市電が走った街 京都を歩く 伏見・稲荷線③

京都駅八条口

高倉陸橋を渡った市電は、東海道・奈良線と新幹線に挟まれて西へ下り、すぐ90度曲がって、新幹線を潜って、竹田街道と合流し、「京都駅八条口」に到着します。このルートは、本欄でも米手さんから質問があったように、もともとは斜めに向かう線形でしたが、昭和39年開業の東海道新幹線の建設工事に伴い、道路とともに移設されて、現在でも見られるルートとなっています。

「京都駅八条口」には、東側に、元の京都電灯東九条発電所、京都市水道局、西側には、市バスの八条車庫がありました。車庫の一部には、市電乗務員の詰所、引込線も一本あって、乗務員の交代が行なわれ、車両も留置されていて、伏見・稲荷線の運輸上の要となっていたところでした。京都駅に八条口という名称が定着したのは、新幹線の開業後ですが、停留所名も、昭和39年に改称されています。以前は京都駅南口であり、開業時は、八条新道の名称でした。

“花電車”の700形が京都駅八条口に停車中、ここで乗務員の交代もあって、しばらく停車する。背後には京都タワーが見えて、京都駅に停車する0系新幹線の鼻もチラリと見える(以下、昭和45年3月)。

【京都駅八条口 定点対比① 昭和・平成・令和】

市電時代の「京都駅八条口」停留所。と言っても、写真のように、安全地帯も無く白線を引いただけ。京都市水道局の庁舎が東側にあった(Mさん撮影)。 ▲▲平成時代の同所、手前にホテルのエル・イン京都、向こうは新築された水道局庁舎。 ▲▲▲令和の時代も大きくは変わらないが、ホテルは名称変更してエルシエント京都に。水道局は上下水道局となり、改修工事で幕が掛かっている。

停留所前にあった京都市水道局の庁舎の、建築年代は不詳だが、窓部のアーチなど、なかなか味わい深い建物だった。高倉陸橋を下る503号。まもなく直角に曲がって新幹線を潜る。新幹線京都駅には0系が停車中。竹田街道を上がってきた市電は、新幹線を潜って高倉陸橋に入り、京都駅方面へ向かう(Mさん撮影)。

【京都駅八条口 定点対比②】

新幹線を潜る。背後は市バスの八条車庫。元はと言えば、京電の車庫、発電所のあったところ。 ▲▲現在の同地点、車庫の跡地にはホテル京阪京都グランデ、京都アバンティ京都が建った。

【京都駅八条口 定点対比③】

伏見線の市電と0新幹線が出会う。 ▲▲平成に移ると、新幹線も300系「のぞみ」に。

 

京都駅八条口には、写真手前のように引込線が分岐していて、特発用の車両の待機や、九条車庫へ回送される車両が一時的に留置されていた。

その引込線の終端付近、市バス八条車庫のなかに線路が伸びていて、2両の車両が入線できた。左手の建屋は、乗務員の詰所。

市電廃止後も、市バス八条車庫内には線路が残っていた。車庫はこの年に廃止され京都アバンティなどが建築される(昭和54年)。 ▲▲現在の同所付近。 

市電廃止から9年後の付近(昭和54年) 左から、市バス八条車庫、竹田街道の南方向、まだ残っていた京都電灯の火力発電所のレンガ建築、跡地は関西電力系のホテル、エル・イン京都になった。京都タワーから見た高倉陸橋、八条口付近。東海道新幹線建設以前の高倉陸橋の経路を黄点線、開業時の京電伏見線の経路を赤点線で描いている。

 

 市電が走った街 京都を歩く 伏見・稲荷線③」への2件のフィードバック

  1. 京都駅の八条口へは殆ど行ったことがなく、竹田街道は全く知りませんでした。水道局の庁舎や煉瓦造りの京都電燈の火力発電所があったことも、今回初めて知りました。また、以前のデジ青に出ていた「八条口の引き込み線」が、市バス八条車庫の前身だったことも分かりました。次から次に新たな知識が増え、今更ながら己の不勉強を痛感します。もっとも、市電の歴史に興味を持ったのが最近ですので、仕方のないことかもしれません。
    どの写真も周囲の風景が写し込まれ、当時の雰囲気が味わえます。新幹線の高架下から南を撮影された、市電の横に横断中の二人の女性が写っている写真ですが、人物が入るとグッと雰囲気が変わるものですねえ。
    ところで、八条車庫の写真の左手の、三階建てのように見える建物ですが、京電の発電所でしょうか?
    最後の俯瞰写真を見ると、高倉陸橋から八条口へのコースや、東洞院通、駅前の様子が一目でわかります。京都タワーからの撮影でしょうか?

    • 紫の1863さま
      返事が遅くなり、申し訳ありません。実を言いますと、今回、連載をはじめて、私も初めて知るようなことや、忘れていたことが出てきました。いつも復習は大事なことだと思います。八条車庫も、昭和初期の地図では、「九条車庫」と記されていました。八条にあるのに九条とは不思議です。ご指摘の八条車庫の左の建屋ですが、それほど古いものではなく、京電時代の発電所ではないと思いますが、向かいにあった、京都電灯の発電所とよく似ています。車庫にしては、高い建物で、内部が何なのかは不明です。最後の俯瞰写真は、京都タワーからですが、撮影主は先輩のMさんです。道路の関係など俯瞰ならではよく理解できます。

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