清水市内線を偲ぶ  ~路面電車あれこれ噺 ③~

先ごろのクローバー会行事「岳南電車・静岡鉄道を訪ねる」は、首都圏だけでなく、東海、関西、四国からの参加者も交えて、にぎやかに楽しく、久しぶりに、みんな揃って撮影する機会となりました。清水港にある魚市場で、大盛り海鮮定食を食べたあと、清水港線の廃線跡を通り、静岡鉄道の新清水駅に向かっている途中でした。静岡生まれのTさんと、静岡鉄道清水市内線の話になって、撮影済みと言うと、“エ~ッ”と驚愕の表情を見せました。そうか、同線が豪雨で不通になったのが昭和49(1974)年7月で、来年が50年になります。復旧されることなく、翌年に廃止となっていて、たしかに30歳代にとっては、生まれる遥か前の話ですから、驚きの表情も無理はないところです。実は清水市内線は、デジ青の2016年9月にも記していますが、今回、定点対比もしましたので、再度、要点のみ記して行きます。

東海道線を越えて、新清水駅前に到着する静岡鉄道清水市内線の電車(昭和49年)

50年後の今昔対比。架線、架線柱がなくなり、空がよく見える。JR清水駅周辺の高層住宅が目立つ。

清水市内線(地図右、「鉄道旅行地図帳」転載)。いまは合併で静岡市になったが、かつて清水市にも路面電車が走っていた。三保の松原に近い港橋から、静岡鉄道新清水駅前、国鉄清水駅前を経て、東海道本線と並行して横砂までの4.6キロで、京都なら、御所一周分より少し長いだけの路線だった。港橋~西久保2.6キロは国道1号上の複線併用軌道、西久保~横砂2.0キロは単線の専用軌道。運転系統は港橋~横砂の全区間系統、複線区間の港橋~西久保系統の2系統があり、いずれもラッシュ時10分、閑散時15分だった。
上掲写真とは反対、新清水駅前の港橋方面を見る。横砂行きに乗客が乗り込む。ここから終点まで乗っても3キロほどで、歩いてでも行けるような距離に乗客がいたのには驚かされる。50年後の今昔対比② かつては商店も並んで、賑わいを見せていたが、今はすっかり静かな街並みになってしまった。静岡在住のIさんに聞くと、静岡市との合併後、とみに旧清水市の衰退が目立つと言う。

 

 

 

 

 

 

新清水駅前で降りる乗客たち、手前の線路は、本線と接続する連絡線、市内線は鉄道線規格なので、本線との行き来ができた。検査や夜間留置で、本線の長沼にある車庫・工場まで日常的に回送が走っていた。鈴木島~袖師の庵原川鉄橋を行く。昭和49年7月の静岡県下の集中豪雨で、この鉄橋が流出、不通となる。復旧されることなく昭和50年3月全線が廃止となった。静岡県下では最後の路面電車だった。

小さな終点、横砂

島式ホーム一本の典型的なローカル私鉄の終端駅、左は折り返し電車、右の一線は、電車1両分の木造庫へと伸びている。緩くカーブした向こうから電車がやって来た。狭いホームでは、子どもが遊び、折り返し電車を待つ乗客が待っている。折り返しの発車まで数分、ホームで待っていた乗客は車内に乗り込んだが、子ども連れの家族は、まだホームで話に夢中、ベンチでは運転士、車掌が談笑中。

▲▲やがて発車、子どもたちは手を振って、別れを惜しんでいた。15分に一回、当たり前のように繰り返されていた、何の変哲もない光景だった。

小さな終点の夜が更けて行く。

 

 清水市内線を偲ぶ  ~路面電車あれこれ噺 ③~」への6件のフィードバック

  1. 総本家青信号特派員様
    東海道本線は何度も往復していますが、静岡鉄道清水市内線の写真を拝見して私も「エー」と驚きました。その存在は知っておりましたが、路面電車にあまり興味なかったのかそれでも駅前の路面電車は総ざらえしたと思っていましたが撮り損なっています。総本家さんの写真は終点の雰囲気など相変わらず見事なものですが、特に今昔対比はよかったです。これなら、横浜市電でもできるのかなとも思いますが腰が重くなかなか着手に至りません。

    • 準特急さま
      夕方、滞在わずか3時間だけの撮影でしたが、逆に味わいのある写真が撮れたかと思います。静岡にあった軽便線は、全く撮っておらず、せめて最後の路面電車だけでも撮ろうと出掛けたものと思います。この一年後に不通・廃止になり、これが最初で最後になりました。
      デジ青を検索していますと、清水港線へ準特急さんは行かれているのですね。私は結局、清水港線は行けず仕舞いでした。写真は、先ごろ、みんなで廃線跡にある地図で確認しているところです。

  2. 清水市内線は、1両ずつスタイルが異なり、それが面白くて何度か訪れました。
    モハ57は、廃止された静岡市内線からの転属車です。昭和45年3月14日、新清水です。

  3. 同じく、昭和45年3月14日、新清水、連結車に改造された、モハ59+モハ58です。

  4. 同じく、モハ65です。保存されていたのですが、荒廃したのでJR貨物で修復されました。

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