50年前の撮影地を歩く -2-

    “タカバシ”で撮った「替えだま」

IMG_0002syu高倉陸橋から眺めた上り「第2こだま」、新幹線開業数日前の光景(昭和39年9月)

今回の撮影地は、京都駅東側に架かる高倉陸橋、通称“タカバシ”だ。京都駅に発着する列車が眺められる陸橋は、昔から汽車見物の名所地で、多くの写真が残されている。私も小さい頃からよく行ったものだ。構内に梅小路機関区の支区があって、蒸機がいたのを覚えている。支区は、東海道線電化後もしばらくあったから、小学校の1年か2年に行ったことになる。新幹線建設前だから、陸橋上を走っていた伏見線は、廃止前とは違うルートで八条口方面へ向かっていた。

さまざまな列車を眺めるのが、無上の楽しみだった。貨物列車の両数を数えるのも楽しかった。乙訓の老人も同じことをしていたと言う。老人の時代は80両あったそうだが、私の時は45、6両だった。日によって貨物の量も違うだろうが、決まってこの両数だった。さて、50年前の“タカバシ”、ある列車の撮影を目的に自転車で訪れた。

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昭和39年4月24日のことだが、静岡~草薙を走行中の宇野行き特急「第一富士」2001Mが、静岡操車場を通過しようとしたところ、踏切を直前横断したダンプカーと衝突、1~6号車が脱線、とくに先頭1号車のクロ151-7は、線路に直角に全軸脱線し大破した。 ちょうど新幹線開業前で、「こだま」形は九州乗り入れを控えて改造入場中で、予備編成が全く無い状態だった。

そこで、事故翌日の4月25日から5月6日の間、上り「第1こだま」、下り「第2こだま」は、153系11連で代走することになり、特急料金は半額となった。これまでも、ダイヤの乱れで所定の運用ができず、153系を特発した例もあったが、長期間153系代走となったのは、これが初めて、いわゆる“替えだま”と呼ばれる特異な例となった。

“替えだま”こと、153系による上り「第1こだま」。50年前の同じ5月の連休でのできごと。周囲に撮影者は誰もいなかった。急行列車と同じ愛称板を取り付けており、代走も想定して常備されていたようだ

140503_064SYU連休明けの5月7日からは、不定期特急「第2ひびき」を運休させ、「こだま」1往復は157系9両の代走となり、6月1日から、事故編成が先頭車を除いて復旧したため、先頭車を「とき」クハ161を代用した編成で営業に復帰した。逆にクハ161を供出した上越線「とき」は、157系との混結となった。事故編成の先頭クロ151-7は現場で切断されて廃車となり、新性能電車の廃車第一号となった。不足する先頭車として、急遽サロ150-3を先頭車改造し、クロ150-3となった。

「こだま」など東海道線特急電車では、1号車にパーラーカーが連結されていたが、一編成は、通常の1等車が新幹線開業まで運転されることになる。さらに災いは続くもので、同年6月16日には新潟地震が発生、多くの車両が被災する。「こだま」形の161系には被害はなかったものの、「とき」は長期間運休となった。

現在の高倉陸橋、身長より高い金網があって撮影は困難、京都駅のホーム移設による番線変更があって、当時とは配線が変わっている  

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当時の新聞に載った事故の模様   珍しく国鉄の社告が新聞に出るほど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

50年前の撮影地を歩く -2-」への2件のフィードバック

  1. 総本家青信号特派員様
    京都在住の先輩方は高倉陸橋から見た東海道蒸機の出発や梅小路機関区の支区に待機するC51やC59等の美しい姿を数多く残されておりますが、当時はそれらの作品を見て心ときめいたものです。総本家さんとは趣味の世界での同期生のような私は153系の「替えだま」は撮っておりませんが、文中にあります157系の「似だま」は偶然大阪駅で撮りました。当時の新聞等を含めご説明いただき改めてあの事故列車にまつわる話がよくわかりました。有難うございました。

  2. 準特急さま
    いつも暖かいコメント、ありがとうございます。昔は、高倉陸橋のような汽車見物の橋がありましたね。東京ですと、品川の八ツ山橋、上野~鶯谷の跨線橋でしょうか。逆に、大阪などは、早くに高架化されたため、汽車見物できるような陸橋がなかったように思います。鉄道と街の成り立ちが見られて、興味深いことだと思います。157系の「似だま」は、私は見たことがありません。ぜひ、本掲示板で見てみたいものです。

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