読売新聞9月5日の学芸欄に「フイルムは残る」というコラムがあった。目下全盛を誇るデジタルも、遠からぬ将来再生できなくなる虞がある。記憶媒体の劣化や規格変更が理由である。アナログの録音テープ、8mm映画は完全に、VTRですら過去のものになている。しかしカラー映画を3色に分解し、白黒フィルムに記録すれば、「500年もつ」と富士フイルムが言っているそうな。
他のフイルムメーカーがいうのならともかく、事もあろうに富士とは。勿論引用原文が分らないから、軽率な批判はできないが、富士フイルムがヴィネガー・シンドロームで社会の膨大な文化を損ね、しかもメーカー自体は謝るどころか、一言の警告すら発せず、そ知らぬ顔の半兵衛を決め込み続け何十年。その富士が「500年もつ」とは、一体どんな顔でいっているのだろうか。厚顔無恥とはこういうものであろう。
恐らく富士フイルムは、かような自社の古い過去の(と自分では思っているのだろうが、富士ヴィネガー・シンドロームは現在でも脈々として進行中である)恥部など、職員に一切教育していないのであろう。日本を代表する企業の一員で、しかも現在細々ではあってもでも銀塩フイルムを造り続けている希少なメーカーだが、その富士フイルムの職員に、「500年もつ」ためには、一体どこのフイルムに記録したらいいのか聞きたい。へー、そんなことがあったんですか。でも今のウチのフイルムなら大丈夫ですよ、とのたまうのか。恐らく読売の記者も、そんな経緯を全く知らないでこのコラムを執筆したに違いなかろうが。