鉄鈍爺さんの「【デゴイチ】さようなら運転」の投稿でコメントしたのですが、その時に持って行ったTRIX製の小型蒸気機関車が何かよくわかりませんと書きました。何かよくわからず動かしていたのですが、やはり気になります。そして、動かしたのは1994年に購入してから2回目です。最初は2012年の「デゴイチ」での運転会でした。今回も最初は少し押しましたが、その後は快調に2周しました。
さてこの機関車はいったいどのような機関車なのでしょうか。
手がかりとなるのはドイツ語で書かれた一枚の説明書だけです。
全くわかりません。しかし、「TRIX HO」と書かれてある下の3行が何か手がかりがありそうです。その部分を拡大したのが左の写真です。まず、”Bayer”を調べてみるとバヴァリアということだそうです。ドイツ語名ではバイエルンとなります。バヴァリアはバイエルンの英語名だと初めて知りました。ドイツ語名の方が日本では一般的に知られていたのです。これに関係する鉄道を調べてみると、”バイエルン邦有鉄道”というのが出てきました。さらに調べてみると”ガラスの小箱”と愛称がつけられた支線用の機関車とわかったのですが、どうも調べていくにつれて”バイエルン邦有鉄道”の紋章と模型に書かれてある紋章とは違うのです。
この機関車の側面です。真ん中に紋章があります。それを拡大しますとこのようになります。
この紋章を調べなければなりません。説明書にあった三行のいちばん下には”Preuß”とあります。これはプロイセンです。さらに調べてみると”プロイセン邦有鉄道”がありました。この鉄道の紋章は上の写真と同じです。プロイセン邦有鉄道の機関車だったのです。調べていくなかで説明書の1行目の”DR”は旧東ドイツのドイツ国営鉄道ということがわかりました。
この機関車を調べる方法としてはネットで検索することしかありませんでした。検索した内容によるとプロイセン邦有鉄道T2型蒸気機関車だそうです。これはクラウス社が製造納入したバイエルン邦有鉄道PtL2/2型蒸気機関車と同じものです。この機関車は支線用で、特徴としてワンマン運転ができるように半自動重力式給炭装置が装備されています。模型になっているのは1908年及び1911年モデルということもわかりました。最初の1905年モデルは動力機構が台枠の内側にありました。当然メンテナンスが大変です。それで改良されて模型となっている1908年モデルができたということです。1908年というと日本では明治41年です。ところで半自動重力式給炭装置がどんなものか気になります。自動給炭装置というとスクリュー式で大型蒸気機関車に装備されているのが知られています。日本ではC62などが自動給炭装置が装備されていました。ところでこの機関車は小型機関車です。どのようなものだったのでしょうか。この半自動重力式給炭装置についてはドイツで調べればわかるかもしれませんが、日本ではどうしたらわかるのでしょうか。あとは模型から推察するしかありません。たぶん半自動重力式給炭装置の部分だと思うのが次の写真です。
文字が書かれてあるホッパーのような部分が半自動重力式給炭装置だと思います。
石炭を上にあるホッパーに入れて、ダンパを開けてバラバラと火室に入れる構造ではないかと思います。ホッパー排出口のところでブリッジを起こして石炭が流れ落ちないのではないかと思うのですが、走行中の振動でうまく流れ落ちるのではないでしょうか。模型をみて構造を推察したのですが、なかなかよく考えたものだと思います。さすがドイツ人です。ところで、水タンクはどこなのでしょうか。ボイラーの下にあるそうです。クラウスは台枠の間にある空間に水タンクを設置するクラウスシステム(ウエルタンク)を考案していたのです。この機関車にも適用したのだと思います。それでは石炭と水はどのくらい詰めたのでしょうか。それは模型に書かれていました。上の写真に写っている白い文字のところです。
2.0 cbm WASSER 0.6t KOHLE
と書かれています。WASSERはドイツ語で水です。そしてKOHLEは石炭です。ところでcbmはどのような単位でしょうか。これはcubic meter(キュービック メーター)で1立方メーターのことです。そうするとこの機関車は2㎥(重量で2t)の水がタンクにためられるということです。石炭は0.6tです。ちなみによく似た大きさのB20蒸気機関車は水2.5㎥、石炭0.9tです。また、馬力はB20が299PSで、プロイセン邦有鉄道T2型蒸気機関車は210PSであったということです。まあ、B20クラスの機関車であったということなのでしょうか。
この機関車が牽引する列車はどのようなものであったのでしょうか。想像するのに二軸客車が多くても4両ぐらいの列車なのでしょうか。それが似合うような機関車です。