2023年夏、台湾再起動(その4、南廻り線)

7月31日(月)
この日は、今回のハイライト、南廻り線の撮影である。南廻り線は、2020年の年末に電化開業しているので、列車運用に大きな変更があった線区である。目当ては、金崙-太麻里での撮影となるが、発車まで時間があるので、先ず西部幹線の新左営8時35分発の莒光号(急行)511次を新左営の隣の楠梓まで撮りに行く。腹が減っていて時間もあったのですぐに楠梓に行かず、新左営で降りて朝食のサンドイッチを食べ、ついでに明日8月1日の座席指定も取ることにした。あまり直前だと指定が取れない恐れがあるからだが、これがいけなかった。莒光号が発車するまで30分はあったのに先に北上する普通電車がないのである。いきなり楠梓での莒光号撮りは終わってしまった。新左営駅を出て撮影場所があるか探してみたが全く無駄であった。大都市高雄といえども時間帯によっては普通列車は1時間に2本あるかどうかなのを油断していた。どうも長編成のステンレス製の電車なので本数も多いと先入観を持ってしまう。きっちりと調べておかねばならないということだ。2021年に登場した最新鋭の通勤型電車EMU900型。10両固定で、最終的には52編成が運用に就くのだそう。韓国の現代ロテム社製、VVVF制御のステンレス車体。セミクロスシートの背ずりがEMU800や700よりも高くなり中長距離乗車でも快適。彰化


気を取り直して、高雄9時30分発の新自強371次で金崙へ向かう。南廻り線の自強号は、非電化のためディーゼル自強号の独壇場だったが、電化により最新鋭のEMU3000型が投入されている。EMU3000は、日立製の自強号(特急)用電車で、12両編成50本600両と優等列車の最大勢力となる。その代わりに釣り掛け式のEMU300、EMU1200、ディーゼルのDR2800、DR3000の引退、客車による莒光号大幅減便に繋がったのだが、何はともあれグレーのモノトーンの内装は新しく、車内も静かで乗り心地も申し分なく、気分もよくなる。

EMU3000型の車内

これまでの自強号と違うのは、商務車(グリーン車に相当)が編成中に1両用意されていることである。台湾で定期運行される自強号、莒光号は基本的にモノクラスであった。モノクラスといってもシートピッチ1160ミリ程度はある大きく倒れるリクライニングシート、フットレスト、EMU300と1200はじゅうたん敷きとほぼ旧国鉄のグリーン車に相当する仕様ですこぶる快適である。EMU3000の商務車のシートは、JR在来線のグリーン車や近鉄のデラックスシートのように2列+1列である。この一点だけで十分商務車の地位は揺るぎない。今回は、残念ながらTRパス利用なので普通車しか乗らなかった。商務車乗車は、次回以降の宿題にしておこうと思う。
南廻り線電化による最も大きな変化は、旧型客車による普快(鈍行列車)の消滅であろう。しかし普快は、雄獅旅游という旅行社のパッケージ企画商品「藍皮解憂號觀光列車」として復活した。枋寮‐台東間を普快として運行されていた時代は運賃104元だったが、観光列車では399元かかる。もっとも記念品、記念切符、飲み物、弁当、観光案内等が含まれての399元なので、そんなに高くはないのかもしれない。今年の2023年10月1日から2024年4月30日までの運行時刻はつぎの通りである。枋寮10:22発、加禄10:29着10:45発、内獅10:49発、枋山10:54発、枋野11:02着11:05発、中央11:09発、古莊11:24発、大武11:28発、瀧溪11:37発、金崙11:51着11:56発、太麻里12:10着13:00発、知本13:14着、13:15発、康樂13:24発、臺東13:30着
臺東14:45発、康樂14:51発、知本14:58着15:01発、太麻里15:14着15:15発、金崙15:29着16:33発、瀧溪16:47着16:48発、大武17:01発、古莊17:04発、中央17:19発、枋野17:22発、枋山17:30着17:45発、内獅17:51発、加禄17:55着17:58発、枋寮18:05着。

金崙には定刻11時1分に到着。酷暑の中、20分ほど歩いて金崙大橋の上から金崙溪を渡る列車を撮影する。台東行き新自強161次、新左営行きの区間快3018次を撮った後、本命の旧型客車が、ディーゼル機関車2両に客車4両を繋いで11時50分過ぎに現れた。

新自強号(特急)161次台東行きのEMU3000型、金崙大橋から

区間快3018次新左営行きのEMU900型、金崙大橋から

これが狙いの藍皮解憂號觀光列車の台東行き、金崙大橋から

この藍皮解憂號觀光列車は、つぎの太麻里で長時間停車するので、金崙12時42分発の新自強423次で、9分の乗車のうちに慌ただしくコンビニ弁当を食べて追いつく。太麻里の踏切まで出ると、大勢の観光客が順番待ちをして踏切バックにポーズを取って写真撮影に勤しんでいる。この踏切に興味がある訳でなく、非電化時代にはよく撮った踏切を越えたところがどうなっているか確認したかったのである。残念ながら車でないと行けないくらい山の上まで上がらないと撮影は難しいと思った。架線柱だけでなく立派な安全柵のようなものが張り巡らされており、足回りがほぼ隠れてしまう。この制約を突破するには、金崙大橋撮影のようにかなり上方から狙う場所でないと難しいことが判明した。

太麻里停車中の藍皮解憂號觀光列車

非電化時代の太麻里を知る者からすると、電化で大きく変わったと嘆息してしまう

太麻里の踏切

この安全柵では横からの撮影は難しいと言わざるをえない

太麻里郷で上から撮るとなると香蘭しかない。香蘭は、海バックで緑濃い木々の間を列車が走る南国らしい写真が撮れる場所である。香蘭へはバスで向かう。駅から国道へ降りたところ大王國中のバス停から4つで香蘭のバス停に着く。13時48分の定刻から少し遅れて小型のバスがやってきた。クーラーがガンガン効いていてすこぶる快適である。バス停から少し歩いたところで金崙を14時4分に出た台東行き莒光号727次を撮る。その後、本命の藍皮解憂號觀光列車の台東からの返しを撮るため10分ほど金崙を向いて移動する。撮影場所の真下でガサガサと音がするので道路工事かと思ったが、道路下にタイワンザルが3匹いてこちらを向いている。時々叫び声を出して睨みつけてくる、というかどう見ても非友好的な態度である。もし飛び掛かってきたらかなり手ごわいだろうが、高速道路のような高規格道路の欄干のはるか下なのでこちらも高みの見物である。

大王國中のバス停

香蘭から金崙方面を見た景色

莒光号727次台東行き、太麻里-金崙(香蘭)

香蘭の撮影場所直下にはタイワンザルが戦闘態勢?

嘉義行きの区間快3028次、樹林行きの新自強431次を撮った後、とっくに来る筈の藍皮解憂號觀光列車の返しが現れない。もう15時を過ぎていたが、後に時刻が変わっていたことが判明した。高雄で19時から晩御飯を食べる約束をしていたので、太麻里を15時56分に出る莒光708次に乗り遅れる訳にはいかない。痛恨の極みだが香蘭での旧型客車撮りをあきらめる。バスは太麻里方面なら15時33分発、金崙方面なら15時45分発がちょうどあるがバスが遅れた場合、大王國中のバス停から太麻里駅まで急な坂道を走る自信はなかった。太麻里方向と同じく金崙へ向かうバスも10分ほど遅れてやってきたが、旧道の金崙のバス停から駅までなら走っても大したことはない。何とか16時8分に出る莒光号に間に合った。しばらく懐かしい南廻り線の景色に見入っていたが、昼間の疲れか眠ってしまった。

区間快3028次嘉義行き、太麻里-金崙(香蘭)

新自強431次樹林行き、太麻里-金崙(香蘭)

その3

その5

 

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