MC24

「MC24」のMCはMaster Controllerの頭文字で、国鉄ディーゼル機関車DF50形の主幹制御器の形式名称である。

Wikipediaの「国鉄DF50形ディーゼル機関車」のページ(国鉄DF50形ディーゼル機関車 – Wikipedia)には次のように記載されており、雑誌やネット等でも長年にわたり引用されている。

「運転台の主幹制御器は、電気的な要素はなく一種の可変空気調圧器に類する構成で、制御空気圧の昇降を直接行い、電気的な制御は行わない。」

この文章の引用元は「鉄道ジャーナル 1979年12月号」P.83で、

「制御は電気指令でなく、空気圧力で行なうため、車端に総括用空気ホースがとりつけられている。したがって主幹制御器には電気要素は一切なく一種の可変空気調圧器的な要素を有するだけで、ノッチ区分(19ノッチ)もいわばキザミ的な役割にすぎず、中間ノッチも使用可能である。」と記載されており、特に何の問題も無いように思われる。

では、実際のMC24の内部をご覧ください。

▲左側:MC24(DF50 41号2E側)、1981年7月28日、▲右側:MC24(DF50 60号1E側)、1983年9月24日、ともに高松運転所

ご覧のように「電気的な要素はなく」、ということはなく、引用元の前段の「(機関の出力)制御は電気指令でなく、・・・(( )内は筆者追記)」の部分が切り取られてしまっているために、「主幹制御器には電気要素は一切ない」と誤解を与えてしまっている。正確には、「主幹制御器には、機関の出力制御のための電気要素は一切ない。」ということである。

MC24の主軸は、調速機に作用させる制御空気の圧力を主ハンドルのノッチ位置(ハンドル角度)に応じて空気圧力調整弁により調節するもので、DE10形式等で採用されているDL15系空気ブレーキ装置のブレーキ弁ハンドルと機能的には同じである。つまり、制御空気圧を下表の赤枠に示す値に調節することで、機関の回転数制御を行っている。なお、M.A.N.機関では5ノッチ(制御空気圧1.1kg/c㎡)までは制御空気圧力に関わらずアイドリング状態とし、主発電機の出力は励磁機用他励界磁起動気圧抵抗器の抵抗の調整で行われる。

また逆転軸の「切」位置では、この制御空気を通さないよう締切弁を設けている。これは、反対側運転台の主幹制御器から制御空気が排気されないようにするためである。

▼機関出力関係数値表

一方の電気要素では、主軸で3線間、逆転軸で6線間を開閉する機能があり、まとめると下表のとおりである。

▼MC24の電気配線概要

MC24に限ったことではないと思うが、主ハンドルと逆転ハンドルには次の鎖錠関係があり、この実現のために鋼球を利用している点など、なかなか興味深い。

・逆転ハンドルが「切」位置のとき、主ハンドルは鎖錠される

・主ハンドルが「切」位置以外のとき、逆転ハンドルは鎖錠される

また当初の逆転ハンドルは、奥から手前へ「切」、「始動」、「前進」、「後進」の位置となっていたが、後に「前進」、「切」、「始動」、「後進」の順に変更された。▲MC24(DF50 1号1E側)、2008年8月22日、四国鉄道文化館

下図はDD54の主幹制御器である。外観、内部ともにMC24とよく似ており、DF50、DD54ともに新三菱重工が開発したこと、機関や動力伝達方式に違いがあるものの両形式とも機関回転数制御であることから、DD54の主幹制御器もDF50と同じMC24ではないかと思っている。また写真(「国鉄DD50」(1990年、レイルロード)のP.84)を見ると、DD50形の主幹制御器も主ハンドルに大きな把手をつけ、配置を90°回転させ、下部を大きなカバーで覆っただけのように見える。ご存知の方がおられましたら、ご教示いただければ幸いです。▲左側:DD54 33号1E側運転室         ▲右側:同左写真中の主幹制御器ともに1981年9月27日、福知山機関区

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