東欧のたび(その3)

タトラ山をめぐる鉄道

ポーランドのポズナンからはスロバキアのタトラ山に向かいました。ポズナンからポプラドタトリまでは500kmくらいですが、もちろん直通の列車などはなく、15時からの移動ではその日のうちに着きません。とりあえず、ブロツアフまで移動して1泊することにしていました。移動で初めての町に行く場合、暗くなるとホテルを探すのにも困るのでこの季節、18時には目的地に着くようにしています。ところが、乗った列車は原因不明で、1時間余り遅れ、おまけにコンパートメントの照明がつかず、真っ暗な中でいつ着くのかわからず、不安な思いをしました。

翌朝ブロツアフからスロバキアへの移動は一旦チェコに入り、4回の乗換えをして、9時間の行程、乗り継ぎ時間は15分というところもあり今回の旅程の中で一番の難関です。ブロツアフから1時間ほど行ったオポーレからはローカル線で、旧型の電車が走っています。各駅停車でスピードはせいぜい60kmくらいかと思われますが、路盤が悪いのも相まって、すさまじい振動です。

ボフミンで乗り換えたチェコの列車

これが終点のボフミンからチェコに入るとなめらかな走りになり、車両もきれい、またポーランドではパスを見せると、不思議そうに眺め回して、本来押すべきスタンプを押してくれなかったのが、ここではすぐにスタンプを押してくれた上、「スロバキアに行くのか?それならトリネッツで乗換えだ」と親切に言ってくれます。途中遅れのため気をもみましたが、何とか3度の乗換えをしてスロバキアに入りました。

スロバキアインターシティーの車内

最後の列車はスロバキアのインターシティーで首都ブラチスラバと第二の都市コシツェを結ぶ全車指定の看板列車です。さすがに、車両はきれいで、コンパートメントは普通2等なら8人掛けの所、6人掛けとゆったりしています。但しスピードはもう一歩、乗車したジリナからポプラドタトリ141Kmは途中1駅のみの停車で、1時間36分かかり、表定速度は90Km程度です。無事予定通りポプラドタトリに到着しましたが、この日の4回の乗り換えは少し神経を使いました。

ポプラドタトリからは、タトラ山に向かう登山鉄道のタトラ電気鉄道が出ています。駅は本線の上にあり直角に交差していて、ホームからはタトラ山がきれいに見えます。

ホームから見たタトラ山系

タトラ山脈はポーランドとの国境地域にあり、どちらの側も、登山、スキーリゾートとして一大観光地となっていて、タトラ電鉄はスロバキア側の足として1908年に最初の区間が開通し、現在スロバキアでは次に述べるラック鉄道も含め、唯一の1000mm狭軌鉄道です。(トレンチーンに762mmの狭軌路線がもうひとつあったのですが、最近廃止されたようで、スロバキア国鉄の時刻表からも消えています。)

翌朝、タトラ電気鉄道に乗車、なかなか人気の路線で、この日も平日ながら立ち客が出るほどの賑わいです。20分余りでタトラ観光の玄関口スタリー・スモコヴェツに到着します。

スタリー・スモコヴェツにて

ここには1908年開設のケーブルカーがあり、これを目指しましたが、冬のシーズンのための点検整備でこの日は運休、仕方なく、スタリー・スモコヴェツから西側でタトラ電鉄の写真を撮ろうとしましたが、なんとこちらも点検のため途中まではバスの代行運転、とうとう駅撮りになってしまいました。タトラ山の中腹を東西に走るこの部分は景色もよく、この日は快晴で天候にも恵まれたのに残念でした。スタリー・スモコヴェツからは東西に路線が出ていますが、西の終点シュトゥルプスケー・プレソは本線との間にラック式の鉄道が走っており、代行バスと電車を乗り継いでそちらに向かいました。

シュトゥルプスケー・プレソ駅のラック電車

このラック鉄道、開通は1896年と古いのですが、1936年に一旦廃止され、その後1970年に従来の路線の2/3を使い、残りはルートを変えて、開通したという変り種です。

シュトゥルプスケー・プレソ手前の勾配を登るラック電車

ラックの方式も当初のリゲンバッハ式からフォンロール式になり、最急勾配も150‰となりました。シュトゥルプスケー・プレソは標高1351mスチューバは895mこの間4.8Kmですから、単純計算でも100‰近くになり、実際ほとんどの区間が、急勾配の連続です。この日は1日タトラ山をめぐり、夕方、宿泊地のズボレンに向かいました。ブルーツゥキで幹線からローカル線に乗り換えると、山越えとなり、スロバキアでは珍しいトンネルをいくつも通り抜け、あたりが真っ暗になったころズボレンに到着しました。

翌朝はズボレンからルツェネッツに向かい、ルツェネッツからでているローカル線と、これも30数年前に4ヶ月ほど滞在した町の様子を見て歩きました。ズボレンからルツェネッツへは2両編成のレールバスが走っています。

ルツェネッツ駅のレールバス

ルツェネッツから先のローカル線も同じレールバスが走っていますが、当時工場のあったカタリンスカフタへ行く路線は、数年前のスロバキア鉄道の合理化の際に、旅客列車の運行が廃止されていました。今日の宿泊地ブラチスラバへは当初、直通の急行列車があるのでズボレンからそれに乗車するつもりでしたが、駅で時間確認すると、行き先が途中駅までの表示しかなく、どうも変更になっているようで、この日はパスを使わない日でもあったのでバスで移動することにしました。スロバキアでは小さい町でもバスターミナルがあり、本数が多く、所要時間も鉄道よりむしろ短いので、鉄道離れが起こっています。ズボレンからブラチスラバ行きの便も、鉄道は2時間に1本程度で3時間強かかるのに対して、バスは少なくとも1時間に2本の直通便があり、所要時間も私の乗った高速道路を走るものは2時間半でした。約200kmを走る長距離バスですが、トイレはなく、シートも通常の市内バスのような2X2の4列シートで、切符も乗車時に運転手から買います。私は前に並んでいたので何とか席を確保することができたものの、数人は席がなく立ったままバスは発車しました。街をしばらく走って高速道路に入りましたが、立った客はそのままです。幸い1時間ほど走った町で乗り降りがあり、立ち客は解消しましたが、高速道路を走るバスに立ち客がいるのは驚きでした。

暗くなる前にブラチスラバに到着、3日ぶりに都会に出てきました。

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