「特急三百哩」、導入部分を見てもらったあと、前半の鉄道シーンを見てもらいます。ある駅に鉄道電話が入って来ます。「何者かの悪戯で無人の機関車が線路を勝手に走り出した !」と言うもの。無人の機関車が走るのは、昔も今もアクション映画の常套ですが、なんと線路上には先行して下関行きの列車が走っています。下り勾配のため、重量のある旅客列車に、やがて暴走機関車が追突 !? さて、その結末は?▲レールの間にカメラを据えて、機関車が通過して行く撮影手法も、90年前に採り入れられていた。
▲「下関行き25列車」を、昭和5年の時刻表で調べると、なんと、東京発下関行きの普通列車として実在していて、京都は11:35発だった、▲カット割り、左に駅名標が見えるが、背景の山の形からして山科だろうか。
▲その暴走機関車がある駅を通過する。背後に工場の煙突、島式ホームに地下道があるが、本屋とは線路横断でも結ばれている。島式ホームに地下道は、西大路、向日町が該当する。▲つぎの駅ではホーム先頭に駅員が集まって、暴走機関車を阻止しようとするが‥。▲無情にも機関車は通過して行ってしまう。この駅は? カーブの具合、背景の風景からして、山崎駅に間違いない。▲本線を通過する暴走機関車(右)、待避線で待つ貨物列車の横を通り過ぎる。唖然と見送る機関士二人。この山崎の配線は、現在も変わっていない。
▲そのひとりが、主人公の機関士、森 茂。駅員から、貨物を牽く機関車で、暴走機関車を追い掛けてほしいと懇願される。▲意を決した機関士は、貨車を切り離し、単行で、前を行く暴走機関車を追い掛ける。19691のプレートがはっきり、9600が東海道線で走っていた。
▲発車する9600と、手を振って激励する駅員。手前には解放された貨車が留め置かれたまま。実はこれも自動連結器化した鉄道省の最新技術をさりげなく訴求。▲カット割り、追い掛ける9600、突然、山科の大カーブが出て来る。▲前を走る急行列車、蒸機はC51のように見える。煙突回りに何か付けている。煙の流れを良くするため、試験的に取り付けられた装置だろうか。そして、その急行に迫る暴走機関車(左)と、主人公が乗った蒸機(右)が追いかける。これも当時の最新設備、吊り下げ式の信号塔が大きく出ている。
▲本線を行く貨物列車の向こうに、暴走機関車(左)と、追い掛ける機関車(右手奥)が見える。場所は不明。▲車上撮影のカット、向こうに見える新設間もない築堤は、昭和3年開業の新京阪鉄道で間違いない。山崎~高槻で撮影された。
▲そして、主人公は、乗っていた機関車のデッキから、暴走機関車のテンダーに乗り移り、運転台に入ってブレーキ操作。危機一髪で、急行列車への追突は回避され、乗客から感謝攻め(右)、その機関士が暴走機関車から下りて来て、8900型8926号と分かる。
▲ (参考) 昭和5年 梅小路機関区の配置機関車(「梅小路90年史」より抜粋) 追い掛けた19691もちゃんと入っている。