1997年12月、国連による地球温暖化防止会議が京都で開催され、路面電車見直しが取り上げられ、とても嬉しく思いました。街角で配布されたビラにロサンゼルス、パリ、ロンドンでも復活とありましたが、私の知る限りにおいて実情は異なります。三市の中央通り、京都での烏丸、四条通を路面電車が大手を振って走るものではありません。
▲昭和30年代の京都駅前、伏見線のりばは、大勢の初詣客で賑わう(故 羽村宏さんのカラーポジから)
私が訪れたアメリカ西海岸の町ではオレゴン州ポートランド市の取り組みはすごいと思いました。市民投票の結果、町の中心部へ入る高速道路を止めて、路面電車が復活させたのです。中心部は狭い街路ですが、電車も自動車も一方通行、違法駐車をすれば、女性の交通警官がやって来て、即座にカードを切ります。郊外は道路中央の専用軌道を時速百キロで突っ走ります。主要停留所ではバスが連絡し一定時間内なら改めて切符を買う必要のないゾーン運賃制です。また郊外の停留所には広い無料駐車場があり、電車に乗って都心部へ“いらっしゃい”の態勢が整っていました。
▲路面電車、バス、自動車、歩行者が共存するアメリカ・ポートランド市(ポートランド市を紹介するホームページから拝借しました)
最近、LRTとかLRVという言葉がよく出てきます。前者は新しいシステムに沿って建設されたり、再構築される軌道系の交通機関のことで、後者はそれに使用される車両です。LRT(ライトレール)は、現在、軽量で小型の電車を使い、一時間当たり1万5千人前後の旅客輸送を確保する中量交通とされ、地下鉄とバスの中間を目指しています。路面、地下、高架のどこでも静かに走れ、中速、安全、快適なものでなければなりません。路面を走る時は、自動車が軌道内に入れないような処置も必要です。時には、バスと電車が停留所を共用することもあります。この電車優先軌道は、緊急自動車の走行路となることもあります。都心部が電車と歩行者のみのトランジットモールとなった町もたくさんあります。
総本家青信号特派員さま 乙訓のご老人さま
要は当局のヤル気の問題で、これは洋の東西を問わないと思います。
京都では交通局に市電を守る気概が全くなく、消えるべくして消えていったともいえます。また当時の交通局にはバスの方が運賃が高く取れる、などといったとんでもない心得違いがあったとも聞きました。もっとも特に京都という歴史的都市での路面交通上の問題があったのは事実ですが、当局がもっと熱意を持てばまだ一部でも存続した可能性は否定できなかったと思います。卒業前に旅行した鹿児島で市電に乗りましたが、運転席の後ろに「軌道敷内への車乗入れ禁止にご協力を」というチラシがぶら下げてありました。道路はというと京都の市電通りの優に1.5倍位はあり、初めは道路事情がそんなに切羽詰まったふうに見えなかったため、なぜこんなチラシが置かれているのか理解できませんでした。当時の各都市の公共交通事情に鑑みての先手を打つ行動ではなかったかと評価したいですね。京都では一応乗入れ禁止にしてそういう呼びかけもありましたが、ズルズルと一部解禁を繰り返して有名無実化してしまいました。また環境意識の醸成がもう少し早ければ市バスの排気ガスも問題にされたのでしょうが、都市経営の観点からも残念な経緯を辿ったのは惜しまれますね。