRH380B厳寒対応車両です。40編成が用意されました。哈尔滨よりから、特等車(展望車)・1等車+2等車3両+食堂・2等車+2等車3両の8両1編成となっています・
06_観光1等車▲ 1号車は、運転台寄りにある特等座(展望車)と1等車ですが、展望車は運転台と客室の仕切りに、日本板硝子が開発した瞬間調光ガラス「商品名=UMU(ウム)」が使用されています。六甲ライナーに乗車されますと、住宅地の中を走る際に突然に窓ガラスが白くなり、外が見えなくなるのをご覧になった方もあろうかと思いますが、よくこれに目を付けたものですね。
以前に乗車した時は透明になっていましたが、ガラスが白くなっています。これは、運転手が携帯電話でゲームをしていたとか、眠っていたとかの安全無視行為を中国版ツイッターで告発されたことがあって、以後遮光状態にされてしまいました。困ったことが起きると直ぐに隠蔽へと走る行動は、どの国も一緒ですね。鉄ちゃんには羨望の席なのですが、展望が見えないなら1等より112.5%高く支払っても乗る価値はありません。
1等の座席ははやてに使用されたのと同一ですが、窓配置とは一致していなく、窓なし座席もあります。今の中国鉄路の製造技術では、設計変更ができないのでしょうね。
08_1等車▲ 1等車の車両デザインは、ICEに準じています。木目調は、極寒地を走る車両には温かみを感じさせてくれます。後部には、スーツケース等の大きな荷物を置けるスペースがあります。各座席下には、電源コンセントが設置されていますので、PC持ち込みのビジネスマンには助かります。
07_2等_食堂車▲ 2等車と食堂車です。食堂車では3種類の弁当が用意されていました。すべて電子レンジで温めます。車内販売にも頼めば持ってきてくれます。
2等車は、当日朝のインターネット残席情報では結構残席ありでしたが、満席にはなっていました。当日乗車前に切符を購入されたと思われます。
中国の高速鉄道網は、哈大高速鉄路の開業により総延長は、約8600キロとなりました。所要時間短縮、列車本数の増加が図られ、ようやくいつでも乗車できる便利な移動手段へと変化を遂げつつあります。

08_車窓▲ 凍てつく大地の走行が始まりました。高架橋は高く、今までの在来線の車窓では見えなかったはるか向こうまでが見渡せます。
この列車は、哈尔滨まで921キロを5時間46分(最速列車は、5時間24分)で走行します。かつて満州国時代には、「あじあ号」は、12時間30分で走行していました。高速鉄道開業前の在来線では、最速でも9時間14分もかかっていました。そもそも日中に移動できる列車はありませんでしたので、これは移動革命です。冬季以外になると、4時間強で結ばれるそうです。
09_車窓▲ 乗車中は、ゆっくりと昼寝でもできるなあと思っていましたが、雲一つなく晴れわたった空の下、遠方まで見える美しい大地に釘づけです。在来線では見られない高架鉄道からの車窓は、絶景でした。これを見るだけでも乗った価値は十分ありました。
結局、哈尔滨までは眠ることなく、車窓風景をアテにビールを飲み続けていました。
10_車窓

11_車窓▲ 11:35、鉄岭西站付近では、遠く蒸気機関車が未だ走る調兵山市のボタ山が見えました。12_車窓
10_温度▲ 乗車中、大変興味深かったのは電光掲示板で表示される外温です。発車時の大连では、マイナス6℃でしたが、列車が北に向かうごとに1℃づつ下がっていきます。哈尔滨手前では、とうとうマイナス19℃を表示しました。
列車速度は、200km/h走行と言う事でしたが、200km/h以上には達せず195km/hが最高でした。この路線の試運転が開始されたのは、2012年10月8日からです。試運転の際には、車内に米を入れた袋を乗せて「死重」としたとのエピソードもありました。しかし、なぜに米を選んだのでしょうね?
試運転期間は、わずか2ケ月弱と、日本では考えられない早期営業運転開始でした。この期間での温度はまださほどでもなく、極寒に達するのはこれからです。何も知らされていない人民を乗せての偉大な実験が始まっています。運転手も、初めての極寒地での高速運行とあって、気持ちは慎重になっていたのでしょうね。

列車は、瀋陽北駅を過ぎて、客車車両区に近づきました。面白い車両がある基地ですのでカメラを構えました。すると、えっと思う車両が・・・。
18_YX99871218_中華の星RZ2-25DT110979台車▲ 上は試験車と思いますが、注目したのは普段見たことがない台車です。下は、かつて中国鉄路局が独自開発した純国産の高速試験車両の「中華の星」の台車です。よく似ているように思えるのですが・・・。

「中華の星」は、高速電車を独自開発すべく、中国鉄路技術の総力を結集して完成しました。2002年12月には最高速度321.5km/hを記録し、名前通り将来を嘱望された車両でした。しかし、その後の試験運行では、数々の初期故障にも見舞われました。
2005年に何とか営業運転にこぎつけましたが最高運転速度は160km/hにスピードダウンされて、当時の鉄道大臣を乗せての運行の際には、致命的な危険なトラブルが発生し、開発中止の決定がなされました。そして、その後の高速鉄道車両については、日本、ドイツ、フランス、カナダからの技術導入に切り替えざるをえなかった、きっかけとなった車両です。
13_瀋陽▲ 「中華の星」は瀋陽の車両基地に留置されていると聞いていましたので、注意深く見ていましたら、CRH380B編成の後ろにそれらしき車両が一瞬見えました。
14_瀋陽▲ また見ていましたら、面白い車両がありました。ドクターイエローです。
15_瀋陽16_瀋陽▲ CRH380Bの編成で、「高速総合検測列車」との表示がされていました。
19_ハルピン[googlemap lat=”45.63117551531177″ lng=”126.50623798370361″ align=”left” width=”300px” height=”150px” zoom=”15″ type=”G_SATELLITE_MAP”]ハルビン西駅[/googlemap]▲ 14:20、定刻に哈尔滨西站に到着しました。ホーム18本22線の新しい駅です。この駅も在来線車両は乗り入れず哈大高速鉄路の専用駅で、在来線の哈尔滨からは7.2キロ手前に位置しています。駅前はまだ荒地でこれから開発される状態です。
市内に向かうために出口に向かいますと、まだ開通もしていない地下鉄への案内表示があったのにはびっくりしました。Busで移動を考えていました。案内係の赤たすきをしたお嬢さん3人が固まっておられましたので、哈尔滨までのバス乗り場がどこにあるか、また所要時間を聞いてみました。

乗り場は近くと分かりましたが、所要時間については、1人は約20分、2人目は1時間、もう1人は1時間半と3人が別々の返答をします。おいおいなんだい、案内人のたすきが泣きますよ。案内人ではなく、これでは混乱引き起し人ではありませんか。まったく教育ができていません。聞くのは諦めてTaxiにしました。
15分ほど並んでTaxiに乗車して哈尔滨に向かいました。Taxiは途中で相乗り客を乗せて約20分で駅前に着きました。料金は20元でした。Busだと迂回もします。哈尔滨の道路は狭く、渋滞もしますので、Busだと40~60分を要したと思われます。
22_龍門ホテル21_龍門ホテル▲ ホテルは駅正面の龍門ホテルをハルピンの旅行社から予約していただきました。部屋の窓からは哈尔滨が見渡せ、訪れる鉄ちゃん御用達のホテルです。

早速、前回の綏棱森林鉄路訪問時にお世話になりました趙さんと、明日からの兴隆森林鉄路撮影の打ち合わせに入りました。   Part3  へ続く

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