越美北線九頭竜湖で夕景を撮る
やっと普段どおりの生活が戻り、趣味活動も、ほとんど制約なく外で活動ができるようになりましたね。たいへん喜ばしいことで、巷では “Go To”の文字や、鉄道事業者からも“半額”などの刺激的な惹句が躍りますが、私はどうしても気持ちが付いていきません。カネ・ヒマを使って遠方へ行くよりも、もっと足許に大事なものがあるのではないかと、自粛以前から思いを持っていましたが、さらにその思いを強く持つようになりました。
最初の活動再開は歩いて行ける範囲から、次にワンコインで行けるところまで、隣接する府県まで伸ばし、最近では、日帰りで行けるところまで行くようになりました。そんなとき、頼りになるのは、半額の新幹線ではなく、やはり18きっぷです。乗車時間が長くなるぶん、当然撮影には制約が加わりますが、かえって、それが自分の齢に似つかわしい行動様式に映ります。何も考えず、一人でボーッと列車のシートに身を委ねる時間こそ、何にも代えがたい貴重な時間となりました。
以前にも書きましたが、最近の撮影スタイルは、長時間ネバってガツガツ撮るのではなく、あるテーマを持って短時間だけ撮る、撮り直しができない緊張感が感性を磨いてくれるようにも思います。エラそうなことを書きましたが、要は、日没後の10分間程度あらわれるブルーモーメントの時間帯に、列車・車両を撮ることです。もちろん、その時間帯に対象がないことには撮れませんから、月日、場所が限定されます。それを見つけ出す楽しみもあるのです。そんな思いを抱いて、越美北線731Dの客となりました。この列車が終点の九頭竜湖に着く18時28分から折返しの18時36分発までの8分間に、ブルーモーメントの時間帯と合致するのが9月上旬です。
▲列車は、陰影を描く山肌に沿って、ひたすら上がって行く。
▲美山で732Dと交換、キハ120は、以前いろいろなカラーリングがあったが、最近は越前大野を観光PRする、共通の塗色に統一されている。
▲キハ120の後部に陣取って、明から暗へ、めまぐるしく変わる光景を写し続けた。色調調整はいっさい無しで、明暗の調整だけで、その変化を楽しめるのも、デジカメならでは。▲柿ヶ島に到着の直前に九頭竜川を渡る。山の端に日が沈もうとしていた。ブルーモーメントが始まるまで、あと15分、期待に胸が高まる。▲18時26分、九頭竜湖に到着、下車客は全員18きっぷ所持者は当然として、乗り鉄ではなく、観光客風の客が数人いたのには驚いた。停車時間が8分しかないので、すぐさま駅の裏側へ走る。▲駅の終端部から、列車を狙う。ウーン、予想ではもっと空が落ちて暗いシーンを思い描いていたのだが、天候や周囲の地形に影響されて、適切な時間帯は一定ではないようだ。
▲車止めを入れて終着駅らしさを出してみた。意外に明るいお蔭で、ASA3200で1/10Sで撮れた。ASA感度を上げずに撮影できるのは、センサーサイズの小さなミラーレスには、大きなアドバンテージとなった。
▲《オマケの一枚》帰りの車中で何気にスマホの歩数計を見ると、きれいに「12345」の数字が並んでいてビックリ、思わずカメラで写した。こんな些細なことに喜びを見いだすのも、年寄りの証拠だろうが、あと一歩だけでも足を動かしていたら、達成できなかった貴重な記録だった。
九頭竜湖から、現・長良川鉄道北濃までの間は、もともと越美線として計画のところ、着工されること無く終わっています。この間は、直線で約15km、道路では約20kmあります。決して歩けないことはないのですが、現実的ではなく、非クルマ旅では不可能と思っていました。ところが、両側に走っている地域の町営バスを使うと、その間、徒歩数kmで抜けられるそうです。バスの運転期間・時間帯に制約があり、ハードルは高いのですが、ちょっとムラッと来ました。
もう何年前になりますか、車で松本からの帰りに福井の友人を訪ねるため、北濃から峠を越えて九頭竜湖に出ました。始めて見る九頭竜湖駅は丸太で作った山小屋風、道の駅と併設でした。