鞆鉄道の「へっつい」をつくる。 その1 まず試作機から

 パラパラと「自転車に追い抜かれたコッペルたち」を見ていると、今まで見たこともない背の低い小さい蒸気機関車の写真があった。「へっつい」という機関車らしい。「へっつい」とは懐かしい言葉である。よく祖母が「へっついさん」と言っていたのを思い出す。ご飯を炊くカマドのことである。とにかく珍奇な機関車である。湯口先輩の「『へっつい』の系譜 -低重心超小型機関車の一族-」を見つけて購入して読んでみると「へっつい」と言われるようになったのは志賀直哉の「真鶴にて」にある一節からであると書かれてあった。

 ところで、カマドをなぜ「へっつい」というのであろうか。手持ちの辞典などで調べてみると広辞苑で「へ」を調べると「『へ』竈 かまど。」とあった。また、大阪ことば辞典では「へっつい」は「へつい」が変化していったものとある。そしてこれについて大言海という辞典には「へつい」はカマドの神のことで、それがカマドを意味することとなったと書かれてある。カマドは「くど」ともいう。この言葉は主に京都で使われていて、ていねいに言うと「おくどさん」である。「くど」というのはいろいろな説があり「火床」や「火処」からといわれたり、カマドのうしろにある煙道を「曲突(クドと読む)」ということからカマド全体を「くど」ということなどがある。以前に投稿した「年の初めは信貴電の不思議」にカマドの神様を祭ってある久度神社について書いたのであるが、カマドの神様といわれている「久度神」からカマドを「くど」というのでなく、カマドを「くど」ということから後に、久度神がカマドの神様ということのようだ。

 話がちょっと寄り道をしたが「『へっつい』の系譜 -低重心超小型機関車の一族-」にあった正統派「へっつい」ではないが、5.5トンサドルタンク「準へっつい」が気になった。機関車の形としては個人的にはいい形をしていると思ったのである。そして、この機関車は一昨年に訪ねた鞆鉄道にあった機関車のひとつである。

再び現れた水呑の5.5トンサドルタンク準へっつい列車

再び現れた水呑の5.5トンサドルタンク準へっつい列車

 いやな虫がムズムズ騒ぎ出して、この機関車をわが物にしたいと思ったのであるが、さてどうしたものか。いろいろ考えて模型を作ることにした。Oゲージナローも考えてみたが大きいとインチキ、ごまかしができない。技術力もなく、しかも金がない。それでHOゲージナローのサイズにすることにした。これであればなんとかなるであろう。図面が本に載っていたのでできそうに思ったのであるが、いざ考えてみると実寸の1/87で作ることができるような技術がない。そこで、市販の動力ユニットを利用して、その雰囲気のあるものにすることにした。

 津川洋行の小型蒸気機関車用動力ユニットを購入したが、さてどうしたものか。思っていたように簡単にはいかない。まず、動力ユニットの図面を作成することにした。現物の寸法を測定して図面を作成するのであるが、小さいので結構難しい。何とか図面が出来上がった。次は本にある図面から1/87の寸法を割り出して車体の図面を作成するのである。しかし、動力ユニットと実際の下回り寸法が同じでないのでバランスのよい形にするのが厄介である。これが結構時間がかかったのである。

赤線の部分は動力ユニット

赤線の部分は動力ユニット

 図面ができたが、どのように作るのか考え込んでしまった。どのくらいの時が経ったかわからないが、とりあえずあり合わせの材料(案内状のハガキなど)で試作機として形にすることにした。小さいので紙製であっても以外と難しい。ボイラーの部分は紙をクルクルと巻いて円筒状にして作り、煙突は爪楊枝の太さがほぼ同じなので寸法に合わせて切って作った。大変いい加減なつくり方である。ちゃんと模型を作っておられる人に叱られそうである。

それなりに何とか形になっている。

それなりに何とか形になっている。

 まあ、何とかそれらしく見えるのでほっとしている。次は本機として製作するのであるが、試作機と同じペーパー製で製作するか、金属製にするかここが思案のしどころである。接着剤で組み立てるには接着強度が十分になるには時間がかかり過ぎる。金属製でははんだ付けをする必要がある。はんだ付けでの組立はあまり経験がないのでちょっと自信がない。しかし、やってみると意外と具合がいいかもしれない。走らすにはある程度の重さが必要なので金属製で本機を製作することにしようと思う。しかし、その本機が完成するのはいつのことやら怪しいのである。

ボイラを更新してちょっと機関車らしくなった。

ボイラを更新してちょっと機関車らしくなった。

 その後、試作機はボイラー部分に以前に電車のエアータンクに使用していたものがちょうどいい大きさであったので、それに交換してマジックインキで黒に着色してみた。

 ここに鞆鉄道の「それなりヘッツイ機関車」の試作機が完成したのであった。ところで本機の連結器には鞆鉄流の走っているうちにネジが緩んで、客車を離してしまうものにしようか。

鞆鉄道の「へっつい」をつくる。 その1 まず試作機から」への4件のフィードバック

  1. どですかでんさま
    昨年の鹿渡合宿から1年。合宿の前に寄られた熱海のへっついにも影響されて、制作意欲を掻き立てられたのではないでしょうか。私も先日例の江若のNゲージを入手して以来、机の前に置いてあるのを眺めては、久しぶりに模型の製作をと思っていますが、なかなか着手できません。完成されるのを楽しみにしています。

    • 大津の86様 机に置いて眺めるのにはちょうどNゲージはいいサイズと思います。本箱の少し空いたスペースにも置けるのでもってこいです。価格的のも我々弱小鉄道会社にとっては好都合です。いま、当社は3種類のゲージの車両があります。16.5mm、10.5mm、9mmです。それぞれ少しばかりの車両がありますが、ほとんど休止状態で運行はいつになるかわかりません。しばらくはこの「ヘッツイ」で楽しむことにいたします。

  2. どですかでんさま
    試作と仰いますが、しっかり模型化図面を起こし、それに則って製作された本格的な作品ですね。

    しかし紙製だと腰が弱く、またヤスリ掛けが出来ないので、随分難儀されたと思います。
    今後、客貨車などを紙で作られるにあたり、ひとつの技法をご提案します。
    それは紙を組み立ててから、サラサラの瞬間接着剤を紙の面全体に塗布するのです。
    木製の部分にも塗ると目止めの効果があります。
    瞬間接着剤が乾くと紙とは思えない程、丈夫になります。
    更に角の裏側にエポキシパテなどを盛れば、ヤスリやサンドペーパーで小さなRを表現できます。ヤスリ掛けの後、その部分をもう一度、瞬間接着剤を塗ります。

    ただ難点は瞬間接着剤の乾燥時にシアノアクリレートが空気中に漂い、甘い香りと、目がショボショボする事です。保安上、換気とゴーグルの使用をお薦めします。
    また細かい部分を塗布するうち、接着剤が誤って手指に付着すると大変です。ディスボーザブルな手袋を着用して作業してください。

    いきなり作品で本技法を採用せず、部品などの小物で効果や問題点を、ご自身で確認してください。

    今後の作品に期待しています。

    • 鉄鈍爺さま 紙製車両の技法を教えていただきありがとうございます。この機関車に牽引させる客車や貨車は紙と木で作ろうと思っています。木については白樺材(アイスキャンデーの棒)を
      貯めております。これは以前に法隆寺軽便鉄道のイベントがあった時に模型を出展されていた方から教えていただきました。これと今回教えていただいた技法で作ってみようかと思っています。しかし、出来上がるのはいつになるかわかりませんが。

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