少し前になりますが、7月9日、滋賀県高島市の藤樹の里文化芸術会館で行われた朗読劇「江若鉄道の生みの親 安原仁兵衛物語」に行ってきましたのでレポートします。これは、鉄道が無く不便な生活を強いられてきた湖西地方の悲願を達成するために、鉄道敷設に生涯を捧げた安原仁兵衛の生涯を語る朗読劇です。たまたまチラシに私の写真を使っていただいた縁で、招待券をいただき、日曜日の午後、湖西線に乗って安曇川まで行きました。同館は、以前にも江若鉄道展があり、クローバー会会員とともに観覧に行った場所でもありました。
安原仁兵衛は、明治7年、高島郡の呉服商の家に生まれ、向学の心を持って東京で法律を学び、帰郷後は、郡議、村長、県議と務め、最後は国会議員となります。鉄道の無かった高島郡の現状を嘆き、沿線の住民にも出資を依頼し、江若鉄道を創立させて昭和6年に浜大津~近江今津の開業を見ます。しかし全通8ヵ月後、安原は雄琴駅で列車に接触し、不慮の死を遂げます。
朗読劇は、安原仁兵衛57年の生涯を朗読劇団員によって、活き活きと語られました。実のところ、江若鉄道のことは知っていても、創業者のことについては、ほとんど知識はありませんでしたが、お陰で、安原の人物像をよく理解することができました。▲“撮影・録音歓迎”の朗読劇の様子、背後の写真にも使ってもらって感激した
朗読劇を推進したのは、みずからの朗読劇団を主宰する森本さん、地元でも理解度は低く、郷土の恩人を顕彰するために心血を注がれたそうです。安原の調査を調べるうち、江若交通の倉庫から、建設中の写真2点(白髭神社前、木戸川トンネルの工事現場)が新たに発見され、劇中で紹介されました。
会場では、仲介していただいた大津市歴博のKさん、江若OBのMさん、江若大好きのMさんらとご一緒になり、久しぶりの旧交を暖める場ともなりました。江若鉄道は、廃止から48年目を迎え、そして、大正8年に会社創立総会が開かれてから再来年で100年を迎えることになります。
会場はほぼ満員、年齢層は高そうに見えますが、江若鉄道に原体験を持つ層は、きわめて少なそうに見受けられました。江若の存在が忘れ去られるほどの年月が経過したことを改めて痛感しました。帰途、安曇川駅前にある安原の銅像に立ち、顕彰碑をもう一度熟読しました。
総本家青信号特派員様
安曇川 藤樹の里での江若展は平成27年9月でしたから、もう2年が経とうとしています。浜大津スカイプラザに始まり、公会堂、歴博、坂本ケーブル、安曇川そして最後はびわ湖大津館と何度もイベントに参画し、その間に出版、模型発売もありました。その結局Kさん、Mさんなど多くの人々との出会いが生まれ、その中心にあったのが江若でした。廃止直前にバタバタと撮影しただけの江若ではありましたが、半世紀を経て今なお輝きを放っている不思議な存在です。しかし安原仁兵衛や江若誕生に至る歴史は不勉強でした。あのバンザイで見送った最終列車の写真をバックに朗読劇が演じられるとは信じられない思いで感慨深く拝見しました。うれしいレポートありがとうございました。
西村雅幸さま
阪急や東急など、大手私鉄になると、創業者の立志伝はよく知られていますが、地方の鉄道となると、歴史は埋もれたままになっていること、改めて思いました。朗読劇を主宰された森本さんも、郷土の発展に尽くした江若創業者の思いを風化させてはならない一念で、今回の発表になったそうです。一過性に終わらず、広く江若の果たした功績を語り継ぐ機会を、われわれも微力ながら継続して行きたいと改めて思いました。