アメリカ鉄道のたび(その5)デュランゴシルバートン鉄道

デュランゴシルバートン鉄道はアニマス川沿いの渓谷を走る景色が人気で標高1984mのデュランゴから標高2836mのシルバートンまでの72.6kmの区間を3時間半かけて走ります。デュランゴはデンバーと同じコロラド州にあり、デンバー、フェニックス、ダラスからの飛行機便があって、比較的行きやすい場所にあります。このため、この鉄道の乗車をコースに入れている日本の一般ツアーもあり、恐らく日本でも一番知られた保存観光鉄道ではないでしょうか。この鉄道はシルバートンで発見された銀鉱のためのもので、1882年にデンバーまでの鉄道が開通しました。その後、鉱山の閉鎖とともに鉄道も一時期廃止されましたが、1940年代に銀に変わってウラン鉱石の精錬のために再開され、1960年代には国の歴史遺産に登録されたこともあって、観光鉄道に姿を変えて運行が続けられました。ある時期にはハリウッドがこの鉄道に目をつけ、いくつかの映画がここを舞台に作られました。「80日間世界一周」の映画も一部のシーンがここで撮られたそうです。

当初はデュランゴから100マイル程離れたチャマにあるカンバース&トルテック観光鉄道の訪問も予定していたので、デンバーからデュランゴに飛行機で飛び、空港でレンタカーを借りて、翌日10時にチャマを発車する列車を撮るために、到着した日は予め中間点のパゴサスプリングまで移動してそこで泊まることにしていました。車の運転はあまり気にしていなかったのですが、実際走らせてみると、一人でナビして運転するのはつらいものがあり、加えて時差ぼけが直らず、明け方まで寝られない状態が続いていたので、これで300kmも運転は危ないと考え、チャマの訪問は断念、翌日そのままデュランゴに戻ることにしました。デュランゴは人口13000人の町、さすがアメリカ、こんな町でも町を貫く道路は4車線の立派なものです。のろのろ車を走らせ、とりあえずホテルに入り、一服した後、駅の下見と町近くのロケハンに出かけました。

川を渡る2番列車(翌日のデュランゴ発の列車)
駅を出た列車は町外れで川を渡るとしばらくの間川に平行して走ります。朝にシルバートンに向かった3本の列車が夕方戻ってくるのを撮影することができました。

列車の走る少し前線路の点検のために走るモーターカー

デュランゴ郊外で川沿いをデュランゴに向かう列車

翌朝の発車は8:30、早めに駅に行くともう駐車場にはたくさんの車が止まっています。8:00に乗車開始、前から順に車両を見ていきました。

デュランゴで発車を待つ1番列車

車両は運賃が違う4つのクラスに分かれています。一番高いのがプレジデンシャルクラスで$179、展望車でなぜか21歳以上の乗車制限があります。次がファーストクラスの$169Alamosa Parlor Carと言う展望車とSilver Vistaと言うガラス張りの展望車があります。

ファーストクラスの車両(後ろがAlamosa Parlor Car前がSilver Vista

次のデラックスクラスが$129でこれも2種類あり、一番安いスタンダードクラスが$83で、私の乗ったOpen Air Gondolaと座席が並んでいるコーチの2種類になります。

Open Air Gondola

Open Air Gondolaとコーチの車内

これらの席はすべて座席指定で人気のため、私が予約した3月時点でもかなりの席がふさがっていました。予約はインターネットからでき、席まで予め決めることができます。撮影のこともありOpen Air Gondolaに乗ることは決めていましたが、この座席は進行方向ではなくすべて外側に向かって座席がベンチのように並んでいるのでさてどこが良いのかわかりません。地図でみるとデュランゴからなら進行方向右側の席が良いのはわかるのですが、それが配置図のどちらになるのかはわかりません。よくみると、どのクラスも画面の下側の席が先に埋まってきているようです。たぶんこちらが右側だと見当をつけ、進行方向のできるだけ前を選ぼうと見ると、NO1の席が空いていました。乗車してみると進行方向右で、車両の一番前なので邪魔になるものなくて広く、まさに一番良い席でした。走り出すと反対側から景色の良い側に移動してこないかと心配されるかもしれませんが、車内には席の移動は禁止との掲示があり、車内の放送でも案内があるので皆それを守っていてゆっくりと写真を撮ることができました。

町を離れた列車はしばらくの間道路に沿って走ります。沿道にはホテル、グライダーのクラブなどがあり、このあたりは西部の平原のような感じの風景です。ハーモサ駅を過ぎて、国道550線を警笛を鳴らしながら平面でクロスすると、線路は次第に登り始めます。もう一度国道550線と今度は立体交差で越えるとシャロナ湖が右手に見え、ロックウッド駅に到着します。ここまで約1時間、駅を出て5分あまり、いきなり一番の絶景ポイントであるロックウッドカットを通ります。

ロックウッドカットを走る列車

線路は絶壁の中腹を削ったようなところを走り、右側にははるか下にアニマス川の流れているのが見えます。

断崖の中腹を走る列車

しばらく渓谷を走った後、鉄橋を渡って、座っていた右側は山の斜面しか見えなくなりますが、渓谷はこのあたりで終わり、このあとは線路の横を穏やかに川は流れて行きます。

川沿いを走る列車

この後川に沿って走りながら、3回川を渡り、川が見える方向が左右の座席で各々2回ずつになりますが、景色の良いのは圧倒的に進行方向の右側となります。

川の反対側の斜面は大きな石が線路のすぐ横まで転がっていて、落石の危険がないのかと心配します。すでにこのあたりは標高2500mを超えているため、斜面の上のほうにはまだ雪が残っています。

崖側の風景

4回目に川を渡ると、シルバートンの町が見えてきて、町に沿って走ってきた列車は大きく90度廻って街のメインストリートに直角の行き止まり線で止まります。

シルバートン駅で列車から降りる乗客

ここには機関車を転換する設備がないので乗客を降ろしてしばらくするとそのままバックして町外れのデルタ線で方向を転換してきます。シルバートンの町はすでに鉱山はなく、一日3本の列車の乗客を当てにしたレストランや、土産物屋だけが並んでいます。町並みは西部劇に出てくる町のような感じで、住人は観光客相手ということもあって、当時のクラシカルな服装の人もよく見かけました。

町のメインストリート

夏のダイヤでは、デュランゴからの1番列車が12:00に到着した後12:45、13:15に2番、3番の列車が到着します。

シルバートンで発車を待つ1,2番列車

シルバートンからの帰りは14:15,14:45,15:15発の3本があり、多くの人は乗ってきたのと同じ列車で引き返しますが、これとは別に片道をバスでというコースもあり、こちらの方が少し高いものの、バスは1時間半でデュランゴまで走り、私は、列車と同じ14:15発車のバスに乗ったのでデュランゴには15:45に着き、シルバートンから降りてくる3本の列車をゆっくり撮影することができました。3時間半の乗車は結構長く退屈しないかと思っていましたが、沿線の風景はこの長い乗車をあきさせないものでした。乗車の後は、沿線からこの風景を撮れないかと思うところですが、残念ながら、ロックウッド駅を過ぎてからは沿線にアクセスの方法がなく、一番景色のよいところは車内から前方を撮るしかないようです。

3日間デュランゴに滞在しましたが、さすがにアメリカでも1,2を誇る人気路線、また、アニマス川の川くだり、ラフティングなどのアクティビティーもあり、平日にもかかわらず、町は観光客でにぎわっていました。今回はレンタカー借りたものの、あまり機動性を発揮できず、次回機会があれば、チャマの訪問と、帰りのバスで通ったシルバートンの町が一望に見渡せ、列車が走るのが遠望できるすばらしいところからの撮影に挑戦したいと思っています。

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