またまた山科

また山科でっかいな、ええ加減にしなはらんかいな、との「うんざり」声が少なからず?聞こえそうだが、今回はひと味違った山科である、と最初に言い訳しておこう。東海道本線は1956年11月19日全線電化が成り、当然に蒸機の姿が消えた。しばらくは特急やらモハ80系、貨物のEH10なども珍しかったが、そのうち見飽き?て大築堤にも上らなくなった。

しかし待てよ、ここに住んでいる以上、誰にも撮れない写真が撮れないか。折角カメラのレンズがf2なのだから、夕景あるいは未明の写真が撮ってみようじゃないの、と考えたのである。

今のデジタルカメラなら、感度がいくらでも挙げられ、多少画面は荒れたとしても知れているだけでなく、感度を上げることによって画面コントラストが上がらない。既に京都駅未明に足を運ばれ、ご苦労なさった写真も紹介されている。

アナログ写真では、当時ネオパンSSSが感度200で、現像により800ぐらい。無理すれば1600までは上げられても、粒子の荒れとコントラストのきつさが不可避。つまり列車写真では空が完全に飛んでしまうのである。それを感度はさほど上げずに、普段滅多に使うことのない開放絞り=f2で撮ってみようという訳だ。

以上が前置きで、早速やってみた。先ずは夕刻ヘッドライト点燈後を狙う。焦点深度が浅いし、シャッター速度もせいぜい1/125ぐらい、貨物なら1/60でもいけるか。あんまり寄れないのが残念だが、先ずは撮ってみるしかない。



やっては見たが、いまひとつ面白くない。それは空に雲がないからと分り、そんなら雲がある夕刻に、と次なる写真を。

うん、これなら少しはいけるワイと機嫌をよくした。恐らく山科で下り特急「はと」を撮った奴なんかおらんじゃろ(さすがの佐竹先輩や、高橋弘氏でも)と、山科在住の「特権」をフルに生かすことになる。蛇足ながら下り「はと」京都着は19時22分だから、山科の大築堤上なら19時15分ぐらいか。当然夏至の候に狙うが、運よく雲があるとは限らない。

まあこれなんか、行燈があるから特急と分るが、これが無かったらいったい何を撮ったの、と言われよう。序ながらアナログ写真だと、ハイライト部分がきつすぎて、「はと」の文字は焼き込まないと出てこない。そうすると行燈のところだけ黒が濃くなってしまう。

これは左が下り「はと」、右は上り準急「比叡」である。
で、大分後になるが未明を狙った。上り特急「さくら」の京都発は4時29分で、この場所なら4時40分少し前ぐらいか。この時も空に雲がなく、残念!
最後にいちびり過ぎ!と一喝を喰らいそうだが、フラッシュ撮影を試みた。当時ストロボなどはなく、「閃光電球」と書くのがピタリの、フラッシュバルブである。レンズシャッターならどんな高速度でも全開する瞬間があり、その時にフラッシュをたき込めば、ほぼ発光全光量をフイルム面に拾えるが、フォーカルプレーンシャッタだと、シャッター速度にあわせスリットの幅を狭め、フイルム面をそのスリットが横に動いて露光する。従ってシャッター幕がフイルム面を横切るに要する全時間、発光が持続する必要があり、フラッシュバルブがかなりの時間同じ光量で燃焼し続けねばならない。カメラのシャッターに合わせ、フラッシュバルブにF、FPと種類があったのである。因みにストロボでも原理は同じだから、レンズシャッターならいかに早くとも全速度に同調可能だが、フォーカルプレーンシャッターでは、必ず全開した瞬間に焚き込まねばならないから、速度に制限がある。

これは下り特急「はと」をフラッシュ撮影したものである。先にフラッシュ講釈を延々と垂れたが、ニコンS2の場合、技術者の道楽としか言えない(恐らく活用した人も少ない)機能があり、どんな種類のフラッシュバルブでも同調する、特別のダイヤルがある。これを使って、光量が多く、値段も安いF級バルブを使ったのである。恐らく展望車のお客さんは、一瞬の閃光に驚きはしただろうが、すぐ東山隧道に入って、何が何だか分からなかっただろう。

なお現在ならこんな近距離でフラッシュなんぞを焚けば、当然問題になって非難されるだろうが、半世紀以上前のおおらかな時代だから、時効としてご寛容ありたい。
なおこれらのフイルムは、かの憎っくきネオパン・ヴィネガー・シンドロームで見る気さえ起らない廃物と化している。偶々畏敬する友人から写真を頼まれ、それを探すうちにこれらの、自分でもすっかり忘れていたキャビネプリントがまとまって出てきたのである。それをデジタル修正し、今回ご高覧に供した次第。実は上り特急「平和」(京都発4時29分)も撮っていたのだが、プリントが見つからない。
最後に。これで2~3年前蒸機列車を撮っていたら、と心底悔やまれる。今では暗くなって、あるいは未明に走行する蒸機列車なんぞ、日本にはない。

 

1 thought on “またまた山科

  1. さすがは湯口先輩!よく轢かれなかったものですね。
    私も夕方の山科築堤で撮ったことがありましたが、さすがにフラッシュは使ったことはありません。
    珍しい、と言うより想像外の写真でした。

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