今どきの固定クロスシート

固定クロスシートといえば、113系や115系、キハ40系の直角シートが思い浮かぶだろう。その源流を辿れば戦前からのオハ35などの客車があり、今日、それらの客車は保存車や観光用に運行されているものだけになってしまったが、固定クロスシート車は今日なお、通勤電車から第3セクター鉄道のディーゼルカーまで多士済々、さまざまな種類のものが活躍している。その全てに乗ったわけではないし、紹介することは不可能であるが、現在運行されているもののうち、いくつかを車内に拘って紹介してみたい。(写真は大井川鉄道に残るオハ3522)

西武鉄道の4000系の車内。シートピッチは1640ミリあり、なかなかゆったりとしている。

東武鉄道6050系の車内。シートピッチは1525ミリだが、国鉄ルーツの固定クロスよりはふかふかしていると思う。

E231系や233系の車内。湘南新宿ラインなどJR東日本の中距離運行電車の端2両のセミクロスシート。シートピッチは1500ミリあるが、背ずりは硬質の合成樹脂か、その掛け心地は?それでも編成の殆どが、固めで小ぶりなロングシート車だから、それよりはマシだろ、ということなのだろう。

同じ4ドアセミクロスシートでもこちらは12系客車と同じく1580ミリあるので快適だったが、昨年の2020年に営業車は全てロングシート化改造されてしまった。つくばエクスプレスTX-2000系。

地方へ転じて、こちらはJR西日本のキハ121・126系。シートピッチは1600ミリありゆったりとしている。しかし鳥取ライナー運用では、片運転台のキハ126の妻面に貫通扉がないせいか、高速走行と相まってとにかく轟音を立てて走るように感じた。その点では、先代のキハ58系の方が、デッキがある分静かだったように記憶している。

JR東海のキハ11。今はステンレス鋼体の300番台しか残っていないのだが、車内はほぼ同じなのでご容赦を。シートピッチは1550ミリ。

えちぜん鉄道MC6101の車内。シートの厚みがかなりあり、シートピッチが狭い。数値は不明だが、後発のMC7000(元119系電車)の直角シートの方がだいぶゆったりとしていると言える。

この後は豪華仕様。JR西日本の700系レールスター編成の個室部分。これでも少しだがリクライニングする。普通車の窓割なので、それほど広大感はない。シートピッチ判る方がおられたらご教示を。

JR東日本の205系600番台のうち日光線観光用「いろは」の車内。

JR九州のSL人吉用客車50系700番台。オリジナルの50系客車のシートピッチは国鉄標準の1470ミリだったが、写真でお判りの通り、ゆったり座れるよう間隔が拡げられている。

最後にシートピッチ1470ミリのキハ47を。国鉄由来の直角シートは日常いつでもどこでも見られるものだったが、徐々に貴重なものになりつつある。赤いシートの写真はJR四国のものだが、キハ40系もかなり数を減らしてきた。JR東日本にはデッキ付きの寒冷地仕様500番台が在籍し、国鉄汽車旅の雰囲気を今に伝えていたが、この3月に男鹿線、五能線を最後に引退した。ここでは取り上げなかったが、日常的にあった豪華仕様の固定クロスシートとして、広大なシートピッチを誇るJR東日本253系電車やかつての寝台電車581・583系電車もあったが、既に引退している。

もっと以前のサロ85やオロ40といった二等車、近鉄2200、阪急710などもシートピッチ1800~1900ミリ級のゆったりとした固定クロスシート車だが、筆者には想像の世界である。現行車でも、JR西日本のキハ120やJR四国の1000型ディーゼルカー、相模鉄道9000系など固定クロスシートを備えた車両は他にも多くあり、本稿では一部の紹介しか出来なかったが、車内を見て頂くことで、緊急事態宣言解除後の鉄道旅行に思いを巡らすきっかけになれば幸いである。

今どきの固定クロスシート」への29件のフィードバック

  1. 固定シートに着目するとは面白いと思いました。すぐ、食いつきました。なかなか、どれもこれも立派な座り心地のいいシートですが、底抜けに座り心地がいいというか、怖いというか、そんなシートがありました。それは紀州鉄道のキハ600です。まあ、写真を見ていただいたらわかると思います。

    • どですかでん様
      コメントありがとうございます。大分交通から来た600型ですね。御坊からの短距離をゆっくり走るだけだったので問題なかったと思いますが、もう少し距離があればあのシートではさぞ疲れたと思います。

    • どですかでん様

      うーん、これはその昔、ローカル線乗りつぶしなどでよく乗った、10系気動車の「芯なしシ-ト」というか、それよりもウワテの座席ですね。満席になることはあるのかどうかわかりませんが、その場合はどんな具合になるのか、想像しただけでも確かに「怖い」といえるでしょう。

  2. 昔(80系あたり)の固定シートと言えば、写真に撮られているオハ35のように背中部分と座面とが直角で、緑か紺色のシートだったような気がしますが、最近は固定シートもいろいろあって、趣味の対象としても面白いですね。ところが最近は車両内部の写真はプライバシーの問題とかで、人が写らないようにと思うとなかなか難しくて、私も座席の写真をと探してみましたが、すぐには見当たりませんでした。

    • 大津の86様
      コメントありがとうございます。
      仰せの通り、今はプライバシーの意識が高まっており、鉄道雑誌ですら掲載写真中の乗客の顔にボカシが入って雰囲気が台無しです。話しが変わりますが、制服の通学生と鉄道をテーマに出してみたい写真群も有りますが、今や撮るのも難しくなり、発表することはもっと出来なくなりました。

  3. これはすばらしい企画ですね!
    いままでこんな目線で座席を見たことがありません。しかし、言われてみると確かにおもしろい!!
    でも、探してみましたが座席だけを撮った写真はほとんど見つかりませんでした。その視線がなかったからです。でも全くないかと言えば少しだけそれらしいモノがありましたので貼ります。
    オハ5115函ハコ←オロ4115

    • 米手作市様
      コメントありがとうございます。また垂涎ものの旧2等車の写真をご披露下さり恐れ入ります。戦前は、こうした車には腰辺りまで純白の布カバーがかけられ、今の時代とは異なる空気感の中、軍の将校等が乗っていたのだろうと想像します。それにしても格下げ後の旧ロに一度は乗ってみたかったです。

  4. 失礼!
    二枚とも格下げ車です。50、51と言っても「赤い電車まがいの客車」のことではありませんのでご注意ください。

    • さすが客車の鬼と恐れられた米手作市翁だけあって、格下げ二等車の座席まで画像を蓄えておられ恐れ入ります。スハフ505天ワカ←スロフ305は好物のWルーフで年季の入った車内を楽しませてもらいました。名著「日本の客車」を引っ張り出し復習させてもらいました。

  5. ブギウギ様
     良い企画ですね! これです!これです!この視点です。
    いろんなシートがありますね。座り心地もいろいろ。旅情を感じ、旅の想像が広がりますね。有り難や!
     確かに車内の写真撮影や発表がままならない時代なんですね。難儀ですね。
     米手様の格下げ車両を拝見しましたが、旧二等車はやっぱり違いますね。その昔、気動車の格下げ車両に遭遇し、乗車出来た喜びを思い出しました。

    • マルーン様
      コメント有難うございます。一度だけですが、九州でクハ455の600番台、サロ455かサロ165改造の先頭車に乗ったことがあります。椅子もグリーン車そのままでとても得をした気分になったことを思い出しました。

  6. ブギウギさんのコメントに『プライバシーの問題とかで、人が写らないようにと思うとなかなか難しくて』とありますが、私は気にしないで撮っています。プライバシーなど関係ない!私にはクレームなど絶対来ないのだ。
    オハ35車内(紀勢線にて)

    • 米手作市様
      お写真のように時間が経っていて特定個人をことさら強調したような写真でなければ時効?でいいかなと思います。流石に最近のものは少し躊躇しますが。

    • 米手作市さま
      モデルに無断で掲載とは怪しからんですね。出演料よこせとは申しませんが、せめて断って欲しかったですね。
      覆水盆に返らず、公表写真後から消せず、ですぞ!
      まああの時代だったからしゃ~ないか。

      • どなたですか?
        旅の途中に撮ったスナップです。
        この人々はいまはどうしているでしょうね?
        きっと記念になったと喜んでいると思いますよ!

  7. 題名が「今どきの固定クロスシート」なので「古典的固定クロスシート」から「今どきの固定クロスシート」へ。路面電車にもクロスシートが今までにもあったようでが、最近のLRTもクロスシートがよく見かけられむしろロングシートだけのLRTは少ないのかもしれません。富山の万葉線アイトラムに乗ったときに庄川の鉄橋を渡っている時に撮った写真です。シートを撮ったものではありませんが、どんなシートかわかると思います。

    • どですかでん様
      コメントありがとうございます。仰せの通り、昨今のLRTはむしろ固定の横椅子が主流かもしれません。別添は高雄軽軌の車内です。

    • K.H生様
      コメントありがとうございます。
      ニス塗りに板張り、白熱灯の車内。昔はこれが普通だったことでしょう。緊急事態が解けたらまた大井川にでも行ってみたくなりました。

      • 妻板にひっつけられた木製のスピーカーからは“ハイケンスのセレナーデ”が流れてきます。『長らくのご乗車お疲れ様でした。まもなく終着の・・・』

        • 「・・・・・。お降りの方は列車がよく止まるまでお待ちください。」
          ホームドアまでできる至れり尽くせりの昨今では信じられない車内アナウンスもありましたね。客車デッキの乗降扉を開けて手摺りに捉まり止まるのを待っていたものでした。

  8. ブギウギさん、K.H生さん
    もう止めようと思っているのに刺激するので最後にもう一枚。
    オハニ306天ワカの車内。これぞ「板張り」

    • これまたダブルルーフのスハ32系の荷物合造車。荷物室の様子も良く解ります。便所の入口前の座席は今なら「・・・ハラ」になりかねませんね。便所使用知らせ灯が設けられたのいつ頃でしょう。

    • 60系鋼体化客車です。
      シートピッチはスハ43の1470mmに比べて1355しかなく、高校時代の通学で日豊線の客車には、殆ど存在が無くなっていましたが、唯一オハユニ61が1両残っていて、夕方の下りに連結されていると、好んで乗ったものです。向かいの女子高校生グループと、子どものように、70km/h以上の高速運転時にジャンプするTR11の乗り心地に、膝が触れ合いキャッキャ言って遊んだことも思い出です。
      オハ35系のTR23、スハ43系の重厚な乗り心地のTR47で客車が弾むようなことはなく、イコライザー台車の高速運転は乗り心地以前のお粗末さを楽しめた時代でした。

  9. 「今どきのクロスシート」からは大いに脱線しているのを承知の上で、半世紀以上前の大夕張鉄道の客車(多分ナハフ1)の車内風景です。ダルマストーブの前は特等席。1969-2-27の撮影です。

  10. みなさま
    個々にフォロー出来なくなってきました。すみません。
    私もそろそろこれくらいにしておこうと思います。鉄道車両の外観写真を敢えて除き、車内に徹したところ、大きな反響を頂いたことに感謝します。ところで今日もすべて板張りの固定クロスは世界で今なお現役です。コロナ禍を乗り越えた後、再訪したいと思っています。皆様もきっとコロナ後、鉄道旅行再開への気持ちは同じ思いでおられることと存じます。別添はバンコクホワランポーン駅にて普通列車の車内です。

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